前穂A沢

2010-10-10

01_無雪期 l_北アルプス

Date : 2010/10/2-3
Member : すぐりん、もとき(記録)
Timeline :
[day1] 上高地(10:00)ー奥又白池(14:00)
[day2] 奥又白池(4:30)ー奥又尾根踏み替え点(5:45)ーA沢ー前穂(12:30)ー岳沢ー上高地(15:45)

久しぶりのアルパインを楽しみに、前穂東面の岩場へ。天気がちょっと心配だったが、取り付きまででも十分価値あり、ということで決行となった。


計画では、初日は奥又白池で幕営、2日目に全装備を持ってC沢を詰め、B沢を経由して北壁に取り付き、東壁のAフェースを前穂山頂に抜けるというもの。ルートは3級程度のピッチが続き、前穂東面の入門とされる。ただし、付近は岩が脆く、落石が多い。

[day1] 
上高地は、観光客、登山客ともに少なめ。天気は快晴。奥又へと続く中畠新道は一般道よりは険しいが、木が茂っているため恐さはなかった。

午後2時、奥又白池に到着。視界が突然開けてキレイな池が現れた時は、2人とも感激で「オー!」と声が出た。クライマーのベースという先入観があったが、他パーティは、ただ「幕営に来た」とのこと。翌日下りるか、Ⅴ・Ⅵのコル経由で涸沢に抜けるらしい。池の南側を少し下ると、中又白谷の湧き水があった。冷たくて美味しい。

<奥又白池>

<南側のスペース>

<池から前穂東面>

多少のんびりした後、C沢の取り付きを確認するため偵察に出る。奥又尾根沿いを登ると、やがて目指す沢筋が見えて来た。だけど、あれ…なんかイメージと違う…。「雪がないっすね」とすぐりん。各種記録によると、C沢は急な雪渓をアイゼン、ピッケルを使って詰める。7〜8月に登られることが多いようだった。もう10月なので、盛夏ほどの残雪はないと予想してはいたが…。しかも、沢には大きな浮き石がいくつも転がっている!

<左がA沢、中央左がB沢、同右がC沢、右上がⅤ峰>

気を取り直して、C沢取り付きを目指してトラバース。ところが、踝まで埋まるガレでさっぱり進まない。雪渓があれば20秒で通過できるところが、5分かかってしまう。ガスも出てきたため、偵察終了。

<C沢までのトラバース>

あすの行動について話し合う。選択肢は以下の通り。

①計画ママ
②C沢を詰めるが、ルートが悪ければⅢ・Ⅳのコルから北尾根に出て、前穂へ
③A沢を詰めて奥又尾根に戻り、前穂へ
④中止

①、②に関しては、C沢までのトラバースに時間がかかり、C・B両沢とも落石が多そうで危険、と考え除外。③について、ネットの記録を読んだ限り簡単そうだったと2人の意見が一致し、A沢詰めに決定。取り付きで危険と感じたら撤退、とする。もときは仕事の疲れがたまっていたので、モンベル1番で快眠。すぐりんはシュラフカバーとツェルトで耐寒訓練。おやすみ〜。

<この奥に湧き水>

[day2]
3時半起床。朝飯を取り、4時半出発。偵察ポイントを越え、奥又尾根からA沢への最初の踏み替え点を目指す。

<AM 4:30>

ちょっと迷ったおかげで、踏み替え点ではほどよい明るさに。A沢は…思ったより、傾斜がキツそう。2人してひるむ。取り付きまで行ってみようと下降を始めるが、岩が脆くホールドもスタンスもすぐに崩れる。時間をかけて慎重に、トラバース気味に下りきった。

<中央から左上に突き上げているのがA沢>

<踏み替え点 下降>

<A沢へ>

取り付きから見ると、傾斜は気にならない。岩は相変わらず脆く、楽しい登攀とは言い難いが、まあこういうこともあるだろうと登り始める。動く度に足下から岩が落ちていくので、後続パーティがいなくてよかった。逆に言うと、自分たち以外は誰もいない。

<A沢>

<自分たちからの落石多発>

途中、何度かルートをミスる。左手に見える奥又尾根に沿ってA沢を詰め、2度目の踏み替え点で尾根に戻る、ということなのだが、どうしても歩き易い方へと引っ張られてしまう(もしかしたら、スタートから違っていたのかも)。

やがて、傾斜のキツい枝沢を誤って詰めてしまった。なんとか辿り着いたテラスからは、ロープを使ってのクライミングになる。本来のルートを詰めていれば、ロープは不要なはずだった。

さて、行くか、戻るか。A沢の上部にいることは間違いないので、仮に想定と違う尾根に出ても、若干の下降で奥又尾根に戻れる、もしくは尾根同士が繋がっていると予想する。それに、この枝沢を下降するのは相当に危険だった。懸垂に使えるような安定した岩や木は見当たらない。

すぐりんがリードで、登攀開始。細い尾根上に茂った灌木帯を、強引に突破していく。40メートルほどでロープを引けなくなったようで、ピッチを切った。「上はどう?」と聞くと、「行けそう」とのこと。

<謝った枝沢を詰めた>

追いついてみると、確かに、なんとかなりそうな雰囲気があった。標高が上がるにつれ、岩も硬く安定してきている。最悪でも下降できそうだ。ただ、ガスもどんどん濃くなってきている。前穂も、三本槍も、奥又尾根も、どこにあるのか分からない。もちろん、現在地も不明。

<ガスが濃い>

しばらくコンテ。この3月に一緒に受けたロープワーク講習が活きたのか、スムーズに進めた。途中、スタカットでのトラバースも無事クリア。

<コンテで>

再び、傾斜のキツい岩場。下降点なのか、初めて残置のハーケンとスリングを発見。頼りないがハイマツも利用してセルフとし、すぐりんに登ってもらう。クラック沿いのルートだが、中間支点がとれないとのこと。加えて、ホールド、スタンスともに要所の岩がぐらついている。ここでの落石はよけられないので、短くピッチを切って上げてもらった。

<残置発見 ガスの向こうは奥又白池>

<頼りないハイマツに0ピン>

<ランニング取れず>

続くピッチはそのまま、もときがトップ。ここからも悪かった。ランナウトしながら10mほどトラバース気味に右上するも、短いが微妙に前傾したポイントで詰まる。ホールドにできそうな岩は不安定で、信用できない。スタンスもない。少し戻り、ハイマツをつかんで強引に乗っ越した。

ついに、稜線が見えた。緩傾斜帯に転がっていた大岩にメインロープを巻いてセルフを取る。風が急に強くなり、声が通らない。その割にはスムーズにビレイ準備が完了し、すぐりんが上がって来た。

視界はなく、相変わらずどこにいるのか不明。不安で、寒い。レインを着込んで、稜線に出た。とその時、おおお!はっきりした踏み後を発見!明神~前穂間のどこかに飛び出た模様。そこからは15分ほどで、前穂山頂に到着した。ガッツポーズと固い握手、無事に帰れると喜びあった。小休止の後、ビュンビュン丸で上高地に下山した。

 <プラトーン>

<レインに穴が…> 


<岳沢ルート>

結局のところ、A沢はどこでルートを間違ったのかはっきりとは分からない。ルートファインディングが課題と実感。収穫は、困難な状況下でも最大限安全な方法で行動できたこと。出発前、「死なない程度の危ない目に合うことで成長」という話があったが、幸か不幸かその通りになった。相談に乗ってくれたさちさん、ひでぴょん、ありがとうございました。

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