Date : 2014/06/14-15
Member : ちえ蔵、フジ、組長
Timeline :14日:1055河童橋~1322岳沢小屋~取り付き偵察
15日:岳沢小屋0338~0410南陵取り付き~0609トリコニー基部~0655第一岩峰上~0850奥穂山頂0935~1150紀美子平~重太郎新道~奥明神沢~1330岳沢小屋~テント撤収~1535岳沢登山口


ファーストアッセントルートから奥穂の頂上を踏みました。

梅雨の晴れ間を狙って、一路、上高地へ。
季節柄、沢渡は車が非常に少なく、どこでも停め放題。
最近、少し安定??して、気が大きくなった僕は、タクシーでいいかなーっていう決断も早めになった・・・。

午前中は冬型で風が強め。気温も東京に比べたら、随分寒い。駐車券が風で飛ばされて、ひと悶着があったが、白タクじゃね??っていう気がしないでもない、陽気なタクシーに乗って、いつもより安く上高地に到着。
予想通り、人は少なめだ。この前のGWの喧騒に比べると、大違い。
いままで何度見上げたか、河童橋からの穂高連峰。今日は、標高の高いところには雲が垂れ込んでいる。まあいい。明日晴れれば。

上高地バス停では、仲良し6人組のおばちゃんが、楽しそうに弁当広げてたけど、強風で弁当飛ばされて大わらわ・・・。まあいい、明日晴れれば。

今日は、小梨平にタケカワユキヒデが来るらしい。すでに、前座の誰かの音楽が林間を漂ってくる。後ろ髪を引かれる思いで・・・笑、岳沢に向かう。

今日は、岳沢までだからのんびりだ。デートコースの遊歩道で昔の淡い思い出を語りながら、テクテク歩く。こういうところは女子と歩きたい・・・。あ、女子いた・・・か。
気持ちのいい桟道には時折猿のおとした爆弾があるから要注意。いちゃついているカップル、踏んじゃえばいいのに・・・。

岳沢の登山道では、これからのハイシーズンに向けて、岳沢小屋のあんちゃんが登山道整備に精を出していた。ご苦労様でございます。

流石に重いザック背負って歩き出すと、途端に汗が噴き出す。もうじき夏だ。岳沢の天然クーラーで一休み。

途中、明日登る南稜のトリコニーという岩峰群が垣間見える。グーグル先生によると、トリコニーとは、滑り止めのために登山靴の底に打つ鋲で、鋸の刃のような形をしたものらしい。確かに、ギザギザの3本の岩峰が鋭角に空を切り取っている。まあでもそれほど威圧感はない。なんとなく可愛らしささえ感じる。
明日登るラインをよく見る。こういう時間が楽しい。

岳沢小屋での道のりは、ほとんど雪はない。
岳沢小屋には、3パーティーほどがのどかな昼時をのほほんと楽しんでいた。引退した御夫婦だろうか。私たちはここまで、と。自分たちの山を楽しんでいる。

小屋のすぐ上にテントを張って、偵察のために雪渓上に乗り出す。
午後ということもあって、雪はだいぶ緩んでおり、少し登りにくい。扇沢が迫ると、手前の滝沢大滝が迫力を持って迎えてくれる。取り付きまでは30~40分ほどか。
盛夏には100mクラスの大滝もまだまだ50m近い積雪に埋まり、15m程の滝だ。左岸には見事な柱状節理の壁が聳立している。自然ってのは不思議だね。

明日登るラインをよく見る。
尾根の左側の雪がついたルンゼが結構上まで伸びている。尾根上は藪漕ぎみたいな感じだ。朝方ならば、あの一筋の雪渓を登るのが、一番すっきりしていて合理的だろう。
全体的な南稜の概念を頭に入れる。


正面の尾根が南稜



滝沢大滝と左岸の柱状節理


南稜取り付き付近は、雪渓が大きく口を開けている。それらを左右に避けながら取り付きを目指す。取り付きは、大滝から一番近い右岸の小ルンゼだ。もう一つ手前の小ルンゼからも取り付けるが、水が流れていた。まあ、言うたら、どこでも取り付ける・・・。傾斜もそんなにないから。
普通の??取り付きには、なぜかトラロープが下がっていた。興ざめだ。誰か回収しないかな。


取り付きのルンゼ

今日の仕事も終わったので、そそくさと小屋に帰って、早速ビール~~~
ちえ蔵さん、今日もビールを前に、ホクホク顔。あすへの期待を込めて乾杯!!!
下のコンビニで躊躇なくエビスを買った僕。第3のビールが本物のビールと自分に嘘をついていた頃にはエビスなんて買わなかったのに。いかんいかん、最近調子乗りすぎだ。

まあそんなこんなで、いつまでも外でツマミを食っていられる。いい季節になったもんだ。
といっても、流石に夕方になると少々寒い。あすの朝は早いので、テントに戻って、夕食。
ちえ蔵さんのタコライスはこれまた格別だった。今度またお願いします。


翌日。
夜は風が強く、時折テントを大きく揺らした。
まだ稜線ではかなりの強風が吹いてるようだ。
本日は長時間行動になるかもしれないので、結構早めの2時30分起床。もちろんまだ外は暗い。
定番のラーメンを喰らい、ガチャをつけ、ヘッドライトつけて岳沢雪渓に取り付く。朝早いから雪は比較的固く登りやすい。暑くもなく、寒くもなく。良い季節だ。
背後には、広大な空間を感じる。乗鞍や霞沢や焼岳が、朝日を待ちわびて静かに控えている。
全てが新鮮な山の朝は、やっぱり気持ちがいい。
 


岳沢をつめる


 予定通り、昨日確認した小ルンゼに取り付く。草と泥のルンゼだ。
アイゼンとバイルが頼りになる。
尾根上でアイゼンは外すつもりだったが、雪の落ちたばかりの草付きは非常に滑りやすく、アイゼンがよく効く笑。

南稜の下部は、いくつもライン取りがあるらしい。雪があるかないかにもよるだろう。
今の季節は中途半端といえば中途半端だ。でも昨日、しっかり登るルートは頭にいれておいた。雪がある所をつないで登るのだ。朝方の雪がしっかりしている時間ならば、アイゼン効かせてガシガシ高度を稼いだほうが効率がいい。


雪をつなげて登る

尾根のちょい左の小ルンゼを登る

霞沢、乗鞍、焼岳

雪、泥、岩、草のミックス・・・
 雪が落ちたばかりで緩んだ地面は、時折、大きな岩ごと取れてしまう。うーん、アルパイン!!!

踏み跡は、なんとなくある(いやないかも)。
次第にハイマツ帯に突入する。歩きやすいところをたどっていくと、ハイマツの中に3メートル位の壁が・・・。目の前の傾斜のある凹角か、右に行って、高度感のあるトラバースか。
山でのクライミングでは、より安全なルートを選びたい。少し、別のルートも探したが、結局、正面の傾斜のきつい凹角を登ることにした。下地がしっかりしているので万が一落ちてもなんとかなるし、上部のハイマツ帯に逃げ込めば、ハイマツたちが手を差し伸べてくれる。

クラックにジャミングにしながら、少しボルダリーなムーブで這い上がる。ちえ蔵さんは、しっかりと細かいスタンスを拾って難なく突破。
フジさん、豪快にアイゼンをガリガリ言わせながら、なんとか突破。

ハイマツ帯の急な凹角。最後はハイマツが手を差し伸べてくれる
ここを通過したら、時折ボルダリングを交えながら、トリコニー基部までは奮闘的なハイマツ漕ぎ。北鎌の独標を北面から登った時の最後の強烈なハイマツ漕ぎを思い出す。
あれほどはひどくなかったが、松脂だらけでトリコニー基部の雪渓へ這い上がる。
ここでひとまず休憩。

眼下には、上高地ののどかな風景が広がっている。乗鞍の大きな山容にうっとりする。すぐ近くには、前穂から明神に至る荒々しい岩稜が続いている。昨年の明神東稜からの主稜縦走も面白かったなぁ。
僕らしかいない空間で、僕らしか見てない景色を満喫した。


早速、トリコニーに続く岩場を登り出す。

ここからトリコニーの岩場が始まる

最初は簡単なⅡ位の岩場だ。誰もいない3000m級の岩場で、硬くてフリクションのいい花崗岩をよじるのは最高に気持ちがいい。
鼻歌交じりで、トリコニー1峰に到着。顕著なチムニーが目印だ。

顕著なチムニーから始まる核心部
一見難しそうだが、チムニー内に入ってみると、螺旋階段上になっていて、意外と簡単だ。なんとなく神秘的な空間。前穂側に開けた窓からの朝日が眩しかった。3人ともテンションが上がって、はしゃぐ。
 

割れ目好きのフジさん
最後は、よっこらせって感じでひとまたぎする

家庭を持つってのは・・・大変なんだよ。

難しさで言ったら、トリコニーの先のちょっとした岩場の方が難しい。1峰の頂上に立つ手前の岩場。3メートルくらいだが、落ちたらやばい。70度位の傾斜。上の方のガバをつかめば大丈夫だが、最初に掴んだホールドが剥がれたので、かなり慎重に行った。Ⅲ~Ⅲ+。アイゼンなしの冬用登山靴は登りにくい。
登った先の1峰の頂上の岩角でロープを出して下に投げて、フジさんとちえ蔵さんをビレイした。
もしかしたら、左から簡単に回り込めるかも知れない。
少し悪い

カンテのガバをつかめば安心だ
1峰を越えると、写真でよく見る1峰~2峰のナイフリッジ。
高度感抜群の針峰を綱渡りのように越えていく。まあそんなに難しくはないけど、楽しい。
トリコニー1峰

トリコニー2峰
 2峰は右側から取り付いて簡単に登れる。
暑くもなく寒くもなく。風もあまり強くない。とにかく気持ちがいい。それに尽きる。これだからこそ、山でのクライミングはやめられない。
今頃街ではW杯で盛り上がっていることだろう。今日の空もサムライブルー。ちえ蔵さんとフジさんのメットもサムライブルー。穂高の岩場からエールを送る(負けちゃったけどねー)。

快適~

3峰は目と鼻の先だが、ルートから少し外れるのでパスする。
ここからは、再び雪渓なので、アイゼンをつける。

 

手前が2峰で奥が1峰

ジャンダルムや西穂の稜線も素晴らしい
ここらへんは、あまり難しいところはない。適当に歩きやすいところを選んで登っていく。時々素晴らしい景色を振り返りながら・・・。

前穂~明神


南稜を忠実に登ると南稜の頭にでる。ただ今回は、直接、奥穂の頂上に立つことにした。
雪渓を使えるという利点もあったが、なんとなくいつも、直接頂上に出るルートを選んでしまう。

雪渓とガレ場を左上していく。頂上付近には、まだまだエビのシッポが張り付いている。
そして頂上へ。
途端に、北アルプスの全貌があらわになる。開放感がたまらない。どこまでも見えた。
奥穂の山頂に立つのは、8回目位??。何度来たって気分はいい。
小栗旬に時々間違えられるとか言ってるフジさんは、小栗旬と同じ場所に立つ。
槍方面

ジャンダルム
 
 
頂上でのんびりしていると、涸沢からの登山道をカメラで撮影しながら登ってくる人達がいる。なんかの撮影かなーなんて見ていると、アドベンチャーレースの第一人者である田中陽希さんだった。百名山一筆書き「グレートトラバース」というチャレンジ中だそうで、4月から10月くらいまで???南から百名山を歩き続けているらしい。それも山と山の間の平地も歩きで・・・。何度かテレビ見たことがある人だったが、相当な変態だ笑。撮影クルーには、かつての日本のアドベンチャーレースの第一人者であるもうひとりの田中さんもいた。
8月の放映分だそうで、多分僕ら出演しちゃってる。乞うご期待!!!
そうそう、空撮用のラジコンへりが穂高山頂で墜落してた・・・。涸沢に落ちていったけど、どうなったのかな・・・。受信料は大事にしてね、NHK.
普通の登山者A・B・Cと田中陽希氏
さてさて、南稜は終わってもまだ完全には気は抜けない。事前情報では、吊り尾根の雪の状態が中途半端であまりよろしくないらしい。岳沢小屋には、重太郎新道から吊り尾根は一般登山者通行禁止と書いてあった。僕らだって一般登山者ですけどね。
まあとにかくいってみる。
吊り尾根を臨む

吊り尾根はずっと岳沢側のトラバースだ。したがって、沢筋に残っている雪渓を何度もトラバースしなければならない。ところどころ傾斜のあるところもあるが、アイゼン・ピッケルがあって雪山をやっていば全く問題なし。アイゼンを付けたり外したりするのが面倒くさかった。

前方の紀美子平付近では、県警のヘリが怪我をした登山者を搬出していた。詳しい話は知らないが、単独の登山者が怪我をして、ヘリを呼んだらしい。それにしても、あのホバリングの技術はすごいなぁ。

雪渓を何度もトラバース



奥穂を振り返る


紀美子平で一服し、重太郎新道を下る。急な雪渓もあるが、特に問題なし。雪渓上では、岳沢小屋の方が、丁寧に旗を立ててくれている。最後の方は、左側の奥明神沢に道がつけれられていて雪渓上を走るように降りられるので、夏道よりも楽ちんだ。10人くらいでアンザイレンしているガイドパーティーの横をすたこら走り抜ける。この人たち、上部の雪壁でなんとなくビレイしてたけど、システムに無理がありすぎて、形だけで全く意味なし。ガイドだからって安心しちゃだめだ。なかにはインチキもいる。


 
 


奥明神沢
岳沢でゆっくりテントを撤収して、上高地に帰る。今日も上高地は平和だ。昨日よりは人が多い。
河童橋の辺でカキ氷でも食おうかという話になったけど、まだ夏じゃないからカキ氷は始まっていないらしい。仕方ないから、スムージーを飲む。なかなかうまい・・・。
スムージー飲みながら、山ガールを物色する。さすが河童橋。ランドネからそのまま出てきたようなコテコテの山ガールがいた。うちの会、地味な人ばかりでこういう女子いないからな・・・。ジロジロ見る。

帰りの温泉は、タクシーのおっちゃんに勧められた初めてのところに入ってみるも、超いまいち。やっぱ定番のあそこの方がいい。
飯は、お子様大好きのレストラン十字路。ハンバーグ・パスタ・オムライス・カレー・・・。男の子大好きメニューに三十路三人組がはしゃぐ・・・。三つ子の魂百まで。


今の時期、確かに奥穂の南稜というルートを登るには、中途半端な時期だ。中途半端に出現する雪渓を処理しなければならないし、それだけ装備も増える。藪こぎもあれば、泥壁登りもあり、岩登りもある。その上、下降路ん選択肢もいろいろと考えなければならない。

でも、だからこその楽しみがある。いろいろ考えなくちゃならない。不確定要素も多い。だからこそ山ヤとしての楽しみ、山登りとしての楽しみがある。山は自分で考えて登るものだ。100年前、ウェンストンさんもいろいろ考えてこのルートを登ったはずだ。そして、上高地に帰ってきてやっぱりこう思ったはずだ。「山はやっぱり楽しいなぁ気持ちがいいなぁ」・・・って。


アルパインクライミングルートとしての奥穂南稜は、初心者向きだ。細かいところで迷うことはあるかもしれないが、全体的にルーファイは容易で、岩登りもⅢの範疇を超えるものではない(変なとこ登らなければ)。ただし、岳沢ベースで登ると、下山路にどこを選択するかにもよるが、全体的な行動時間は長めになり、のんびりロープなんか出してると、時間切れになる恐れもある。Ⅱ~Ⅲ程度の岩場を安定して素早く通過できる技術と長時間行動ができる体力が必要になると思う。

フジさんは穂高のバリエーションは初めて。別に自分もそんなに経験があるわけではないですが・・・。
簡単な岩場なら、ノーロープでも全く心配ないし、何より一日中歩ける体力もある。山ではやっぱり歩荷力はとっても大事だと思う。どんなににクライミング能力があっても、歩けなければダメだ。歩きの強さが山ヤの全ての基礎だ・・・と半人前ながら思います。
今年も沢に岩にたくさんお付き合いいただければ幸いです。

ちえ蔵さんも相変わらずの安定した登りが心強い。ロープのシステムの理解も早いので、一緒に行っててやりやすい??し、楽しい。最近はクライミングもうまいので、これからもどんどん強くなっちゃうだろう。。

なにはともあれ、お二人、ありがとうございました。
今年は、先々まで行きたいルートを共有しましたが、ぜひぜひ、よろしくお願いいたします。
いい山で、いい沢で、いい仲間で、最高な時間を共有しましょう!!!

(組長)

 
 
 

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