Date : 2024/10/20
Member :組長、バード
Author :バード
晩秋の瑞牆。夕日に照らされる十一面岩を眺めながら、自分たちが登ってきたルートを振り返る。満足感に浸りながらも、あたまのなかは次のクライミングの計画でいっぱいだった。
「チーム赤蜘蛛」そのように呼ぼうと思う。
小川山からの帰り道。いつも目の前に映る雄々しい甲斐駒ヶ岳の姿に見惚れていた。
あの山を満足のいくラインから登れたら、どれだけ素晴らしいだろうか。
そうして甲斐駒ヶ岳のルート集を開き、目に止まったのが赤蜘蛛だ。
ビッグウォールというものが存在しない我が国において、それに近しいものがあるならば、この岩壁になるだろう。
「いつか赤蜘蛛をやりたい」
そんな小僧の戯言を、いつかのキャンプ場で話したら、組長が漢気で乗ってくれた。
とはいえ、そのための準備プロセスって、どんなことをしたらいいのか?と話していると瑞牆でマルチをやろうじゃないかという話に。
とはいえクラックもまともにやったことがない。なんなら、瑞牆でマルチもしたことがない。挙げ句の果てには、普段は互いにビレイはしているものの、一緒にマルチもしたことがない。
ってな具合なので、まずは手始めにジョイフルモーメントでも、ということで今回の山行が企画された。
駐車場に到着すると、目の前には十一面岩が。アプローチが難しいとは聞いていたが、トポを見ながら進んでみると見事迷子に。これで取り付きへのオンサイトトライは失敗。
とはいえ、初めて足を踏み入れる十一面岩。今日のマルチはグレードでいえばたかだか5.9。ただそれ以上に瑞牆でマルチをするというプレッシャー。末端壁から正面壁にいたる壁のスケールのデカさにひたすらにビビる。
とはいえ、初めての十一面岩にテンションがあがり「あれが春うららですね」、「あれがモアイフェース」ですねと、観光地に来たかのように写真を撮りまくる。
同じように迷子になっていた海外のパーティと合流し、見事とりつきにRP。今日はこの2パーティのみ。向こうさんが早く着いていたので、我々はしばし休憩。
1p
2pとリンクする。終了点にはリングボルトが一本しかない。木の根でバックアップ。先行したパーティは「日本人のジョイフルとは、こんなルートを指すのか?」と言っていた。捉えどころがない感じだが、、まぁ5.9か。
2p
クラック沿いを気持ちよく登る。組長が振り返り「いやー気持ちいい天気だねぇ」とご機嫌なご様子。
3p
ワイドパート。まあ5.8でしょ。と思いつつ、過去に5.9に奮闘し切った経験もあり、簡単なワイドなんてあるのか?と半信半疑でとりつく。ただ、奥に手を突っ込めばハンドもフットも決まる。
4p
ウイニングラン的なピッチ。
最終ピッチを登ると、ビレイしてくれていた組長がグータッチで迎えてくれた。
頂上からは瑞牆を一望できる。
まさに秋晴れ、最高の景色。
瑞牆を一望しながら、あの壁はなんだ?あれもかっこいい。あのピークにも立ちたいと話が進む。帰り道、歩きながら「とりあえず片っ端からやっていこう」と、ありったけのルート名が候補にあがってくる。
まずは、この瑞牆という土地に馴染む。このエリア特有なのか、フェース面にはホールドが乏しく、弱点となるクラックを攻めるルートが多い。そのためには、ワイドを含むクラック力の強化をしなければ、、そうなると、あれもこれも、、と一瞬でティックリストが満杯になった。
そんな来年の計画まで話を膨らませていると、あっというまに下山。振り返ると夕日に映る十一面岩。次はあのピークに立ちたいなと、ベルジュエールをなぞっていた。
ージョイフルモーメント
まさにそんな時間だった。