谷川岳一ノ倉沢衝立岩中央稜・烏帽子沢奥壁南稜

2013-07-09

01_無雪期 08_アルパインクライミング d_上信越

Date : 2013/7/6-7
Member : もとき、A子、しだっち、組長
Timeline :6日 ベースプラザ0330~0420一ノ倉沢出合い~0458テールリッジ取り付き~0528中央稜取り付き0557~1100終了点~1600衝立前沢出合い~1625一ノ倉沢出合い~ベースプラザ
7日 ベースプラザ0445~一ノ倉出合い0545~南稜テラス0735~08562P目終了点から撤退開始~1240一ノ倉出合い~ベースプラザ


谷川本チャンデビュー!!

やっぱりこの山は、関東のクライマー、いや日本のクライマーであれば外せない。日本のアルパインクライミングを語る上で、谷川はマスト。ですよね、たぶん。。

GW後、雪山がひと段落した時から谷川の準備を始めた。全ての練習に今回のメンバーが揃ったわけではなかったけれど、個人的には岩トレ会山行や都岳連講習も含めて、計7日間も岩トレをやった。ガイドブックや他の人の記録を時間がある時にコツコツ読み、持っていく装備を吟味し、計画を練った。本チャンの壁は、剱の八峰のフェース以来だったし、谷川の壁は初めて。今回のメンバーも全員初めての本チャンの壁。慎重派??いや、ただ単に臆病な自分は、行く前はいろいろなことを考えてとても緊張していた。

まあ、そんなこんなで満を持しての谷川本チャンデビュー!!

Day1
前夜22時頃に都内を出発し、谷川ベースプラザで仮眠。深夜1時に寝て、2時起き.。
1時間しか寝ていない気もするが、まあそんなことは気にしない。夜行日帰りは谷川の正統なスタイル、谷川のグレードは寝ぼけ眼の状態で登った場合のグレードなのだ(ウソです)。
今日は午後から大気の状態が不安定と言っていたので、なるべく早く出て午前中に片づけるのがよいのだ。

レッドブルに翼を授かり、いざ出発。
登山指導センターで計画書を提出し、ヘッドライトの明かりに照らされて、夜露がキラキラ光っている紫陽花を愛でながら、ワクワクしながら、一ノ倉を目指す。マチガ沢を経て、一ノ倉沢の駐車場についた頃には、周囲もだいぶ明るくなってきた。ちょうど日の出くらいの時間に一ノ倉の岩壁を見上げる。
覆いかぶさってくるような岩の迫力に、思わず息をのむ。しばし、言葉にならない声を出す。皆さん、一ノ倉を見るのは初めてだそうだ。ポカーン、と口を開けてただ眺めている。自分は、小さい頃に紅葉の一ノ倉を見たことがある。もちろん登りに来たのではなく、親父に連れられて、観光に来たのだ。その時、この絶壁に挑戦してたくさんの山ヤがなくなったんだ、ということを聞いた。その時は、山登りはしていたものの、岩登りというものを知らなかったから、「わざわざこんなところ登らなくてもいいのに・・・世の中にはアホな人たちがいるもんだ」、と、思った。そのガキが今こうして「アホ」の仲間入りを果たした笑。
ここに来るまでは、とても緊張していたけど、実際に圧倒的な岩の迫力を前にして、緊張というよりもワクワクしてうれしくて楽しくて仕方がなかった。

今日は、もときさん、A子さんと3人で衝立岩中央稜を目指す。出合いの看板で一ノ倉の全体像をしっかりつかみ、早速、一ノ倉に入る。
最初、左岸からの雪渓の押し出しを乗り越え、右岸の踏み跡に入る。ところどころ分岐があるが、沢沿いの踏み跡はしっかりしているから、迷うことはない。少し樹林帯を歩けば、あとは適当な所から雪渓上に下り、テールリッジまでは雪渓通しで行ける。雪渓も固く安定していて、また傾斜もないため、アイゼン等は特に必要なく、そこらで杖になりそうな木でも見つければ、快適に歩いて行ける。雪渓で冷やされた空気と生ぬるい空気が交互に顔に当たる。次第に、テールリッジの末端が近づき、衝立岩正面壁が大迫力で迫ってくる。
雪渓通しでテールリッジまで

初めての一ノ倉で観光客気分。。

左の丸いのがテールリッジ、三角の岩壁が衝立岩。
テールリッジには、衝立スラブ側に少し回り込んだところから取り付く。岩と雪渓の間は近く、簡単にテールリッジに乗る。樹林帯まではフィックスが下がっているので楽チン。
テールリッジ中間部のスラブはⅢ~Ⅳのスラブだと聞いていた。ここを快適に登るため、ファイブテンのフリクションのいいアプローチシューズを買った。ステルスソールがこれまたバッチリで、ほとんどノーハンドくらいでスタコラ登れる。最後の傾斜が増すあたりはしっかりしたフィックスもあるので、全然問題なかった。
赤が中央稜、青が下降した北稜

テールリッジ中間部のスラブ
谷川のために準備したものといえば、カラビナもすべて軽量化した。大人買いできないので、こつこつと冬あたりから軽くて使いやすいカラビナを買い足していった。アルパインで使いやすいヌンチャクも考えて作った。所詮、入門ルートやないかい!!って突っ込まれそうだけど、ペーペーの自分にとっては本気ルートですから。
後方の雪渓上には10人くらいの後続Pが歩いているのが見えた。我々の先には誰もいない。今日一番手で取り付きに着いた。

中央稜は、烏帽子沢奥壁と衝立正面壁を分かつ急峻なリッジ。リッジといっても、ラインはリッジを絡めて烏帽子沢側のルンゼや衝立側のフェース等を登る。右手には、かの有名な衝立岩正面壁の大ハングが見える。こんな脆そうなハングを越えるなんて普通じゃない・・・。そう遠くない時に、これまた「普通じゃない」人達の仲間入りをするのだろうか。

早速、ロープを結んでTake-off!!
今日は3人で登る。リード一人固定するのが単純だが、せっかくなので途中でロープを結び替えて、全員がリードすることにする。

1P目(Ⅳ)もときさんリード  ※グレードはガイドブックのものです。
左上する階段状から最後は傾斜のあるフェースを乗っ越す。少し岩が脆い部分があるし、朝一なので慎重に。もときさんも安定したクライミング。今回、谷川に向けた練習も含めて、もときさんのアルパイン的??なスタティックなムーブの上手さはとても勉強になった。本当の本人の心境は分かんないけど、、、落ち着いた安定したムーブはビレイしている方も安心感がある。さすがです。
終了点は2つあった。
中央稜1P目

左上のテラスまで


2P目(Ⅱ)もときさんリード
最初、左に少しトラバースして、日の当らない階段状のルンゼを登る。難しくはないが、岩が脆いので恐い。ホールドの安定性を確認しながら慎重に。
不安定な岩だけど、なんかこれもアルパインっぽくて何とも楽しい。「組長、笑ってるよ・・・」なんてA子さんに気持ち悪がられる。人間は他の動物とは違って、うれしい時楽しい時に笑える動物なのだ。
南稜テラスには、以前、頂にいてお世話になったMさんが南稜登攀への準備をしている。南稜も中央稜も目と鼻の先だ。今日の南稜は4~5Pぐらいか。中央稜は、結局、我々含めて2Pだけだった。


2P目の最初のトラバース


3P目(Ⅲ A0)ワタクシリード
右にトラバースして、烏帽子沢側からリッジ上に戻る。露出感抜群でホールドの見えにくいトラバースなので、少し緊張する。使いたくなる縦ホールドがぐらつく・・・。なかなかワイルド。ただ、スタンスはしっかりしているので、ゆっくり重心を移動して行けば問題なし。残置もあるし、赤キャメがばっちり決まるところがある。トポにはA0とあるが、フリーで十分いける。フリーならⅣ+くらいか。トラバースを終えると、フェースからルンゼを登って、レッジでビレイ。
東尾根、滝沢リッジ、滝沢スラブ・・・、今後の夢が広がる素晴らしい景色の中、ビレイするのも楽しい。時折、ゴン!!という重低音を響かせて、雪渓が崩壊する。恐ろしい音だ。自然の圧倒的なエネルギーを感じる。中央カンテや南稜に張り付いているクライマーが見える。人間はなんともちっさい。
もときさんも楽しいねーと言って登ってくる。
3P目最初のトラバース。背中に感じる果てしない空間。




3P目。トラバース後のフェイス

3P目ビレイ点


4P目(Ⅳ A0(Ⅴ-))ワタクシリード
いわゆる核心ピッチ。逆層気味のフェースを登り、チムニー(凹角??)を目指す。A子さんともときさんは、朝ドラ「あまちゃん」の話を楽しそーにしている。登りながら何となく話に入って行こうとするが、観てないから良く分からん・・・。ていうか、上部に行くにつれて、段々とムーブが厳しくなってきた。チムニーを見上げると、ビチョビチョ。濡れている、というよりか、流れている・・・。A0用??の残置スリングが3本ほど垂れている。A0したくないのもあったし、そもそもこの濡れた汚いチムニーに入り込むのがいやだったので、チムニー左のフェースを登ることにする。ホールド・スタンスともに少し細かく、なかなかバランシーなムーブになる。マスターカムと緑キャメで固め取りしていたのでプロテクションは大丈夫だったが、結構、しょっぱかった。Ⅴくらい。
A子さんももときさんも「悪い」と言っていたので、まあそうなんだろう。でもみんなちゃんとフリーで越える。
4P目終了点からの景色は最高


5P目(Ⅲ)A子さんリード
トポのピッチの切り方とはちょっと違った。Ⅲ程度のルンゼを登り、15m先にあったビレイ点で切る。簡単。次のピッチで右上に出てくるピナクルのビレイ点で切った方が、次のピッチのロープの流れがよくなるだろう。
A子さんのクライミングもとても安定している。まだクライミングを初めて日が浅いのに、ここまで落ち着いて登れるのは凄いと思う。才能??いいなーほしーなー。自分、クライミングセンスを感じたことなんかまるでなし・・・。
5P目


6P目(Ⅲ+)A子さんリード
ジメジメした凹角を登り、ピナクルを右手にやり過ごし、今度は一転、日の当たる快適なカンテ状へ。綺麗なハンドクラックにジャミングを決めてもいいし、周囲のガバを使ってぐいぐい豪快に登ってもよい。岩は固く安定しており、乾いているのですこぶる快適。空に向かって登っていくロケーションも最高だ。ただし、Ⅳ~Ⅳ+はあると思う。残置もたくさんあるが、カムもたくさん使える。
6P目のカンテ
ハンドジャムがバッチリでちょー快適


7P目(Ⅲ)A子さんリード
Ⅲ+程度のフェイスから、Ⅱ~Ⅲくらいの簡単な岩場を草付きも交えながら登る。特に印象はない。暑い。
最後、衝立の頭への抜け口がオリジナルルートを辿ったのかどうか定かではない。手前でロープを外し、一服して、右の踏み跡を辿って、Ⅲ程度の脆いルンゼを登ったら、稜線上に出た。
7P目

7P目
最後のⅢ程度の脆いルンゼ。先の空が稜線。


稜線に出ると、白毛門や笠ヶ岳、朝日岳などが見渡せた。とても気持ちがいい。やっぱり最後は、スカーっと視界が広がるところに出る方が気持ちがいい。
南稜もそうであるが、最近は壁を登った後は国境稜線まで抜けることが少ない。昔は、国境稜線まで抜け頂上を踏むということが当然であったそうだが、5ルンゼの頭あたりの岩が非常にもろい上、、藪こぎや長い行動時間などで忌避されることが多いようだ。
アルパインクライミングを快適に楽しむ、という意味では、面倒くさい山歩きをするよりは、ロープにぶら下がってピューっと下りてしまった方がいいのに間違いはない。ただ、個人的には、やっぱり頂上を踏むということを大事にしたいと思っている。アルパインクライミングでも沢登りでもそう思う。そういえば、都岳連の岩場のレスキュー講習で、講師であり大ベテラン沢ヤのWさんと、沢登りにおいて頂上を踏むということについて話した。自分は、遡行して頂上を踏むということを大事にしているという話をしたら、彼は「君はまだ過渡期だ」といった。頂上なんてどうでもい、峠に抜ければいい、と。確かに、沢から沢を渡り歩く本物の沢ヤは、そういう考え方になるのかもしれない。まだまだ、初心者に毛が生えた程度の沢ヤである自分はやっぱり過渡期なのかもしれない。はたまた、ピークハントばかりやっていたハイカー時代の癖か。まあいずれにしろ、山ヤであっても沢ヤであってもアルパインクライマーであっても、それぞれのスタイルやポリシーは違うわけで、こだわりも違ってもいいはずだ。
つーわけで、今度谷川の壁に来る時は、国境稜線まで抜けたいと思っている。どなたか興味ある方は是非行きましょう。
後ろは衝立尾根

当初の計画では、後続Pがいなければ中央稜を下降するつもりだった。しかし、後続Pもいるし、北稜下降の方がオリジナリティーが強いというもとき先生たっての希望で北稜を下降することに。もちろん北稜の下降路も入念に調べてはいた。

尾根上の明瞭な踏み跡を北稜方向に歩いていくと、切れ落ちたところにピカピカのラッペルポイントがあった。今日一番の輝き♡♡♡丈夫な支点大好きー。

早速下降開始。40mほどの長いラッペルを3発。傾斜がきついので下りやすいが、下降中、ロープが引っ掛かる・・・。最後のブッシュに突っ込むところでは、ロープが引きぬけなくなる。どうにもこうにもならないので、仕方なく登り返す。傾斜のきつい泥ルンゼをネマガリタケを鷲掴みにして強引に登る。今日一番のパンプ笑。でもなんか沢登りっぽくて性に合う。ロープが引っ掛かっているすぐ下あたりに来た時に、後続Pのおじさんが下りてきて、頼むとロープをほどいてくれた。よく記録等をお見かけするアルムクラブの方だった。ありがとうございました。
北稜の懸垂支点は明瞭であるが、ちょっと怪しいのもあるので十分チェックが必要だ。

歩いても行けるブッシュ帯を2ピッチ懸垂下降し、最後は40mと15mほどの空中懸垂2回でコップスラブに降り立つ。途中、天気が悪くなってきて、今にも降り出しそうになったが、何とか持ちこたえてくれた。
コップスラブからは、ピナクルを巻いて、明瞭な踏み跡を辿る。しかし、衝立前沢の入り口がイマイチ分からず、上行ったり下行ったりウロウロしていたら、アルムの方が「こっちが正解」と教えてくれた。すんません。
40m空中懸垂

北稜を後にする。右がコップ状岩壁

衝立前沢は水量も多くなく、歩いて下れる。ただ、本谷の雪渓が見えてからの最後の滝は懸垂下降になる。左岸よりの岩に懸垂下降支点がある。
それよりも、滝上から見た感じ、本谷との出会いの雪渓の状態がひどく悪いように見えてビビった。今にも崩壊しそうな繊細なスノーブリッジがかかっている。側壁も悪そうなスラブだ。とりあえず下りてみないと分からないので、下りてみる。
何年か前、剱沢に行くために黒部川の内蔵助谷を一人で歩いていたら、ものすごく大きなスノーブリッジがあった。それを避けるために大きく巻き道がついていたのだが、それに気づかず、これをくぐるのかー!?なんて思いながら近づいていくと、目の前でスノーブリッジが崩壊。。ものすごい爆音と爆風???で吹っ飛んだことがあった(ただビビってこけただけかも笑)。でもあれ見てから、雪渓恐えーと思うようになった。
でも今回は、近くに行くと、右岸の側壁から雪渓の比較的安定した部分に容易に乗ることができた。アイゼンがないので、バイルのピックを使って攀じ上る。一安心。
いつ崩れてもおかしくない・・・自分、日ごろの行いが悪いからな~

衝立前沢の出合い

本谷に戻り、今日やった衝立岩を再び眺め、下山。
一ノ倉出合いでヘルメットを外し、ガチャを整理し、再び岩壁を振り返る。今日一日の充実感にあふれたクライマーにしか味わえない至福の時間。安全地帯に下りてきたという安堵感もある。もときさんは一人遠くを眺めて感傷に浸っている。なかなかその場を離れようとしなかった。とても素晴らしいクライミングだった。
感傷に浸るもとき先生

ベースプラザに戻り、とある温泉で汗を流す。一日が終わると、町で温泉に入ってひと段落できるというのも谷川の魅力。
明日から参戦のしだっちを水上駅でピックアップし、焼きカレーで有名なレストラン亜詩麻で夕食。ここは焼きカレーが有名なんですよーって行っていたのに、肉が食べたいというA子さんはラム肉のなんちゃらを食べ始め、もときさんはただのビーフカレーを、しだっちに至っては何かホイールに包まれたよく分からんもんをつついておる。ま、好きなようにすればよろし。谷川登って、温泉入って、ビール飲んで、カレー食って・・・(しだっち以外)。こんな幸せなことはない。

再びベースプラザに戻って就寝。夜はヒドイ雨だった。明日が心配だ。


Day2

今日は日の出くらいに出発し、一ノ倉に着いた頃にはすっかり明るい。といっても天気がイマイチだ。稜線はかろうじて見える。今日もスタコラとテールリッジを詰める。テールリッジで、来週からシャモニに行くというおじさんに出合った。数週間キャンプを張って、そこらへんの山を登りまくるそうだ。テールリッジをそんだけ早く登れる体力があれば、ヨーロッパの山も行けるよ、しばらくキャンプを張っているから、もしよかったら来なよ、といってもらった。気持ちはあっても先立つものがない。いいなー、ヨーロッパ行ってみたい。いや、行く。
おじさん、今日は冬靴で中央稜を登るそう。地元群馬の山岳会だそうだ。
今日もやってきたテールリッジ
今日はすでに先行Pがいる。南稜にもすでに取り付いているパーティーがいた。濡れて滑りやすい烏帽子スラブを慎重にトラバースし、南稜テラスへ。3畳ほどと聞いていたが、18平米の我が家より明らかに広いような気がする・・・。なんか虚しい。
中央稜には、別で来ていたあ~りさんがいた。
昨日登った中央稜

アップにするとクライマーが・・・


南稜テラスで早速紐をつける。昨日は時間がかかったから、今日はちゃちゃっと片づけよう。ワタクシ・しだっちペアともときさん・A子さんペアに分かれて登り始める。
しっかり結ぼう

南稜1P目

最初は逆層気味のフェースを登り、中間部のビレイ点からさらにチムニーに入る。チムニー内は、案の定、濡れまくっている。ホールドスタンスともにガバばかりだけど、濡れているので滑りやしないかと恐る恐る登る。
しだっちも順調にフォローしてくる。
チムニー
そのまましだっちが2P目のリードに入るが、ここで雨が降り出す。
2P目

しだっちが終了点に着く頃には次第に雨が強くなり、自分がフォローを始める時には岩はだいぶ濡れていた。谷川の岩は濡れると極端にフリクションが悪くなると聞いていたが、そのとおりだった。外傾スタンスも多いので、フォローといえどもヒヤヒヤした。沢靴がほしい。自分たちが2P目終了点、もときさんたちが1P目終了点に着いた時、撤退を決めた。雨はしばらくやみそうもないし、止んでも登攀可能なレベルに乾くのは難しい。はるばるやってきた、しだっちはとても残念だろうが、これは仕方がない。
下降中、またもやらかす。1本のロープの末端が岩溝にひっかかり抜けない・・・。仕方なく、もう1本のロープのみで滝となったチムニーをリードする。最初以上にヒヤヒヤしたが、なんか沢っぽくてしっくりきたのは気のせいか・・・。その後、短くピッチを切って、チムニー下の錆びたハーケン2本の支点で懸垂下降したが、荷重をかけるたびにクネクネとしなる2本の錆びたハーケンには肝を冷やした。

濡れた烏帽子スラブも慎重に懸垂下降し、雨もやんだので、のんびりとテールリッジを下る。衝立てスラブにはたくさんの猿がいた。彼らは、傾斜のきついスラブを前向きにダッシュで下れる。かたや人間代表のもとき氏は、へっぴり腰で恐る恐る下る。「人間!!」、とツッコまれる。彼らは人前で交尾を始めた。。。つえーなー。
烏帽子スラブの懸垂下降

テールリッジを下る


そんなへっぴり腰のもとき氏も、雪渓歩きはめっぽう強い。これが道産子の真骨頂か。みんながズルズル滑って慎重に下る雪渓を、足をクネクネと気持ち悪くしならせながら、ピューっと下りて行ってしまう。。まあでも見た目気持ち悪いから出来ても真似はしない。一方、同じ北国生まれのしだっちは、本当に北国出身??と首をかしげるほど、雪渓歩きがおぼつかない。
雪渓になると急にスピードを上げるもとき先生

クネクネと走り去る・・・

ま、そんな感じで出合いまで戻ってくると、若い男女が綺麗な格好でキャーキャー騒いでいる、いやそれどころか、和服を着たお姉さま方(おばあさんもいたけどね)が茶屋風の赤い敷物と赤い傘の下で抹茶と茶菓をふるまっている。
汗と雨にまみれた汚い感じの我々には場違いな感じだ。いや、そもそも場違いは彼らの方だけどね。
昨日もホルンかなんかの演奏会をやっていたけど、7月1日に開山を迎えた谷川のお祭りの一環だそうだ。
場違いな感じで画的にとてもシュールだけど、誘われるがままに、差し出された抹茶とおまんじゅうを頂く。スリング・カラビナをぶら下げたまま、抹茶を嗜む。やっぱりアルパインクライミングには抹茶ですね!?
しだっち、何その顔??

ということで、谷川本チャンデビュープロジェクトは無事終了。
事前によく調べて、十分に練習して臨んだこともあって、一部緊張した部分もあったけど、クライミングや景色を楽しめる余裕があった。ま、入門ルートだから、と言われればそれまでだけど・・・。

アルパインクライミングは、危険性も高いし、登山の総合力が問われる。十分に準備して、パートナーと練習して、本番では「おつり」が出るくらいが、ちょうどいいあんばいなのだと思う。ギリギリのクライミングをしたい気持ちもあるが、安全に、無事に帰ってくることが何より大事。本当に強いクライマーは、いつも、何度でも、最後まで、無事に帰ってくるクライマーなのだ。

中央稜のクライミングは素晴らしかった。正面壁ではないにしても、一ノ倉のシンボリックな衝立岩を攀じるのは気分がいいし、高度感、露出感、ロケーションも抜群だ。また、北稜を苦労して下降したことは、山登りとしての充実感を一層高めてくれた。

一方の南稜は、結果的に2P目で敗退。天気の事なのでしょうがないが、中央稜には参加できなかったしだっちはとても残念だったと思う。といっても、少しでも南稜をかじったわけだし、上部の様子もしっかり見れたのは次につながる収穫だ。南稜ならいつでも行ける。しだっち、また行きましょう。

反省点も多々あった。まず時間がかかりすぎ。3人での登攀やリードの交代などもあったが、それにしてもだ。クライミング自体のスピードもあるだろうし、一つ一つのロープワークの遅さの集積が全体的な遅さの原因かと思う。また、懸垂下降での凡ミスも多い。天気が急変した時などに、スムーズに手際よく撤退出来なければ、状況によってはピンチになりうる。
今後、もっと練習して、実戦での経験を重ねることが必要だ。

いずれにしても、これから何度も谷川さんにはお世話になるだろう。といっても、もう暑すぎるのでしばらく岩はお休み、沢の方でお世話になります。

最後に、5月から何度も練習にお付き合い頂き、本番でも頼りになるパートナーとなってくれた、もときさん、A子さん、しだっち。おかげ様で谷川の本チャンデビューを果たすことができました。感謝しています。これからも宜しく。

(組長)














このブログを検索

人気の投稿

最近の投稿

Archive

QooQ