ジロト沢左俣

2017-08-27

06_沢登り d_上信越

Date : 2017/8/27
Member : 組長、あーさ
Timeline :林道終点P0746~0800タキ沢出合~1007二俣~1009左俣大滝~1230滝上~1334略奪点~1452ツッパリ淵~1525稜線~1534露岩展望台~1615雨量計小屋~1825林道終点P
Author :組長


スラブの大伽藍、草をまとめたプアプロ、剛毛のヤブこぎ。越後の沢だーーー。


 

芋川ジロト沢。ネーミングからして芋っぽい。でも右俣にかかる全4段260mの布晒しの滝や左俣の150m滝、周囲に広がるスラブの大伽藍など、ネーミングと対照的に極めて明るく広大な沢でもある。

こんなこと言うと怒られそうだが、確かに芋っぽい南魚沼の田園地帯を抜け、第1村人発見!!みたいな野中集落を通過し、里山の田舎道に入っていく。途中で駐車していた多摩ナンバーは釣り師だろうか。
舗装された林道終点の駐車スペースから立派な堰堤を越える左岸の仕事道に入り、しばし進んだ先から入渓する。最初は平凡な渓相だが、思っていたよりも水量が多い。10分もかからずタキ沢出合となり、左のジロト沢に入る。途中、釣り師2人と遭遇し一瞬の緊張が走るが、比較的フレンドリーで安心する。いくつかの小滝やナメ滝を越えていくと、右上方に次第にスラブが見えてくる。
 
 
林道終点駐車スペース

序盤の渓相

ナメも綺麗だ

次第に前方の天高くから布晒しの滝の瀑水がサラサラと舞い落ちているのが見えてきた。ただ単純に滝としてみれば、羽衣のように優雅であるが、沢ヤとしてみれば下部は凶悪なハング帯を従え、上部は強傾斜のスラブが延々と続く武者震いするような滝だ。
登攀記録は幾つか見たが、ランナウト、垂直ヤブ登攀、緩いリスにハーケン2枚重ね打ち、スリップしたら100mダイブ、など脳みそが沸騰したようなワードが並ぶ。なかなかイッている。

布晒しノ滝260m

下部のハングはどう行くの?
 我々は左俣に進む。
すぐに左俣大滝150mに行く手を阻まれる。傾斜は比較的緩いが、見た目、明らかにプロテクションは限られ、落ちたら下までズルむけながら滑り落ちていくイメージが湧く。さっそくロープをつけて右壁の端のサビサビボロボロの1本のリングボルトからスタートする。最初のパートは比較的傾斜が強く、しかもホールド・スタンスはほとんどないスラブ登り。3,4手が思いのほか悪く、指先が入るクラックに青メトリウスを決め、すぐ下にある浅いエッジを強引にカチって、草の根元のわずかに盛り上がった部分と凹凸のないスラブにペタペタとスメアしながら、ようやく少し傾斜の緩むところに出た。
この手の登りに慣れていないと結構厳しい。フェルトだとかなり厳しい。
そこから先は傾斜こそ緩むものの、スラブにはところどころ砂が乗り、フリクションを利かしてグイグイ登るイメージとは違う。とりあえず取付きから目星をつけていた比較的太い潅木まで草付きを登ることにし、目の前の草をスリングで束ねて支点を取り、スリップして滑り落ちる自分の姿を想像しながらそれを払いのけるように草付きを慎重に登る。
ようやく目指す潅木に到達しあーさをビレイする。
左俣大滝150m

結構悪い最初の3,4手
 さて、どうしよう。左の流心に近づいたほうが傾斜が緩むのと乾いているので、もしかしたらフリクションを利かした快適な登攀ができるかもしれない。しかしどうみても十分なプロテクションが得られることは考えづらく、ビレイアンカーも作れない可能性も考えると、なかなか一歩が踏み出せない。直上は草付きが続き鬱陶しいが、ここからの草は比較的しっかりいていて、ホールドにできるので落ちる心配が少ないのと、40m先に再び潅木を得ることができる。
ここはより確実性の高い選択をし草付きを直上することにする。案の定、草付きは面白くはないが安心感があり、ほぼ支点を取らずに目指す潅木にたどり着く。

3P目は、草付きを絡めながら左にトラバースし、ようやく流心にたどり着く。ここから上部は再び傾斜が増すが、開放感に溢れ、ようやく気持ちが晴れる。
一度流れを跨ぎ、左壁に移って潅木に支点を取り、そのまま水流沿いを進もうかと思ったが、思っていたよりもヌメりが強く、すでに5m下にある支点の細い潅木は、僕を頼らないでね・・・と訴えかけてくるので、再び一歩が踏み出せず、そのまま右岸の潅木と側壁のコンタクトラインをトラバースする。ほぼ50mいっぱいで少し太い潅木にビレイアンカーを作る。なかなか厳しい。

左トラバースして流心へ

ここらへんも支点は取れない

3p目の途中から下を見る

3p目。左壁と潅木のコンタクトラインを登る

3p目上部
 4Pはスタートに釜があり、もし落ちてもこの釜で引っかかって100mウォータースライダーをかますことはなさそうだから、幾分安心感がある。ここは果敢に流心沿いを登るが結構難しい。Ⅳ+。

思ったよりも苦労してようやく4Pで滝上にたどり着く。久しぶりに平らなところで一安心。
ここから略奪点までは、5mくらいの滝が続くが、ヌメリと傾斜のある滝もあり、巻も交えながら遡行する。再び視界が開け始め、略奪点と60m多段の滝がピカピカと光っていた。前衛8mは流心沿いを登れそうだが、ここもヌメリを嫌って、手前の右壁から登り、この先15mで略奪される右の尾根にのる。尾根上からは右俣の圧倒的なスラブの大伽藍と、優雅でありえげつない布晒しの滝が望めた。目の間の空間は圧倒的に広大で全く越後の里山にいるとは思えない。
略奪点では水量の多くを右俣に奪われている。


巻のやぶは手ごわいものが多い

60m多段滝と略奪点

右俣と布晒しの滝
60m多段滝は左壁の水流沿いを登る。とりあえず目の前の濡れたクラックにカムを決め、右俣にダイブすることはなくなった上で、乾いたところを選んでどんどん登っていくが、大滝と比べて比較的素直でスムーズに登れる。ただ高度感は抜群である。2pで60mを抜けると、青空に映える20mスダレ上の滝が立ちふさがる。非常に美しい滝だが、登るのは少し難しそうなので、右岸の潅木帯を巻く。
60m多段滝

登りは素直

ヌメリが結構ある

スダレ状20mの美瀑

右岸を巻いて落口へ
ここで連瀑帯は終了で一安心。2~3mほどの小滝をいくつか越えていくと最後のアトラクションのツッパリの釜。全身ツッパリの沢特有のムーブで楽しく越えていけるが、たっぱの足りないあーさは途中で上にも下にも行けない状況になり、楽しく見物していたが、マジそうなのでヒモ投げて救出する。

ここからは穏やかなナメとなり、他の記録同様に稜線が近そうな適当なところで右岸のヤブを漕いで稜線に達する。稜線といっても密ヤブで豪雪に鍛えられた筋金入りのヤブはなかなか手ごわい。15分ほどヤブと格闘すると露岩のある展望台。眼下には広大なジロト沢が見下ろせ、相変わらず凶暴そうな布晒しの滝の景色の中を平和な赤トンボがヒラヒラと舞っていた。
稜線上

剛毛

露岩展望台

ジロト沢を見下ろす
展望台からは再度手ごわいヤブこぎが始まるが、次第になんとなく踏み跡っぽくなってきて歩きやすいところも出てくる。少し尾根が広くなって再びヤブをかき分けると、唐突に立派な雨量計小屋が姿を現した。
雨量計小屋からは登山道並みの道が続き、あとはのんびり帰るだけの気分になるが、重松越路からジロト沢側への下降路に入ると、踏み跡はところどころ不明瞭になり、急なところには麻紐が下がっているが、滑りやすく非常に歩きにくい。赤テープはあるものの、少なからずやぶに阻まれ、こっちかな、と疑問を抱く場面もしばしば。ようやくだいぶ下降して来てジロト沢が見えてきたが、高い草の生える崩壊地でついに道を完全にロストする。しかし沢はすぐそこなので、道を見つけるより先に沢に降りることにする。
朝通った沢を下降し、少しわかりづらい左岸のアプローチ踏み跡を見つけて上がり、少し暗くなり始めた頃、林道終点Pに到着できた。
雨量計小屋。唐突だが立派。

急斜面にフィックスロープが続く下山道
 

最近のガイドブックには易しいとは書いてあるものの、思っていたよりもだいぶ難しかった。そもそもこういうマニアックな渓にくるのは、そこそこ経験を積んだ沢ヤであるはずで、そういう人たち基準で判断すべきなのかもしれない。大滝、高巻き、下山。どこを取ってもなかなか一筋縄ではいかない越後の渓。あーさにとってはかなりマニアックなわらじ初めとなったはずだ。

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