Date : 2017/4/16
Member : ちえ蔵、組長
Timeline :小谷温泉0530~南尾根取付き0620~0743P3~0903P2~1003岩峰基部~1215雨飾山頂上~1615小谷温泉
Author :組長


頚城の名峰雨飾へ




前日。
のんびり太刀岡山でクライム。
ほかのクライマーはみんなカリスマかスティングレイ狙いで、11台の初級者ルートは空いていた。のんびりとハッピーバースデイと太陽が恋しいを登る。ハッピーの方は、しっかりとレストして落ち着いて登ればどれもホールドはいいので余裕を持って登れた。太陽が~の方は、僕のクライミングあるあるあるで、1便目はオンサイト狙いでいいトライができ、2便目は行けると思ってトライするもなんだか集中力を欠きつまらないミス、3便目は再び集中力を取り戻し、体で覚えたシークエンス通りりにもう少し先まで登りたい感覚を持って終了点にタッチ。3便目もうまくいかなかった時は大抵ハマる。
ま、短くて簡単なルートなんだけどね。ホールドはいいけどムーブが少し悪い。

ちえ蔵さんは、2年前の宿題のバーボンを片手にを苦戦しながらもなんとかゲット。ムーブはともかく最後は結晶にかじりついてでも上に這い上がることが大事だ。成長がないと本人は言うが、もっと5.11以上のルートをガンガンやれば登れるはずだ。最近はすっかりクラッカーのようだが、海外のどこまでも続く水平クラックと違って、日本のクラックは多くはフェース力でカバーできる部分が多いような気がする。ま、クラックとかフェースとかボルダーとか、そういうジャンルはあまり関係なくて、美しい登りたいラインをそれにあった道具と技術で登れればそれでいい。

そんなこんなでまだ昼下がりだが、まだまだ道中長いし、なんか随分と睡眠不足なので、ツヨツヨクライマーたちを背にトボトボと山を下る。

いつもの山宮温泉で英気を養ってから、いざ雨飾へ。
途中大町でちえ蔵さん大好物のハンバーグを食し、道の駅小谷で仮眠。納税してんのに初めて訪れる小谷村だった。

早朝。小谷温泉に向かう。まだまだ暗いせいか寒々しい閑村のワインディングをたどる。僕の税金で少しはこの村は明るくなったろうか。
小谷温泉の山田旅館の駐車場をお借りし、太陽が昇るころ行動を開始した。

雨飾荘まではしっかり除雪してあって、車通させてよ、と思いながらもところどころショートカットしながら進む。周囲の山肌は豪雪によって削り取られた痛々しい姿を晒している。幾何百年も世界的にも有数の豪雪に晒され、それが春の訪れとともに一気に融雪して地表もろとも削り取る全層雪崩を伴って日本海に流れ込む。厳しい自然環境がこの地の山河の美しさの源なのだろう。そして豪雪に磨かれた美しい頚城の渓谷はいつまでも沢ヤの心を魅了してやまない。


南尾根末端
遠くに雨飾の双耳峰を眺めながら、スキーのトレースを追って南尾根に迫る。
開けたキャンプ場エリアから目の前の南尾根の左縁をたどって緩やかな沢沿いを登高する。
雪崩の心配がなければ直登するよりも沢沿いを辿ったほうが効率的だろう。すぐにP4とP3のコルにつめる沢に進み、最後はP3の尾根上目指して直登した。尾根に乗り上げると一気に妙高火打の山並みと白馬の純白秀麗なる雪稜が青い空に目がチカチカするほどに光っていた。
P3尾根上

左側に白馬
しばらく平坦な尾根上を進むと眼前にドーム状のP2が迫る。樹林のない無垢な斜面はバックカントリーの人気スポットでもある。斜面には絵画のような美しいシュプールが描かれていた。しかしP2の登りは短調でつまらない。それでも振り返れば、360度の絶景が広がっている。
P2ドーム


背後に南尾根

白馬
P2に到着すると、眼前にまさにお椀を伏せたような左右対称の双耳峰が屹立していた。雨飾のP1と本峰だ。登攀準備をしてラインをよく見定めた。
背後は天狗原山その奥に妙高火打が控えている

左が本峰、右がP1
岩峰基部までは不安定な雪稜とヤブのミックス。昇温とともに雪はますます不安定さを増し、僕らの精神もますます不安定感を増していった。これまでの全層でイっちゃってる山肌を見ていると否が応にも緊張するが、ラインには自信を持って進んだ。右手の大きく剥離した雪庇は、目の前で大崩壊した足拍子の稜線を思い起こさせる。そういえば春の劔・赤谷尾根もやばかったなぁ。そもそもの実力がないのは置いといて、雪稜っていうのは、不確実性が高いから怖い。今、足の下の雪が実際はどういう状態なのか、確信を持てることは少ない。たぶん大丈夫、として進むことも多い。そして振り返って来し方を見てみると、たぶん大丈夫じゃなかったっていうこともある。難しい雪稜にどんどん進んでいけばいつかきっと痛い目に合うんじゃないかと思うた。
うーむ、それにしても最近は特にアルパイン的な登山で自分の限界ばっかり感じてしまう。いや限界というよりも、やったらやれるんだろうが、無理して大怪我したくない、死にたくないという気持ちがチャレンジ領域を押し下げるのだ。周りにも迷惑かけるしな。少し年をとったのかもしれない。しかしなお、先鋭的なアルパインクライマーの記録を読めば血がたぎる。どのように進んでいきたいのか少々迷う。
P1に向かう雪稜

雪、ヤブミックス帯

稜線の存在を感じなから進む

正面のフェースを登る

不安定極まりない
岩峰基部はちょっとして雪のテラスになっている。目の前のクラックにカムを決めて、登攀ラインを見上げる。傾斜は思ったよりもマイルドで、とりわけ悪そうでもなかったため、最近ガンガン残置無視マルチで攻めているちえ蔵さんにトップをお願いする。
雪の斜面にマントル返して岩場に取り付くと早速「脆い」と連発する。
積み木のように折り重なった岩場は非常に脆く、落石要注意。ちえ蔵さんが、大辞林サイズの落石を起こしたが、最初からセルフを長めに取っていたので、カシアスクレイのようなステップでヒラリとかわした(たぶん)。
核心の乗越部分はさらに脆く、ジャパニーズアルパイン気分を盛り上げた。ガバだと思って掴んだ一抱えもある大岩がぐらついたときはさすがに肝を冷やした。

核心。いかにも最近剥がれました的な岩肌が露出し、ちえ蔵さんがリードで乗り込んだ一抱えもある大岩が、自分が乗り込んだ時は大きくぐらついた。
ちえ蔵さんは慎重に時間をかけてリードをこなした。メンタル強いなぁ。
でもラインが限られるもののもう少し安全なライン取りがあったし、かなり余裕のなさそうなムーブと状況になる前にもう少し周りを見て落ち着いてラインを探ることも必要かと思った。

続く2P目は、えらく簡単だったが、相変わらずの落石祭りは変わらない。明らかに落ちるでしょっていう岩を逆に最初に落としてしまってから進んだ。岩がぶつかり合って少し焦げ臭い匂いがした。
2P目

P1への直登は避け、本峰とのコル方向にトラバースしてコルの上でピッチを切る。トラバースなのでロープの流れが悪く最後は綱引きになった。
本峰へ
コルから先は、これまでの脆さも踏まえ念のためそのままツルベで向かったが、なんのことはなく、途中でロープを締まって本峰への最後の雪稜を登っていった。
P1を越え頂上への最後の雪稜

実は初めて雨飾
下りは夏道一般ルートをたどるが、傾斜のある雪の斜面がずっと続き、登りで使うとなるとしんどそうだ。
荒菅沢の大デブリ帯をトラバースし、頂上から下る時に登ってきたスキーヤーに早くも追い抜かれながら、やっぱツボ足じゃなくてスキーだよね、普通、と愚痴りながら大汗かいて小谷温泉に到着した。あたりはますます融雪が進み、肥沃な山肌には春の匂いが充満していた。

このブログを検索

人気の投稿

最近の投稿

Archive

QooQ