Date : 2012/04/14-15
Member : もとき、カズ、組長
Timeline : 14日 「都内」~0900「美し森ファームP」0951~1221「出合小屋」~「偵察」
15日 「出合小屋」0409~0501「2100メートル付近ナイフリッジ」~0619「カニのハサミ」0645~0705「30m壁」0816~0824「ニセ天狗」~0945「大天狗基部」~1140「大天狗ピーク」~1232「主稜線」~1435「ツルネ」~1657「出合小屋」~1930「美し森P」


4月の会山行「雪山集中」として、八ヶ岳東面に赤岳天狗尾根班とツルネ東稜班に分かれて、合計5人でプチ集中してきました。



14日の早朝、格安レンタカーの1BOXに5人乗りこんで雨の東京を出発。南岸低気圧の影響で予報通りの雨。八ヶ岳まで来てもやっぱり雨。皆さん、いまいちテンションあがりません。

格安レンタカーはナビもオプション。貧乏人の選択はもちろんナビなし。普段、ナビという文明の利器に慣れきっている僕らは、都内でカズさんピックアップにしばし道迷い、八ヶ岳で美し森駐車場をなぜか見逃して通り過ぎ、美し森ファームの駐車場に9時頃到着。美し森駐車場と距離的に大した差はないのでここから出発することに。外は雨なので、皆さん、動き出すのも億劫なご様子。ザックカバーをしたりポンチョを羽織ったり、それぞれ雨対策をしてようやく出発しました。


ザックは25~30㌔ほどあるでしょうか。ロープ等の登攀具と6テン、日本酒パックとビールなどなど、大倉尾根ボッカトレを思い出すようなザックの重みで軋む体にある種の快感を覚えながら、地獄谷に通じる林道をどんどん進んでいきます。ちなみに、美し森周辺はボルダーいっぱいでいろいろと開拓出来そう。もう登られてるのかな。。

途中、地図上の林道を離れ、地獄谷の沢沿いを歩いていきます。いくつか堰堤を越えますが、階段やペンキマークもあり歩きやすいです。左右には綺麗な氷爆がありました。


出合小屋までは渡渉が4~5回。状況によってはドボンもあるかなと思っていましたが、それほどシビアなところはなく、岩づたいに飛び越えられました。Kayoさんは結構苦戦してましたが・・・。他のパーティーは小屋まで長靴履いてきていました。これが正解かもしれません。


ゆっくり歩いて2時間30分ほどで出合小屋到着。工事用の小屋みたいな感じ。それでも、無人の小屋ですが良く整備されていて、小屋内には物干しやストーブもあります。外にはちゃんとトイレも。管理されている高根山岳会の方に感謝です。

なお、山と高原地図の出合小屋の位置は実際とは違うようです。地図上は地獄谷本谷と赤岳沢の二股の先に位置していますが、実際は二股よりも少し手前の右岸にあります。

トイレ

小屋内には、男性2人組と男女2人組がすでに到着していて、皆さん天狗尾根を目指すということです。男女2人組は休憩後、先に進んで行かれました。

小屋でまったりし過ぎると偵察が面倒になってしまうので、すぐに偵察に出発。赤岳沢の看板を右折して渡渉後、5,6分ほど沢を進むと赤テープの巻かれた小沢を発見。どうやらここが天狗尾根取り付きのようです。急登をサクサク登ると程なく尾根に乗ることができました。尾根地形が明瞭になったところで、まあこのくらいでいーかってことで偵察終了。トレースはあるし明日は順調にいきそうです。偵察帰りは、取り付いた小沢ではなくもう一つ上流の小沢を下降。一つ目の小沢よりこっちの方が登りやすそうだったので、本番は二つ目の小沢から尾根に上がることにしました。

天狗尾根取り付き


さてさて、小屋に帰ってからはもちろん宴会。会の中のゴシップ話(99%妄想の世界ですが)カズさんのプライベートな苦労話で盛り上がりました。めでたい人たちです。夕食は鳥鍋とラーメン。うまいです。


宴会中にやってきたベテラン男女2人パーティーさんとも東北の沢や山菜、釣りの話題で盛り上がりました。6月の新潟の山菜・釣り会山行が楽しみです。

人々が盛り上がる中、出合小屋のミッキーがチョロチョロっと登場。人が寝ていないうちに堂々と出てくるなんて大したもんです。先週、越沢でカラスに飯を食われた教訓を生かして、ザックの奥にばっちりと食料をしまいました。ミッキーは寝付いた後もチョロチョロと走り回ってました。

外はしんしんと雪が降り続いていました。



翌日。

2時過ぎに起床すると、外には三日月。星もきらきらと輝いています。風も全くなく、静かな、しかし気持ちは高ぶる朝です。カズさんが用意したスープパスタを腹いっぱい食べて、暗い中出発。


最初の渡渉は、岩の表面が凍っているのか、ツルツルなので慎重に。そのままヘッテンに輝くトレースをサクサク登ります。カズおじさんは早くも息切れ気味。樹林帯の尾根では特に怖いところはありませんが、2100m付近のナイフリッジは少し慎重に。前方にはこれから登らせてもらう岩峰群が見え、テンションが上がります。左に目を向けると、荒々しい権現や旭の東稜、ツルネが朝日に赤く染まっています。振り返れば富士山。完璧です。

2100m付近ナイフリッジ

樹林も疎らになってくるとカニのはさみが現れました。手前の平坦地でアイゼン、ハーネス等を装着。ここからが楽しみの始まりです。

カニのハサミ


カニのはさみは、思っていたよりも小さく、つまりズワイガニ程度に想像していましたが実際はアメリカザリガニ程度でした。アメリカザリガニのはさみにはさまれに行くルンゼ直上ルートもあり、それほど難しくなさそうでしたが、はさまれたら大変なんで、セオリー通り左側から巻きました。1か所左側が切れ落ちている所があり、慎重に。



カニのはさみを越えると、次は10mほどの草付。

ホールドはあまりなくアックスはあまり刺さりませんが、傾斜も緩いのでピックを上手くひっかけながら登っていけば問題ありません。





続いて、30mの壁。

先行2パーティーがすでに取り付いています。待たされそうなので直登ルートを模索してみます。いくつか登れそうな凹角があります。が、傾斜がきつく、ランナーがとれるかも微妙なので、セオリー通りトラバース後にルンゼ直登することにしておとなしく待ちました。事前に情報収集した段階では、残置のフィックスがあるということでしたが、見当たりませんでした。古いから撤去されたんでしょう。

30m壁ビレイ点

先行パーティーがようやく抜け、しっかりした木でビレイ点を作り、もときさんがリード。

トラバース中は灌木にランナー1つしか取れません。後方の赤岳沢は数100m切れ落ちていて、落ちたらヤバいです。スタンスは凍っている部分が多く結構いやらしい。ホールドは目の前の岩が使えます。個人的にはルンゼへの抜け口でちょっと難儀。リードは怖そうです。さすがもとき先生。急なルンゼは先行者のステップが付いているのでアックス振り回してサクサク登ります。気持ちー!!

トラバース
急なルンゼ
チャレンジ!アルパインクライミング



次は、ニセ天狗。

大天狗と間違えやすいのは分かりますが、立派な岩峰で小天狗よりもデカイんだから、「ニセ」なんて名付けずに「中天狗」くらいにしとけばいいんじゃないかと。まあそんなことはいいとして、ニセ天狗は手前のバンドをトラバース後、ニセ天狗の右肩に向けて右上します。最後は右から巻きます。手前のリッジ上を直上するルートにもトレースがありました。どちらでも良さそうです。

左側は落ちたらヤバそうなので、一応ロープを出します。1本のロープに中間8の字で3人つながって行きました。ビレイ点は頼りない感じでランナーもほとんど取れません。落ちたら自分の力で止まってって感じです。

ニセ天狗手前

慎重に登って、ニセ天狗の右肩でしばし休憩。

天気は快晴。風なし。気温もちょうどいい。最高です。今シーズン八ヶ岳は6回目ですが、全て好天。世間には優しく迎え入れられない自分を八ヶ岳はいつも優しく迎え入れてくれます。このまま機嫌変えないでね。すぐ前には権現・旭、遠くには春霞の上に白く浮かぶ南アルプスや中央アルプス、御嶽山、乗鞍岳、延々と続く北アルプス、そして富士山。それぞれの地域を司る神のように白く輝いていました。

富士山
権現・旭
中央アルプス・御岳・乗鞍



ニセ天狗を後ろにはついに核心の大天狗、そして小天狗が見えてきました。デカイです。穂高のジャンダルムそっくりです。


と、その前にまた10mほどの草付き。今度はホールドもたくさんあって楽々。



大天狗基部でしばし休憩後、レッツ大天狗!!

先行2パーティーは右側から巻く一般的なルートに取り付いています。我々は予定通り、左端の凹角クラックルートから直登します。Ⅳ級ほどの岩だそうです。一応、もう一つの直登ルートのルートを探してみますが、結局良く分かりませんでした。3級くらいだそうですが、右側は傾斜がきつく何か難しそうでした。

左端の凹角目指して登っていくと、ハーケン3枚+スリングの残置発見。ここがビレイ点のようです。一応、ナッツで補強。



もとき先生が気合を入れてリード開始!

ただ、ビレイ点から岩一つ廻り込んでから核心のクラックがあるので、もとき先生のビューティフルムーブは拝めず。聞こえてくるのは、もとき先生の荒い息遣いと独り言。「あぁ、」とか「おぉ、」とか「怖っ!」とか言っています。氷もがしがし落っこちてきます。だいぶ苦戦しているご様子。ビレイを始めてから3,40分後にようやく上まで抜け、「登って良いよー」との声。とりあえず、核心のクラックの下まで自分とカズさんが上がってから、上からもとき先生のアドバイスを受けながら一人ずつ登りました。

事前の情報収集では、クラックに残置のスリングやカラビナがあるとのことでしたが、見当たりませんでした。中間部にハーケン1枚の残置があり、ナッツでもう一つランナーを取っていました。


もとき先生曰く「フィストジャムを決めて体を持ち上げろ!。最初に登ったカズさんは、どうもジャミングが決まらないらしく、苦戦しつつもリーチを活かして右手ガバを使ってズリズリ上がって行きました。



続いて、自分の番。

今後のためにも手袋したままでもよかったのですが、気温的に手袋なしで問題ないし、氷はもときさんが取り除いてくれているので、素手で登ることにしました。どんなもんかとワクワクしながら取り付くと、割と楽に登れました。フィストジャムなんか生まれてこのかた決めたことがないので使わず、左手ガストンで体を引き付けて、右手ガバをつかみ、左足をちょこちょこ上げて、右足は右壁の小さな窪みに前爪を置く。左足を左壁の薄いエッジに乗せた後に左手ガバをつかめばもうお終い。実質3~4手です。フォローは楽チンです。

すぐ上のビレイ点はハーケン2枚。そのまま大天狗ピークを歩いていきます。


前方には赤岳の主稜線と小天狗、そして赤岳山頂が屹立しています。気持ちー。

赤岳と小天狗
権現・旭

大天狗直登の達成感に包まれながら、懸垂下降点まで歩きます。懸垂は30m弱。残置は、ハーケン3枚ほどとスリングでした。一段下にも懸垂支点がありワイヤーと新しめのスリングがかかってました。





最後は、小天狗。

といっても直登はできないので、左から巻きます。20mほどの草付きを屁こきながらガシガシ登ります。


最後は、登ってきた大天狗や小天狗を振り返りながら一般登山道のある主稜線に上がります。

小天狗と大天狗


固い握手。達成感とともに周囲の山の大きさと威厳に圧倒されました。

赤岳
阿弥陀岳
権現・旭・ツルネ

結構時間がかかってしまったので、赤岳山頂はパス。ツルネまで登山道を進みます。一般の登山道とはいえなかなか侮れません。鎖はほとんど出ていますが、岩は脆く高度感もあるので、慎重に進みます。

その上、トレースがありません。ところどころ膝上まではまるラッセルで、ツルネまで少々時間がかかりました。時々、ゴジラの背中のような天狗尾根を振り返ります。素晴らしい尾根です。

どうにかツルネまで到着。お疲れのカズおじさん、いや、カズおじいさんは、ずっと後ろを歩いておりました。下降ルートのツルネ東稜には、ツルネ班のトレースがあるはず、、と思ったら、何にもないっ!!どうやらツルネまでたどり着けなかったようです。他の人のトレースもないので仕方なくラッセル。ツルネ東稜は明確な尾根のはずでしたが、出だしからルートを見逃し、コンパスで何とか方向を確認しながら下降しました。ところどころ胸まではまる雪の深さで、結構苦戦。途中から赤テープを発見し、もう少し下るとツルネ班のものと思しきトレース発見。カズおじいさんのペースが上がらないので、ツルネ班に心配をかけてはいけないと、とりあえず自分だけ先に下山することに。途中、休憩中のツルネ班と合流し、出合小屋まで無事下山できました。駐車場までの林道上であたりはすっかり暗くなり、ヘッテン点けながらの下山となりました。

夕食は、清里の萌木の村のレストラン「ROCK」。ビールとソーセージの美味いお店です。日焼けて火照った顔でボリューミーなビーフカレーとソーセージ盛り合わせをおいしく頂きました。上機嫌のカズおじさんがおっぱいで「グリップビレイ」とかなんとか言っているので、冷たく流してしまいましたが、プライベートでお疲れなカズおじさんのことだから、優しく乗っかってあげればよかったと後悔しました。

そんなこんなで、残雪期の赤岳天狗尾根は、好天に恵まれ、快適な登攀だったし、宴会は楽しかったしで、良い山行となりました。今度は、天狗尾根から眺めた旭の東稜や権現の東稜を狙いたいと思います。

(組長)

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