Member :ヤマ、ユウ、ガッキー、マッキー、バード
Timeline :
11日 地熱発電所ゲート0506~葛根田川入渓点0536~0700お函~0811葛根田大滝~1547テン場(930m地点)
12日 テン場発0529~0935大白森湿地帯~1133明通沢本流出合~1300明通沢林道~1420地熱発電所ゲート
Author :バード
日本の夏、沢旅の夏。
都内の花火大会の誘いをスルーして、目指すはイーハトーブ岩手県。
葛根田川をめぐる沢旅は、沢登りの楽しさに溢れていた。
3連休の初日、新宿を出発し、目指すは東北・葛根田。しかしながら、道中、雲行きが怪しい。
「持ってくるって言ったじゃないですか」
ヤマが、ガッキーを問い詰めている。どうやら楽しみにしていた釣りのエサを忘れたらしい。
あと一言あれば三角絞めでKOだっただろう会話を仲裁し、21時閉店のキャスティング盛岡店を目指す。
関東平野から盛岡までの大横断の末、見事に閉店前にキャスティングに到着。
車中ではガッキーの大演説「釣りをやらない奴は沢ヤじゃない」
僕もこの東北という地で、沢ヤ見習いとして一皮むけたい。
目の前には手頃な渓流向けの釣り竿。人生はじめての釣り竿の衝動買いを経て、目指すはゲート手前の休憩所だ。
ナベがどうしても盛岡冷麺をすするまでは眠れないということで、道半ばでの焼肉屋で1ピッチ目を切り、休憩所に到着。休憩所には1組の登山者が先客として陣取っている。就寝というか仮眠を経て明日に備える。
初日、聞かされていたほどアプローチは遠くない。
地熱発電施設の脇をくぐりながら、明日、ここでまた出会うだろう明通沢の林道との分岐横で入渓。ああ、僕は岩手まで沢登りに来たんだ、という感慨にふけりながら、堤防のマントルを返す。
立派できれいな休憩所 |
大地は生きている |
眠気のなかでカラ元気におどける |
入渓でござい |
しばらく進むと左には巨大なナメ滝。初手だけでもと思い取り付くも厳しい。
そして、その次に左岸に現れるのはドクロ滝だ。これまた下部に取り付くもヌメリがきつい。
とりあえず一歩踏み出す |
ドクロに見えなくもない |
この葛根田川、最初の核心は「お函」とよばれるU字型のトロ場で、それが水量によっては敗退理由になるとのこと。慎重に歩を進めると、既に「お函」は超えていた。あれ!?。本日の水量は少ないらしい。
これが「お函」なのか?たしかに増水したらヤバそう |
世界観のあるアーティスト風な一枚 |
若さとは素晴らしものだ。目の前の選択に迫られたとき、効率的な選択ではなく冒険的選択をとれるのが若さだ。本能を解き放たれた飼い犬のように水流に飛び込んでいくマッキー。「いい沢ヤになれよ」とガッキーがつぶやく。
Into The WILD!! |
15m葛根田大滝は明瞭な巻道を左岸にとり、滝ノ又沢の分岐を目指す。
時計に目をやる。ん!?まだ8時台じゃないか。
ガッキー(akaハルク)の様子がおかしい。
どうやら滝の落口にたまるアブクと、さっきから目の前にチラつく魚影をみて、アドレナリンが全開らしい。見る見るうちに体が緑をまとい、伝家の宝刀、テンカラを抜く。
「皆さん、休んでてください。僕は先に行ってます」どうやらタイトルマッチのゴングは鳴ったようだ。
しばらくの休憩の後、ガッキーのビクにはKOされたイワナがぶら下がっていた。
RIP。今宵はイワナまつりだ。
本日のメインイベント、葛根田大滝 |
記念にパシャリ。葛根田→「かっこむ」というボケ |
左俣との分岐に到着。まだまだ時間はある。
急遽開催が決定した、頂・夏のイワナまつり。野郎どもが竿を奮う。
じつに獲ったり10匹超。ガッキーが服部文祥よろしく、イワナの皮を剥いでいる。
目の前にあらわれたのは、イワナの刺身だ。「うめ~~~」二俣に歓喜の歌がこぼれる。
次には現れるのは、15m滝。ここは右岸を巻く選択をするが、少し高く上がりすぎたようだ。次の5m滝を泳いで→ボルダームーブでパス。ここはお助けヒモをだした。
ガッキーさんのテンカラ教室受けながら930mあたりで優良なテント場を発見。ここを本日の幕営地に。
渓流釣り入門 |
本日のメインディッシュ |
我々はいかに「石」にかじりついてきたか |
15m滝。右岸の小尾根から取り付くも高く巻きすぎた |
本日の夕食は、イワナの塩焼き食べ放題と、夏カレー。なんと骨酒もできあがっている。
なんだか宴会も盛り上がってきた。うまい酒と魚についつい本心が垣間見える。
あいも変わらずヤマが、ガッキーにワンワンと噛み付いている。
危うく帰りの車が4人乗りになるところだった。最高だぜ、沢の泊まりは。
今宵のテン場なり |
すべて美味しくいただきました |
夜のとばりの物語 |
が、足場も泥で悪く、草付きも悪い。潅木も間隔が遠くいやらしい。ここではロープを出して落口に着地。4mを左からあがり、小滝を通過すると沢が細くなってくる。沢地形沿いに大白森の湿原を目指すも、竹藪が出現。ヤマさんのマットがショットガンで打たれたような様になっている。途中で沢沿いの竹やぶ蛇行に嫌気がさして、直進ルートを試みる。GPSを見る、見事に戻っている。大人しく沢に戻ろう。しばらくすると湿原に到着。安堵とともに笑みがこぼれる。
ここから登山道に抜けるルートもあるらしい |
左側から登れそうだが巻きを選択 |
左岸から巻くがイヤらしかった |
藪こぎでニヤリ |
ヤブを抜けるとそこは湿原だった |
ウロウロとした軌跡。くだりの沢筋は地形図より明瞭 |
明通沢へのくだり、ここは反省を生かし沢地形を素直に降りる。
見事に二俣に合流。ようこそ明通沢。最初の5mは左岸からクライムダウンもできそうだが、懸垂下降。その後は晴れてきたこともあり、2019年夏のドボン大会開幕。
15mを懸垂下降。その後の二股を本流に合流して超えると明るくナメが美しい。
こんな下山があっていいのか、それぞれが、それぞれのスタイルでナメを下る。ドボンして泳ぐ者、濡れを避けてへつる者、無駄なボルダームーブを繰り出す者。
さっさと先を進むオスどもにワタがキレる。「私は東北に癒やされにきたんだ!先を急ぐんじゃない」それはそうだと、トボトボくだる。
橋に合流して、今日のやぶ漕ぎに比べれば屁でもない古びた林道を1時間ほど進むと、昨日の入渓ポイント分岐に到着。
左岸からクライムダウンできるが懸垂 |
懸垂が面倒なのでドボン |
15mは流石に懸垂で対応 |
出会い。こんなに楽しい沢の下りがあっていいのか!? |
すぐの風呂場で湯を浴びて、途中の小岩井農場にてソフトクリームを喰らう。
ナメが良かった、登攀が面白かった、そんなことじゃなくて、この沢が素晴らしかった。
葛根田川、トマの本にはこう紹介されていた「この沢を遡行し終えたとき、あなたはもっと沢登りが好きになっているはず」
この東北の地で、僕は沢登りが好きになった。