蔵王・名乗川小屋ノ沢

2018-06-24

06_沢登り b_東北

Date : 2018/6/23-24
Member :組長、あーさ、かとー
Timeline :23日:ブドウ沢登山口0913~1011魚止め橋入渓点1031~1218魚止滝~1520BP1040m付近
24日:BP0628~0703大滝~1050稜線登山道~1110名号峰頂上~八方平~1428ブドウ沢登山口
Author :組長

新緑。みちのくの沢旅。


久しぶりの東北。さすがに道中長い。
延々東北道を抜け、かとーくん・あーさ人生初の山形に入ると、雄大な蔵王連峰がどっしりと鎮座していた。神奈川の川崎から蔵王の麓、川崎町へ。川崎ナンバーは見かたによってはもろジモッティである。
渓流釣場を抜け、ところどころに止まっている釣師っぽい車はどれも東京方面のナンバーだ。
登山口の駐車場にいた道中共にすることになるパーティーも多摩ナンバーで東京の山岳会だった。
山ヤの考えることなんかシンプルである。
天気予報見て、天気図見て、「そうだ、東北行こう。」と。
かの名キャッチコピー以上にシンプルな思考回路である。

さっそく準備して、しっかりと熊鈴をつける。
最近、宮城県の山間部では熊の目撃情報や事故情報が非常に多い。
とある本には「平成のシシ荒れ」と表現される昨今の状況。
平成30年度の宮城県のクマ目撃情報をググっても、既に数多の目撃情報と事故情報が掲載されている。
ある種、今回の遡行の核心的不安はクマといっても過言ではなかった中で、早速、アプローチの森の中でクマさんに出会った。ツキノワグマの親子だ。
これまで何度も出会ったクマさんと同様に、向こうから逃げていったが、不安感は増す。

入渓点となる魚止橋までの歩きの途中でもところどころで獣臭がすごかった。
その上、オシャレなパーティーピーポーのカトーくんの熊鈴は「音色重視」で選んだというだけあって、熊が逆に誘われそうな心地よいメローな音色を奏でている。
ガラン、ガラン、と、カウベル的な粗い音色の僕の熊鈴と協奏しながら、かつて車が通る林道だったとは信じられないほどに原野と化している林道をゆく。
ヤブを漕いだ先に突如として現れるガードレールと魚止め橋

眼下の渓が小屋ノ沢だ

橋から入渓
 橋の上で準備し、早速、緑の渓へご入渓。
初っ端から深い釜や磨かれたゴルジュ、長い淵など渓の魅力全開で迎えてくれる。
この渓は、花崗岩で形成され、水も澄んで森も豊かなので癒し要素満載である。
渓相としては、東沢の鶏冠谷とかそこいらの花崗岩の渓に似ている。
最初の長い淵で先行Pがロープを出してへつりを頑張っていたが、少し上からトラバースできそうだったので、プルプル震えながら頑張っているおじさんには悪いが、スタスタと1m上を歩いて越える。最後は釣師が設置したと思しきトラロープを補助に長い淵を通過。盛夏であれば泳いでもいい。
ヌメリは結構強い。ラバーソールだとかなり足置きを慎重に行う必要がある。
その後もしばらくは、ゴルジュ、深い釜を持った小滝、のパターンが連続する。まだまだ飛び込みたくなるような暑さとは言えず、泳ぎを回避して、ほぼ水線通しではあるが、微妙なへつりと側壁のクライミングで次々と訪れるアトラクションを越えていく。蔵王にあっては、比較的人の入っている渓だとは思うが、まだシーズンが早いのもあるかもしれないが、巻くにしても登るにしても、踏み跡や人の跡が乏しく、それゆえ沢登りの最大の魅力の一つである探検感というか開拓感というか、ルーファイの楽しさというものに溢れている。
花崗岩とエメラルドグリーン

磨かれた花崗岩の上は、茶色のヌルヌルのところが多い。フェルトの方がいいかもしれない。

右端のクラックを登る

左岸の支沢の滝

基本は水線通し

水はかなり冷たく感じる。

上部の雪渓のせいか、水はかなり冷たく、なるべくもろに浴びないラインを攻める。
 魚止め滝までは、ワンポイント悪いところもあるが高さはないので、お助けだけでグイグイ進む。
今回の遡行は、実は釣行である。個人的に。淵や釜、落ち込みが来るたんびに渓魚の姿を追うが、数匹がささっと岩陰に隠れるだけでそれほど魚影は濃くない。
出発前に見た記録で、30cmの大物をカラビナにぶら下げている人を見て、かなりコーフンしたが、時間が悪いのか、見る目がないのか、それほどのヤツはなかなか見当たらなかった。

やがて渓の先には端正な直瀑の魚留滝が見えてくる。これを左岸から巻き、懸垂一発で沢床に復帰すると、右手に大崩落地と20m滝。20mは登れなくもなさそうだが、大崩落地とともに左岸から巻き上がる。
魚留滝
 魚留の先にもまだまだ魚影はある。
幕営予定地までの先も見えてきたので、ここらへんから竿を出す。
しかもその最初の釜には、尺クラスのヤツがいるではないか!色も黒く、模様もはっきりしていてなかなかの風格だ。

早速、シーズン初めの慣れない手つきで竿を準備し、毛鉤を丁寧に打ち込む。
・・・が、全くの無反応。
そもそも寝ているんだか起きているんだかわからないくらい動きが緩慢としていて活性が悪い。
水面を流してみたり、少し沈めてみたり、いろいろ試してみたが、一瞥すらくれない。

「ワシ、この釜で何年生きとると思うてんねん!年季が違うねん!そんな素人の毛鉤にかかるような雑魚やないねん!このアホ!ボケ!カス!」

と、上目遣いに啖呵を切ってくる釜の主に、全く太刀打ちができない。東北蔵王なのになんで関西弁やねん!ってのはさておき、餌で攻めるカトーくんの方にも全く興味を示さなかった。

「スタイルこそ問題だ」
レジェンドクライマーの仲間入りをしつつある倉上さんは、瑞牆末端壁「春うらら」ダイレクトラインをグランドアップフリーで挑む記録の最後にそう語っている。
そう、スタイルこそ全てだ。いくらボウズを重ねて、もう陸奥の深い山寺あたりに出家した方がいいんじゃないかという感じでも、テンカラというスタイルにこだわりたいのだ・・・。
そうやって、毎回獲物を運んでこない僕は、オスとして確実に失格であるし、ダーウィンの進化論に基づけば確実に絶滅する動物であろう・・・。
でもテンカラで釣りたいのである。
ガッキーさん教えてー
釣れない、いつもの画
 さ、気を取り直して先に進む。
幕営予定の上の二俣の先を目指して引き続き小滝を越えていくが、5~6mくらいの登れそうにないスラブ滝で、右岸の悪い草付き岩場から潅木に抜ける巻きで2Pフィックスしている間に、追い抜いていた多摩のパーティーがスラブ滝をいとも簡単に登り追い抜かれる。
自分のルーファイ力の無さに愕然とする。
というよりも、そんなに広さは望めない幕営地にテントが張れるかどうかが心配になる。
結局、幕営地はまあそこそこ広く多摩パーティーの大きなタープの隣にテントを張ることができたが、快適な焚き火ポイントは先に取られてしまった。

ああ、今日も釣れなかったなぁ。
そうやって少し肌寒く、虫が鬱陶しい蔵王の夜は更けていった。
ぬめりが強いので突っ張りもなかなかキワどい

右岸巻き
 翌日。快晴。
多摩パーティーの焚き火の煙がたゆたう緑の渓を進んでいく。
さっそく現れるゴルジュと3段10mは全て直登していったが、上部は少しかぶっていて、結構悪かった。後から見たトポには右巻きと記載されていた。

その先には、これまた直登の困難そうなスライダー状、トイ状の連瀑。これを右岸から巻いていくと、陽光に輝く大滝が見えてくる。

さっそくロープをつけて右側の乾いたところを登り始める。
中段までは、階段状で特に問題ないが、目指す潅木までの最後のスラブがなかなか痺れる。その上、虫が異常に多く、目鼻口と体の穴という穴に入り込んでくるから、かなり集中力をそがれる。
ヌメったクラック沿いに登っていくが、落ち葉と泥の詰まったクラックは、プロテクションを取ろうとほじくり出してみても、クラックというよりは単に凹角でむりやりカムを決めてみても、すぐに弾かれる。
傾斜はそれほどないが、足元はヌメヌメでスリッピーな上、確実なガバやガバカチがないから、ほぼ足に頼るしかない。
かなり逡巡したが、2m先にマイクロカムを決められそうな箇所を見つけ、そこまで行けば、悪知恵働かして真上の潅木に届きそうだったので、一歩一歩慎重に攀じり、目論見通り、ヌメったクラックに青メトリウスを決めた。ヌメリでテンションかけたらはじき出される気もしたがこれで一安心。
ここから、なんでもありの沢ヤ精神で長いスリングに重りをつけて投げ縄で太い潅木にプロテクションを取れればもう安心。
スタイルこそ問題??そんなの知りまへん。怪我せず死なずに登れれば万事OK.
水流右側の潅木帯に抜ける。30mロープでは途中で足りなくなり、補助ロープを連結した。
最後のヌメったスラブは結構悪く、落ちれば多分死ぬので慎重に。落ちたら多分抜けるボロボロの軟鉄ハーケンが
ひとつあったが、小さなカムは一つか二つ決められる。

出だしの方が傾斜があるが、階段状で簡単

中段はテラスになっており、ここでピッチを切ってもいいが、摂理に乏しくアンカーは作れそうにない

潅木まで辿り着くと後は、草と潅木をわし掴みにして、落ち口まで進む

核心のヌメったスラブ。
我々がほぼ登り終えた頃、多摩パーティーは滝下まできていたが、しばし見上げたあとに右岸巻きに入った。
大滝で思ったよりも時間がかかった。
その上、ガンガン照りつけだした夏の日差しの下、虫が異常に活発化し、鬱陶しい事この上ない。多摩パーティーは網を被っていたが、あれが正解。
夏に向けて生き生きとした生命の躍動に詩情を駆られるどころか、口に入った虫どもを吐き出し、悪態をつきながら突き進む。

まだまだ滝は続き、時折キワどいツッパリや潅木ワシ掴みのヤブを越えて行くと、次第に頭上に稜線を感じられるようになってくる。



障害にはならなかったが、上部にはまだまだ雪渓が残っている
 最後は名号峰の左肩の鞍部の登山道に出る予定だったが、どこを詰めても登山道に出るはずと少し雑に進んでいったら、猛烈なヤブの先に見えた景色が予想していたものと全く違っていたので、面倒くさいがここは現在地特定が確実な最後の二俣まで戻る。
進路をやや左よりの沢筋に定め、少しのヤブを漕いで鞍部に出るが、やはり登山道にはぶつからずに少し焦るが、もう10mヤブを進むと、突如、登山道に飛び出した。蔵王に通じる北蔵王縦走路のメインコースといえどもそこは素朴な東北の山道。思っていたよりもわかりづらい奥の細道であった。

そのまま名号峰頂上まで一投足。
山頂からは、雄大な蔵王山塊の姿と青空が望め、広大な裾野に伸びる蔵王エコーラインには沢山の観光バスがゆらゆらと走っていた。

なにはともあれ、夏に向けて何もかもが生き生きとしていたなぁ
岩魚も虫も、緑も空の青さも・・・
登山道

随分登ったように思ったが、廻り目平より低い標高・・・。

蔵王山

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