剱岳 八ツ峰 Cフェース 剣稜会ルート 上半縦走

2026-07-20

01_無雪期 05_縦走 08_アルパインクライミング l_北アルプス

Date : 2026/07/18-20 
Member :まり、ヤマ、バード 
Timeline :
7/18 室堂登山口0906-雷鳥沢野営場09451135剱御前小舎12021237剱沢キャンプ場
7/19 剱沢キャンプ場0212-0330長次郎谷出会い-0530 6峰Cフェース取り付き06371020 Cフェースピーク-1346八ッ峰の頭-1654剱岳ピーク-2106剣山荘-2212剱沢キャンプ場
7/20 剱沢キャンプ場0916-1214雷鳥沢野営場1228-1326室堂登山口
Author :バード


剱岳の八ツ峰を意識しはじめたのは、いつ頃からだっただろうか。

まりとヤマと一緒に前穂北尾根を登ったのが2018年。2021年の総会の資料を読み漁っていると「今年こそは八ツ峰」なんてことが書いてある。2019年あたりから計画をだしては、雨になったり、コロナになったり、7年もの月日が経ってしまった。

自分のライフステージも変化していくなかで、それでも、このラインは心の中で引っかかっていた。

そして今年、八ツ峰の計画をだすチャンスが巡ってきた。

どうせなら八ツ峰を縦走するだけじゃなくて、八ツ峰でクライミングがしてみたい。ということで、6峰Cフェースの剣稜会ルートを目指すことにした。

つぎに日程だが、少し前までは9月ごろまで登攀可能だったこのルートも、昨今の温暖化の影響で長次郎谷の雪渓が8月にはグズグズになってしまう記録も多い。ということで日程は7月に絞られ、自然と海の日の三連休がターゲットとなった。

自分にとっては本格的なアルパインは久しぶりで、毎日のように天気予報をみては一喜一憂する日々に懐かしさを覚える。

1週間前までは快晴予報だった天気予報も直前に曇り・雨予報に。ただ、いかずに後悔するくらいなら、せめて剣沢キャンプ場までいって、ファイティングポーズくらい見せたいと突っ込むことにした。

仕事の都合で、金曜日の24時に吉祥寺集合。そこから運転して、7:30のロープウェイを目指す。大規模な事故渋滞で、中央道で敗退?も危ぶまれたが、なんとか5時ごろに扇沢の駐車場に到着。少しの仮眠を経て、9時には念願の室堂に降り立った。

久しぶりの黒部ダム

観光客にまぎれて

室堂に到着

想像していたより快晴のハイキング

キャンプ場に到着

シューズもあるのでボルダリングセッション開始

ほぼ徹夜状態だったので、偵察もそっちのけで17時には就寝することに。いかんせん、明日は1時起き、2時スタートだ。

予定通り、1時に起床。各自食事を済ませて2時過ぎに行動開始。

剣沢小屋をパスして剣沢雪渓を降っていく。この雪渓は、過去に源次郎尾根を登ったり、仙人池を経由してから北方稜線側を歩いた際にも通っているので、なんとも感慨深い。「いつか、この長次郎谷を左に折れる時が来る」そう思っていた。そして、ついにこの日がやってきたのだ

雪渓を詰め上がると、日が昇り、あたりの景色が見えるようになる。そこには、日本離れした景色が広がっている。思わず叫び声をあげてしまう。

熊の岩には、多くのクライマーたちがテントを張っている。朝も開けたばかりだというのに、遠くからクライマーたちのコールが聞こえてくる。ああ、八ツ峰に来たなという実感が湧いてきた。

我々が目指す6峰Cフェースが近づいてくる。どうやら先行しているパーティも同じ場所を目指しているようだ。到着すると2パーティの順番待ち。ゆっくりと支度することにする。そして、あいもかわらず、ヤマはトイレにでかけていった。

夜が明けて

我々の目指すCフェースも見えてきた

1時間ほどの順番待ちをして、いざ剣稜会ルートへ。

1p。トポ上だとⅢ。
まぁⅢでしょ、と思っていたら前のパーティの様子がおかしい。

どうやら本来のルートは、さらに奥からの取り付きらしいのだが、雪渓がまだ残っており、取り付けないので、本来のスタートより正面左からルートをとっている。

実際にやってみると、スタートからスタンスは乏しいので、左上するガバカチから、スメア気味に足を拾って、上部にマントル気味に乗り上げる。ただ、ちょうどよい支点やマントル先のホールドがあるわけではないので、マントルを返し切ってからカムセット。クリップして、ほっと一息。

そこからもハーケンが導いてくれるわけではなく、自分でルーファイしながら、カムで支点をつくっていく。

体感Ⅳ+くらい?
ふぅー、ひと仕事おしまい。と思っていたらトラブル発生。まりがあがれないとのこと。

下であれこれ試しているが、一向にどうにもならないとのこと。「敗退」の二文字が脳裏によぎる。と思っていたら、後ろのパーティの方が「空身ならあがれるんじゃないですか?」とのことで、空身でトライし、無事に突破。ザックは私が懸垂で降りて回収し、いざ2ピッチ目へ。


2p
凹角へのトラバースからやさしいスラブ・フェース。Ⅱ


3p
爽快感のあるスラブーフェース。
おもったより長いルートで、最後は弾数をコントロールしながら60mいっぱい伸ばした。


4p+5P
ハイライトとなるナイブリッジを要するピッチ。ビレイ点からダイレクトにリッジに上がっても、横にトラバース気味に登ってリッジに上がるラインでも。ヤマは後者を選択。そのままトポ上の5pまで、まとめてロープを伸ばしてCフェースのピークへ。


だいぶ時間をかけてしまった。時計を見ると10:30。1ピッチ目の影響で想定シミュレーションから2時間強のビハインド。

またもや敗退の二文字がよぎるも、なんとか日の入り前までにキャンプ場に戻れるのでは?ということで、上半の縦走を継続することに。

Dフェースのくだり。クライムダウンしている記録もあるが、懸垂を選択
 
チンネからは多くのクライマーたちの声が聞こえる

7峰の登り

7峰のリッジからは8峰や八ツ峰の頭が見える。先行パーティがいるわけでもないので、自分たちで岩峰のどこから登るかを考えなければならない。あらためて登るだけがクライミングじゃないし、山や岩を見る目が大事だということを痛感する。

8峰はルンゼ状を登る

8峰から八ツ峰の頭とのコルへは2段懸垂で降りる


コルから八ツ峰の頭へは、くの字状に、遠くからルーファイしていたルンゼ状のルートを攀じ登ることに。八ツ峰の頭からは懸垂2発で池の谷乗越の基部に到着。ガレガレなので落石に注意。

ここからは、以前も歩いた北方稜線パートを歩いて、誰もいない剱岳の山頂に17時前に到着。

登ってきた八ツ峰のラインがよく見える




ついにピークに到着

ただ、ここからペースがあがらず、前剱で日が沈み、剣山荘に到着したのが21時。剣沢のテン場には22時となった。

疲労と眠気で、夕食の支度もろくにせず、静かな祝杯をあげて、すぐさま眠りについた。

前剱あたりで沈んでいく太陽

翌朝。思ったよりもすっきりとした朝を迎えて、お花畑の登山道を帰路についた。

3日目の朝

昨日まわってきたラインがよく見える

最終的に3日間、雨に降られることはなかった

振り返れば、ほぼ敗退しかけたような記録かもしれない。こんな記録、公開しなければいいんじゃないかとも思ったが、自戒と反面教師になればと、この記録を書いているんだと思う。

自分たちの記録はさておいて、八ツ峰そのものは、剱の懐に深く入りながら、自分たちで山を見て、弱点を考え、大岩峰を繋げて登っていく、冒険性に満ちた素晴らしいルートだった。

フリー的な登攀力はもちろん、既存のルートだけではなく、状況に合わせて自分でラインどりを考え、残置に頼ることなく壁を登る力や、長く歩く体力など、これまで培ってきた知識や経験を総動員したような山行だった。

ぜひアルパインを志すみなさんには、おすすめしたい。

さて、色々と書いてきたが、これを書いていて、いま思った。俺はたんに八ツ峰を登りたかったんじゃなくて、このチームで八ツ峰を登りたかったんだ。

ひとりで北方稜線側を歩いていたときも、ソロで源次郎尾根を登っていたときも、八ツ峰を横目にみながら「いつかワンワンでお前を迎えにいくからな」そう思いながら、その姿を見上げていたんだ。

まり、ヤマ、ありがとう。
7年ぶんの試練と憧れに、ありがとう。

家路につき「ようやく八ツ峰にいけました」と書かれたマリからのLINEをみて、実感とともに、込み上げるものを感じた。

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