Member : カッキー、組長、モトキ(報告)
Timeline : day1: 室堂(8:50)-劔沢キャンプ場(11:20)-偵察
day2: 幕営地(3:40)-取付(4:40)-1峰(6:40)-2峰(7:20)-劔岳山頂(8:40)-剣山荘(10:40)-幕営地-雷鳥平
day3: 雷鳥平-室堂
3連休を利用して、劔岳の源次郎尾根に行ってきました。台風と秋雨前線のダブルパンチでしたが、当日は絶好調の晴れ。快適な尾根歩きでした。
■17日
ケーブルカーとバスを乗り継ぎ、8時過ぎに室堂到着。前夜からの雨が断続的に続いており、正直、テンション低いです。とりあえず、登れるのかどうかは考えないことにします。おずおずとカッパを着込み、劔沢キャンプ場へ向かいます。
雨の室堂 |
先頭は、劔は4度目の組長。毎週の山通いで鍛えた足で飛ばしまくりです。モトキはバテバテで、全く付いていけません。哀れに思ったのか、カッキーがストックを貸してくれました。一番の不安要素は、天候ではなく自分の体力では、と気が重くなります。
雷鳥平 |
別山乗越に着くと視界が開け、劔のゴツゴツした姿が飛び込んできました。八ツ峰の手前に、目指す源次郎尾根も確認できました。「ワクワクするねえ」とカッキー。実際に劔を目にすると、不思議と登れるような気がしてきます。
別山乗越からの下り |
11時半過ぎ、劔沢キャンプ場に到着。早速、取り付きまで偵察に向かいます。山岳警備隊によると、劔沢雪渓は例年にないほど状態が悪く、特に平蔵谷から長次郎谷までクレバスがひどいそうです。2峰の懸垂下降点から長次郎谷へエスケープする場合を考えて、迂回路を教えてもらいました。
劔沢雪渓 最上部 |
平蔵谷出合 |
取り付き |
真砂沢方面のクレバス |
天気予報は、16日時点の「曇りのち雨」から「晴れのち雨」に変わったようで、希望が出てきました。とは言え、台風からの湿った空気の流れ込みで、いつ雨が降るか分かりません。前線が南下してくる可能性も考えると、なるべく早く出発して、午前中には決着させたいものです。某ガイド本では取付~山頂まで6hとあるので、我々なら7~8hはかかると考え、3時半出発、4時半取り付き、正午に山頂と目途を付けました。朝雨なら、中止です。
■18日
起床は2時。夜中は強風で、度々起こされました(ポールが曲がっていました)。起床時も風は強く、雨こそ降っていませんでしたが、決行できるかどうか判断が難しいと思いました。とりあえず朝食を済ませ、外に出てみます。雲はかかっていますが薄く、所々空が見え、少なくとも土砂降りになる感じではありません。
今回のメンバーを考えると、組長は自分より登山経験が豊富で、カッキーはクライミングが上手ですが、2人とも初アルパインです。自分にだってたいした経験はありません。そして、3人で一緒に山に登るのは初めてです。そんな条件でも挑戦できると踏んだ源次郎でしたが、それでも尾根上で雨に降られるのは避けたいし、エスケープルートにも自信を持てず、悩みました。そのうち風は弱まってきて、もはや天気は明らかに回復傾向です。覚悟を決めて、3時40分に出発しました。
雪渓歩きは当然真っ暗。一度、モトキが平蔵谷出合を一本手前と勘違いし、劔沢の中央を歩き過ぎました。昨日のクレバスを見た後なので、恐怖です。
取り付きは、暗くてよく分かりませんでしたが、前日のデジカメ写真と照らし合わせて見つけました。しばらくは、灌木帯です。ヘッドランプの明かりを頼りに岩場を登ったり、樹の枝にしがみついたり、アスレチックな感じです。
ルンゼへの分岐に惑わされつつも、あくまで直登。普段の沢登りならロープを出すような岩場でも、そのまま登ります。尾根上(2本の尾根の合流点)に出る前には、日が出てきました。
1峰ピーク到着が、6時40分。なんと、想定の1時間巻きです。天気は、悩んだのがアホらしいほどの晴れで、後立山どころか富士山まで見渡せます。ぽかぽか陽気と真っ青な空、自分たちしかいない尾根。最高!!!これ以上望めません。お隣の八ツ峰6峰フェース群を眺めながら、のんびり休みました。
1峰ピークにて |
さて、2峰への道すがら、先頭を行く組長をハプニングが襲いました。モトキとカッキーから5m先で、岩の向こうに上半身だけ見えていた組長でしたが、「ゴロッ」という音とともに長次郎谷側に倒れ、2本の足が空に向かって伸びているという異様な態勢になりました。切れ落ちた谷に、頭からダイブするかのようです。モトキとカッキーは凍り付き、目玉が飛び出ましたが、何もできません。一瞬の後、組長はなんとか態勢を立て直し、事なきを得ました。浮き石を踏んで逆立ち状態になったものの、パワーで体を押し戻したようです。「いや~大胸筋、鍛えておいてよかった」という余裕のコメント。ホントは心臓バクバクだったはずです。
八ツ峰 |
2峰への登り |
2峰から剱 |
2峰からの懸垂は、ちょうど25mで下部のバンドに下りることができ、クライムダウンも容易なため、50mロープ1本で充分でした。我々は2本持っていったので、余裕を持ってコルまで下りました。
山頂への最後の登りも、組長が先頭です。さすが15年の登山経験、的確なルートファインディングです。クライマーのカッキーは終盤疲れがでて、最後尾をのんびり歩きます。
山頂は、思いがけず軽装の登山者でいっぱいです。劔はベースとなる小屋までのアプローチが容易なため、登りやすいのでしょう。山頂からは、富山湾を望む素晴らしい展望を堪能しました。
下りは、劔とは言えやはり一般道で、歩きやすさにビックリしました。渋滞を避けるため急ぎ足で下り、ヨコバイに到着。モトキは鎖にセルフを取りつつ、鎖をつかまずにクライムダウンしようと試みましたが、セルフを次の鎖に掛け替える時にカラビナを落とすという失態を演じました。恥以外の何物でもありません。当然、鎖にしがみつくスタイルに素早く変更して、無事通過しました。
総括:
天候判断は難しいと、つくつぐ感じました。冬までに天気図の書き方も覚えたいところです。今回は、まさかの太平洋高気圧の張り出しということで、ラッキーでした。
源次郎尾根に関しては、ルーファイは難しくないので、山経験、体力、最低限のロープワーク、クライミングの心得がそろっていれば、コンディションのいい日なら登れるという、概ね想像通りのルートでした。行きたいかどうかは別として、残雪期も足が揃っていれば挑戦できそうです。