Date : 2012/04/14-15
Member : さとこ、かよ
Timeline :14日:美しの森駐車場~出会小屋~取付偵察
15日:出会小屋~取付~ツルネ東稜~出会小屋~美しの森駐車場
世間が桜にそわそわしているころ、八ヶ岳東面の雪山に行ってきました。
初日は あいにくの雨。
美しの森駐車場についても 車から降りたくな~いと だれも腰をあげません。
今日は なだらかな道を数時間歩くだけで 急ぐこともなし、のんびり準備をして出発。
んん??
みなさん、すごい荷物。天狗尾根チームの男性人は20キロ超を背負って、まるで人をおんぶしているみたい。
ツルネチームのさとこさんも華奢な背中に70リットルのザックをしょって、たくましいです。
出会小屋までは、よく舗装された林道をしばらく歩いたら、あとは川俣川に沿って上流を目指すだけ。
シンプルな道のりです。
川沿いの道をしばらく進むと徐々に雪道に変わり、雨もみぞれから雪へと冬景色に様変わり。
道沿いの岩の上部からは大きなつららがぶら下がり、「これが大きくなると氷瀑になるんだよ」とさとこさんが教えてくれます。
雪山4回目のわたしは、これだけでも内心わくわく。
本日の核心は川渡り。
小屋までに何回か横切らなくてはいけません。
ベテランのみなさんは難なく ひょいと超えてしまいましたが、
びびりなわたしは、重い荷物を背負って、バランス崩して、どぼんしたらどうしようと、慎重に慎重に石を伝っていきます。
心配してくれたもときさんが川を超えるまで見守ってくれます。
この川渡りを繰り返していると、ふいに出会小屋が現れました。
プレハブのこじんまりした小屋からはもくもくと煙が出ています。
先行して来ていた別のパーティーがストーブに薪をくべていたようです。
小屋に荷物を置くと、天狗チーム・ツルネチームそれぞれ 明日の道のりの偵察に出発。
わたしたちは、取付までトレースがしっかりついていることを確認したら
すぐに引き返して、休憩。
雪も本格的に降り始め、もう寒い外には出たくな~いと
温かい紅茶をすすりながら、天狗チームの帰りを待ちます。
男性人が戻って来たころ、ご夫婦の別パーティーもやってきました。
これで今夜は3パーティー計9名が一緒に寝泊りすることになり、小屋はいっぱいです。
さて、落ち着いたところで乾杯。
つまみは、火であぶったベーコンとハムにみんな大好き恋話。
いや~、お酒が進みますなぁ。
ひとしきり、盛り上がったあとは さとこさん特製のピリ辛鍋。
寒いときには、あったまる食べ物がうれしいです。
そして、最後にホットワイン。
むむむ。これは、はまっちゃう。
次からはビールとワインが必須ですね。
お腹もいっぱいになり、そろそろ休もうかという頃、招かれざる小さなお客がやってきました。
ちゅん太郎です。
わたしたちのご馳走のかけらを探して、そこらじゅうを走りまわり始めました。
すばしこいやつで、追い払うのは諦め、食べ物の入った袋をザックの中にしっかりしまって、就寝。
けれども、3シーズン用だと思い込んでいたシュラフは夏用だったようで、寒さとちゅん太郎の恐怖にぶるぶる震え、なかなか寝付くことができません。
しんと静まり帰った小屋に、ちょこちょこちょこ、ととととと、という足音が思いのほか響きます。
果敢に袋をあけようとがさがさしているので、床に放っていたゴミ袋も物干し用のひもにぶら下げて、避難させました。
翌朝は、みな天狗尾根を目指して夜明け前に出発。
残されたわたしたちは、のんびり準備をして、7時に出発です。
空は晴れ渡り、山肌が日に照らされて、気持ちいい。
雪には、小さな動物の足跡がいたるところについています。
さあ。ツルネ目指してゴー!
んが、取付きでいきなりの難関。
急な斜面に氷が一部張り付いています。
ここをどうやって超えるのでしょう???
内心、降参~と白旗を上げていると、「ちょっと待っててね。」とさとこさん。
ロープを取り出し、ピッケルを斜面に突き刺しながら、四つん這いになって、登っていきます。
しばらくすると、「登っていいよ~」との声が上から聞こえてきました。
見よう見まねで、さとこさんと同じように、アイゼンの前爪を斜面に蹴りこみ、ピッケルを突き刺してみるものののイメージよりも雪面に食い込まず、からだが安定しません。
「こわいです・・・」思わず漏らすと、「ロープでつないでいるから、落ちやしないって。」とさとこさん。
この冷静な声に背中を押され、なんとか登りきりました。
ここまで来たら、あとは突き進むしかありません。
樹林帯の比較的急な斜面が続きます。
雪はぐさぐさで、しょっちゅうズボリと足が奥まで雪に埋まってしまいます。
両斜面が切れ落ちた尾根やヤセ尾根があると、さとこさんはすかさずロープを出し、わたしは手頃な木にセルフをとります。「なんか、クライミングの練習みたいになっちゃったね~。」とさとこさん。
ありがたいです。ロープがあるだけで、恐怖心もだいぶ和らぎます。
しばらくすると、開けた場所から雪化粧をした権現岳と天狗尾根が現れました。
なんて雄々しい姿。
この景色を見たいがために、無理して、冬装備を揃えたんじゃないの!
ツルネまで登って、八ヶ岳を一望したい。テンションもどんどん上がっていきます。
昼近くになると、日に照らされて解けた雪が木の上からぼたぼたと落ちてきます。
ときおり、ずーん ごごごごごと雪崩の轟音がだれもいない静かな道にこだまします。
ここにも春が確実にやってきているようです。
お昼にツルネで天狗チームと落ち合う予定でしたが、まだまだ道のりは遠そうです。
一方、ゴジラの背中のような天狗尾根からはコールする声が響いてきます。
コンディション悪くて、天狗チームはそのまま引き返しているのかな?
わたしたちも時間切れ。そろそろ引き返さないと、小屋に戻るのも遅くなってしまいそうです。
「もう帰ろっか。」とラッセルをしていたさとこさんも足を止めます。
振り返れば、今まで登ってきた急な斜面がどこまでも続いています。
一歩足を前に踏み出すと、そのまま前のめりになって、転がって落ちていきそうなので、
お尻を雪につけて、ずずずと滑り下りることにしました。
再びヤセ尾根に戻ってくると、ロープを取出し、今度はわたしが先に進みます。
下りは登りよりもずっと怖い。なんとか尾根を越えるも膝は勝手にぶるぶる震えます。
セルフを取り、さとこさんの下山を待つ間、「無事に降りてください。」と祈ることしかできないのが歯がゆい。
けれども、そんな心配をよそに、さとこさんは事もなげにさくさくと歩いてきます。
沢を流れる音が聞こえてきました。
出会小屋まであと少し。
と、最初で最後の難関。氷が張り付いた急斜面まで戻ってきました。
さすがに、ここは尻もちつきながらの下降も無理そうです。
「登って来たときと同じように、後ろ向きになって、アイゼンの前爪で降りるんだよ。」とさとこさん。
ロウアーダウンでじりじりと少しずつ足を後ろに引きながら下降します。
「さとこさんは、どうやって降りるのかしら?」と思っていると、懸垂下降してきました。
エイト環がなくてもできるんですね。
ロープワークの心強さを身に沁みて感じました。
「なんとか、生きて戻ってこれた~。」とほっと一息ついていると、組長が後ろから駆け下りてきました。
天狗尾根チームも思いのほか時間がかかっているようで、無事を知らせるため、先行してきてくれたようです。
暗くなる前に戻るため、小屋にデポしていた荷物をザックに詰め込み、美しの森までの道を急ぎます。
川沿いの道を超え、林道まで来ると、辺りはすっかり暗くなってしまいました。
懐中電灯をつけ、下山連絡をしていると、遠くの方でもときさんとカズさんの灯りが見えてきました。
よかった。
5人無事で駐車場まで戻り、長い長い一日が幕を閉じました。
みなさんお疲れ様でした~。
そして、さとこ隊長、ほんとうにお世話になりました!!
目標地までは辿り着けなかったけれど、楽しい山行でした。
ちゃんと体力と技術を身に着けて、来年またリベンジしなきゃ。
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