Member : ちえ蔵、フジ、組長
Timeline :6日 杉滝岩手前駐車スペース0700~0750七滝沢出合0825~1045七滝1134~1240第2連瀑帯~1425大釜20m~1620三俣BP
7日 三俣BP0715~0953三釜~1029二俣~1230奥の院直下稜線~1234二王子岳山頂1320~1510二王子神社
飯豊の沢は、厳しく、険しく、美しく、
そして、美味しかった。
沢の殿堂、飯豊。
その聖地に初めて訪れた。
今年の沢の一つの目標であった。
今週は、ここ七滝沢と甲斐駒の黄連谷右俣かで、最後の最後まで悩んだが、最後はお天道様に逆らうまいと、より好天が見込まれる飯豊にすることにした。
どうでもいいが、今週は忙しかった。金曜夜も当然早く出られない。そして、飯豊は遠い。とっても遠い。カーナビが朝の5時目的地着と示したときは、逆に開き直った・・・。余計なことは考えまい。飯豊に行けるのだ。
といってもやっぱり遠い。深夜の越後路を3交代シフト制の運転で乗り切る。眠くても、見たことのない地名になんとなく旅の風情を感じる。
朝刊の届く頃、内之倉ダムの最奥、杉滝岩手前の駐車スペースにたどり着いた。
もう朝だ。でも少しはしっかり寝よう。
少しの仮眠で朝を迎える。いや、さっきも朝だった。
気づかぬうちに左右に2台、釣り師の車が止まっていた。
ベテランそうな釣り師に話しかけられる。
「七滝沢?」「あそこは、昔、遡行した時には、とにかく魚がすごかった」「七滝の上では、もう魚臭くて水も飲めなかった」・・・と言う。
魚臭臭くて水も飲めないというほどの魚影の濃さというのはいかほどか・・・。
想像すらつかないが、頂の釣り師、フジ兄のやる気をこれほどまでに高める言葉はなかった。
百戦錬磨のオヤジは、MTBにまたがって、颯爽と内の倉川の林道に消えた。
七滝沢へのアプローチは、まず内之倉川沿いの林道を50分程たどる。林道といっても車が通れるような代物ではなく、刈払いもされていないので、草をかき分け進む。朝露ですっかりびしょびしょになった頃、事前の情報収集で見た大岩の出合いにたどり着いた。
|  | 
| ドクロになったのは岩魚ちゃんだけだった | 
|  | 
| 七滝沢出合 | 
早速、内之倉川の渡渉から始まる。
水量の多い時は、まずはここが核心となるそうだが、今回は平水であって、腰上程の渡渉で困難なく超える。
天気は良く、深い森の中に陽光が差し込む。
「雰囲気が独特だ」とフジ兄が言う。
今までと違う・・・。
そうだ。自分も感じていた。
それは、飯豊の沢、独特のものなのか。憧れの飯豊の沢へ初めて訪れたことによる、気持ちの問題なのか。
少しのゴーロを行くと、早速、泳ぎが入る。
満々と水をたたえる釜と小滝が続く。
2,3メートル程の2段の滝では、フジ兄が楢俣川に行った時にみなかみのセブンで買ったゴーグルを使って、果敢に水流沿いを突破する。
|  | 
| 街にいたら、お巡りさん呼ばれちゃうね。。 | 
|  | 
| 水量は多い | 
巻こうか・・・。
巻きましょう。
小さく右岸を巻いた。
|  | 
| 溺れそうになる・・・。 | 
大岩をボルダリングしながら超えていくと、前方に尾根が迫り、沢が大きく左折することがわかる。その辺が有名な七滝になるだろう。
|  | 
| ボルダー8級 | 
ここらではまだそれほど魚影はない。
次に現れる10m程の滝は、白いしぶきを上げて大迫力。直登は困難なので、左のルンゼから潅木帯、草付きのトラバースで滝上にでる。
高巻きをどう考えるか、とういうことは沢登りにとって、とても重要なことだ。地形から読み取る法則めいたルーファイももちろんあると思うが、経験とカンによるところも大きいような気がする。
岩登りなら、「岩を見る目」で足りるが、沢では岩だけでなく、草付きや潅木もよく見なければならない。あるがままの自然との対話の中で、一番合理的で安全なルートを探す。
信じて行った先には、明瞭な踏み跡があるかも知れない。それはそれでいい。そのルートを見つける作業が楽しいのだ。
この10mを超えると、目の前には雄大な景色が広がっていた。
名勝七滝だ。
七滝沢を知ったのも、ガイドブックに載っていたこの景色に一目惚れしたからだ。多分写真では伝わらない。音を聞き、風を浴び、山の匂いを嗅ぐ。五感に響く七滝は、自分の足で訪れた者にしか味わえない。
|  | 
| 圧巻の七滝 | 
七滝は、5段100mと言われるが、下部から見上げる限り、その全貌は明らかではなく、何段なのかはわからない。ボキャブラリーがなく申し訳ないが、とにかくいっぱい滝が続いてる。
この「5段100m」は直登は難しい。1段目は登れるだろう。2段目以降はよく分からない。登っている記録もない。でもたぶん、有名な滝だから、誰かしら登っている人はいるはずである。登れなくはなさそうだった。
先は長いので、左岸の大高巻きに入る。
左岸の草付きのリッジに取り付く。傾斜がきついので潅木をわし掴みでぐんぐん高度を上げる。滝上に伸びる小尾根に乗ると、踏み跡が現れ始め、4,50分の高巻きで滝上に出られた。下部から明瞭な巻道があるようだが、多分もう少し手前だったのかもしれない。
|  | 
| 七滝上に出る | 
再び大岩の中の流れをしばらく行くと、2段15mの滝。
ここで一本とったついでに、フジ兄が竿を出す。
・・・・と、早速、1尾ライズ!!
小ぶりなヤツだったが、幸先が良い。
|  | 
| 料理モードで撮影・・・笑 | 
そして、第2連瀑帯が現れた。
スカイラインの先まで、延々と滝が連なっている。
7段130メール、らしい。
ここも右岸を大高巻きするパーティーが多いが、登れる滝も多いということなので、なるべく登ってみる。
|  | 
| 7段130m | 
2段目の幅広15メートルは美瀑だ。
登るなら右からか。半分ほど登ってみて、1箇所、イメージが持てなかったため、巻くことにした。
巻きは右岸から潅木を頼りに小さく巻いて滝上へ。
巻きも難しくはないが、簡単でもない。
|  | 
| 2段目の幅広15m | 
|  | 
| 念のため、ロープを張る | 
次の滝は、再び巻き。水流の右側を登れなくはないだろう。
ここは、左岸を巻く。ガイドブックでは右岸巻きとある。事前調べでも左岸から巻く記録は見なかった。でもその場でよく考えて、みつけたルートは左岸だった。事前に調べたルートの確認作業だけになってしまうのは味気ない。他人の遡行図の後追いだけではつまらない。沢登りは、冒険的であるからこそ楽しい。合理的な理由と明確なイメージがあれば、そこに突っ込んでいっく。だからこそ、沢は昂るのだ。
|  | 
| 左岸巻き | 
|  | 
| 巻き終わり | 
ここから先もまだまだ滝場が続く。
|  | 
| 7段130m最上部 | 
|  | 
| 不必要なムーブ | 
とても美しい滝だ。周囲の景観と相まって、神秘的な空間を作っている。足元の穏やかな流れにはイワナが泳ぎまわってる。
あらためて、だが、すごいところにいるなあと3人揃って実感する。
|  | 
| 大釜20m | 
右岸のルンゼから巻く。取り付きは明瞭だが、ルンゼの先の見通しがつかない。まずは慎重にヒモをつけてルンゼを登り、右にある潅木でピッチを切ることにする。
このルンゼが結構悪かった。CSがあるが、コイツがいかにも落ちそうで、ガバなんだけど、全体重をかけるのには勇気がいる。多分、剥がれないのだろうが、剥がれて落ちたら、かなり危険な場所だ。なるべくそいつに体重をかけないように細かいところに足を使って上がった。
浮石の限界荷重。
それを計りながら(測れているのかはわからないが・・・)、なんとなくだましだまし登るという場面が沢とかアルパインでは結構あると思う。
岩との駆け引き。
自分の心との駆け引き。
|  | 
| 右岸ルンゼから登る | 
|  | 
| 落ちそうな岩を超える。残置ピトンがある。 | 
ちえ蔵さんとフジ兄がフォローしてくる。岩が剥がれてフジ兄が落ちたが、先ほどの落ちそうなCS ではないようだ。
つぎのピッチもそのままロープをつけて登る。滝までトラバースし、最後は直上する。難しくはない。
|  | 
| 大釜20m滝上 | 
それほど困難はないゴルジュ帯を抜けると、これまでの絶え間ない滝場から一転、穏やかな河原が続く。
しばしでBPとなる三俣だ。左右から小さな流れが入るところで、右岸に素晴らしい幕営地がある。すでに薪が用意されており、石まで積まれている。目の前には、イワナが行き交う穏やかな流れ。最高だ。本当に最高だ。
|  | 
| BP | 
行ってらっしゃい釣ってらっしゃい。
火はつけとくから。
4投目くらいで早速釣った。
そのあとは、短時間で6尾ほど上げた。垂らせばかかる。
かなり大ぶりのヤツもいた。多くが卵を持っていた。
まだまだ、イワナを使った料理のレパートリーが少なく、とりあえず定番の塩焼きにしていただく。
うまい!!
予想以上にうまかった。
太りに太ったイワナの身は、とても柔らかく、脂がのっていた。骨までしゃぶりついた。山の恵みに感謝せずにはいられない。
食べ終わったあとの脂の乗ったイワナの皮と骨は、次のイワナをよく焼いてくれた。イワナを焼く。なんともシュールだ。
|  | 
| 飯豊の恵み | 
|  | 
| 本当に最高の夜だった | 
|  | 
| 食いしん坊スタイル | 
雨は朝まで降り続いた。それほど強くない。しとしとと長く降った。でも、出発の頃には雨は上がり、青空が顔を出し始めた。
朝イチで釣りに出かけたフジ兄は、すぐ先で早速2尾ほど釣り上げた。
|  | 
| 出発前のBP | 
目の前の屈曲部に美しい6mの斜滝がかかる。左壁をへつり、最後は水流すぐの左のリッジ状を登る。素晴らしい渓相。
|  | 
| 6m斜滝 | 
|  | 
| 最後は楽しいボルダリング | 
さてどうしよう。
泳ぎはそれほど難しくはないだろう。問題は小滝にどう乗り上がるかだ。見た感じホールドは乏しく、フリーで這い上がるのは難しそうだ。
滝の近くに足がつくところがあれば、「手段」がある。
沢では何でもアリだ。突破することが大事なのだ。
とりあえず、フジ兄が偵察で泳ぎ始める。
とにかくまずはやってみることだ。右の壁沿いに立てるスペースがあったのだ。
これなら行ける。
早速、前線のフジ兄に「武器」を調達する。
必殺、バイル投げ・・・
4投目にして、首尾よく岩魚じゃなくて岩がかかった。
最後は腕力頼りに這い上がる。スタンスはないので、腕力だけが頼りだ。ザックを背負って這い上がるのはかなりしんどい。上からの補助がなかったら、上がるのは難しい。
ここを突破したフジ兄、さすが。身体能力が違う。
こういうパワー系のところは、これからはお任せすることにしよう。
|  | 
| まずは偵察 | 
|  | 
| 必殺バイル投げ | 
|  | 
| クラックに引っかかる | 
|  | 
| かっけーぜ、フジ兄!! | 
|  | 
| 後続は楽する | 
|  | 
| 最後はファイト一発的なヤツ | 
そそくさと歩き出す。
小滝が数多い。遡行図にはない小滝も多い。どれもが美しい釜を持つ。難しいところ、危険なところはないが、腕力頼りの一手がある、感じの部分が多く、力のない人は、先にザックだけ上げてもらったほうが良い。
相変わらず魚影は濃い。
やがて、18メートル滝が現れる。
これはとても快適に登れる。最後のパートがよくわからなかったので、ヒモをつけて登り始めたが、行ってみると簡単だったので、ちえ蔵さんとフジ兄には想い想いに登ってもらう。
|  | 
| 18m | 
自然の織り成す芸術に酔いしれる。
まだまだナメや小滝が続く。
簡単でもなく難しくもない小滝。
二俣を右に行くとだいぶ水量が少なくなってくる。
奥の二俣を左に入ると、水が涸れてしまった。その理由はすぐ先でわかる。
水がほとんどない5m滝。
高さはないが少し悪い。Ⅲ+。
すぐ先に、古い取水口。その先には、まだまだ十分な水量。こいつに水を取られていたわけだ。
続く3段12mも侮れない。Ⅲくらいだが、ぬめりがひどく、緊張させられる。さすが飯豊。最後まで気が抜けない。
|  | 
| 3段12m | 
やがて開ける空。
素晴らしい遡行もそろそろ終わりのようだ。
両岸の草をかき分け、息を切らして急登を登り、最後は潅木の藪こぎを10分弱でポンっと登山道に出た。奥の院跡のすぐ右あたりだ。
50mほど先には、二王子岳避難小屋の橙色の丸い屋根と、頂上の青春の鐘が見える。
|  | 
| 登山道にひょっこり顔を出す。先に避難小屋が見える。 | 
|  | 
| 二王子岳頂上 | 
頂上でタクシーを予約し、二王子神社まで下山する。単調だが、よく整備されていて、ハイカーも多い。2時間弱で二王子神社についた。そのままタクシーで内之倉ダムに戻った。
初めての飯豊だった。
七滝沢は飯豊においては入門の沢だ。
率直に言えば、さすがに難しいなあと思った。
技術的にも体力的にも余裕がないわけではないが、手ごわかった。
同じように3級中級の沢として、湯檜曽川本谷と対比されることがあるらしい。
観光的??には湯檜曽川の方が良いだろう。でも沢登りの面白さとしては、七滝沢にかなわない。難しさも七滝沢の方が一歩上。
うまく表現できないが、とにかく「ディープ」だ。山と岩と木と草と、そしてイワナとの関係がとにかく近い。飯豊にあっては比較的よく人が入っている渓だが、ぼくら駆け出し沢ヤにとっては十分冒険的だった。
これで入門・・・笑。
なんてすごいエリアなんだろう。
これからの沢人生で、この飯豊という場所で、どれほど素晴らしい冒険ができるのだろう。
飯豊の沢。
こういうところに、頂という会で行けたことがとても嬉しい。
次はどこに行こうか。
(組長)
 
 






















 
 
