北岳・池山吊尾根

2016-01-11

03_積雪期 j_南アルプス

Date : 2016/01/09-11
Member : ちえ蔵、A子、フジ、組長
Timeline :9日 夜叉神の森ゲート0806~0911鷲ノ住山入口~1007野呂川吊り橋~1105あるき沢橋登山口~1337池山御池小屋~1445BP2330m付近
10日 BP0703~0905ボーコン沢の頭~1015八本歯の頭~1148北岳山頂1220~1400ボーコン沢の頭~1514BP~1602池山御池小屋
11日 池山御池小屋0400~0851夜叉神の森ゲート
Author :組長

新年の登り初めは、池山吊尾根から北岳を目指しました。



今年も山登りの始まり始まり。
新年の目標を胸に厳冬期の北岳を目指します。
ちなみに、全くどうでもいい自分の新年の目標は、「もう少し気が利く」人間になることです。
しかしながら、たぶん無理です。

今年は、記録的な降雪の少なさからどこの山も冬山らしからぬ出で立ちで、純白秀麗なる雪稜が大好物の山ヤにはなんとも不遇なシーズンです。
1月のこの時期に雪があるか心配しなければならない北岳。これがもし温暖化の影響だというのなら、自分のことしか考えていない僕でもさすがに環境問題が他人事ではなくなってきて、ペットボトルのフタくらい面倒くさがらずにしっかり分別しようと思えてきます。

雪はなくてもさすがに厳冬期の北岳だけあって、天気予報では快晴なものの風速26m・・・。稜線いちゃいけない風速です。まあなんとかなるだろう、と、小心者の僕は思わず、、、もしチャンスがあれば登らせてね、無理そうだったらおとなしく帰ります、くらいのテンションで出発しました。

前夜は道の駅しらねで仮眠。朝、夜叉神の森に向かうと夏の週末なみの車の数。その和やかな雰囲気に緊張感が緩むというか、むしろ少々うんざりします。全く雪のない鳳凰三山への登山道に、何に使うのかわからない、たいそうなワカンをぶら下げて、たくさんの人たちがのろのろと歩いていきます。
トイレに並び、ようやく出発。

真っ暗のトンネルを潜り、鷲の住山への少しの登りのあとは一気に野呂川に急下降。紺碧の川面を眺めながら、アスレチックな吊り橋を渡ります。
野呂川吊り橋
 あるき沢橋まで林道をてくてく。いきなり急登の登山口に着きます。池山吊尾根の核心と言われる??池山御池小屋までの急登の始まりです。
個人的には、年末30日からの怒涛の10連勤でほぼ椅子に座ったままだったので、4テンとロープ、雪山装備を背負っての久しぶりの歩荷に多少の不安がありましたが、カラダは自然と山歩きと重荷にアジャストしてくれて楽々池山御池小屋まで登れました。まあ歩荷くらいしか取り柄がないから、良かったです。
フジ兄は、人生の新たな責任と少し増えた体重を背負って少しキツそうでした。ざまーみろ。

雪は途中からちらほらと現れ始め、池山御池小屋はところにより30cmくらいの積雪がありましたが、ほぼ夏道です。
小屋にはすでに先客がおり、小屋内に3つもテントを張っているので、予定通りさらに上を目指します。2330あたりで再び尾根に乗ったところでちょうどいい場所があったので、そこを今宵の宿としました。
2330付近
お馴染みのA子さんの美味いメシ。牛肉とごぼうの混ぜご飯と豚汁です。ビールを持ってこなかったのが2016年最大の後悔となる気がしてやみません。
池山尾根上ではdocomoが入り、早速、天気予報をチェックしますが、天気はともかく風の強さはますますヤバくなっています。ただ、朝夕は暴風予報でしたが、昼前後は多少弱まるとの予報だったので、当然のタクティクスとして風の弱まる時間帯に森林限界にでて、12時に登頂することにして、そこから逆算して日の出の時間に出発、ということになりました。

4時くらいでしょうか。小屋にいたと思われるパーティーが続々と山頂目指してアイゼンをきしませて登っていく音が聞こえました。外はまだゴウゴウと風の音が鳴っています。
予定通り、日の出の時間に出発します。気温はそれほど低くなく、風は止んでいました。ありえないくらいに穏やかな朝です。
出発
 森林限界までにはいくつかテントを張れる場所があり、初日にもう少し頑張れば2日目の行程が楽になりますが、歩荷の距離と無理のない時間配分を考えれば、そこまで上に行く必要はないように感じました。
森林限界へ
 森林限界を超えると背後に富士山の美しいシルエット。たとえ僕がどんなに天邪鬼であろうとも、あの山の唯一無二の存在感と美しさは、素直に認めるしかありません。

左手には間ノ岳と農鳥岳。堂々とした山容に純白の雪化粧を纏い、これまでの黒々とした、ここは夏山か!?と突っ込みたくなる世界とはまるで別世界にいるような感覚になります。やってきました、厳冬期の白峰三山。
農鳥岳と間ノ岳
 稜線に出ても相変わらず風はなく、日差しポカポカののんびり天空闊歩。これでは厳冬期の北岳に行ったことにはならない、そう言うべき??気持ちいいからいいじゃんか。修行をしに山に来ているわけではないのだから。
天空闊歩
 ボーコン沢の頭を越えると眼前に雄大な北岳の姿が・・・。デカイ。さすが北岳です。想像していたよりもデカかった。正面にバットレスの大岩壁をいだき、大きく左右に羽を広げたその山はさすがは南アルプスの盟主。
北岳様

 神々しい北岳を眺めながら引き続き日差しポカポカの稜線闊歩。これ以上の贅沢はありませんでした。今年、このあと良い事残ってるかなと少し心配になります。
途中で朝早くから登ってきた人が下山してきましたが、朝はやはり風がやばかったとのことでした。また、山頂付近はまだ風がやばいとのこと。ただ、稜線の雪煙などもなく見る限り想定の範囲内のコンディション、というか全然余裕のコンディションに見えました。
行くぜ、北岳

池山尾根を振り返る
八本歯の頭付近はちょっとした岩場になっていて、なだらかな稜線の中で良いアクセントになります。
八本歯

 7,8mくらいでしょうか。少し急な岩場があったので、別に無理せずに懸垂下降しました。

テイクオフ

2016年。新色でトータルコーディネイトしたちえ蔵さん。やっぱ綺麗なウェアいい!!
 八本歯のコルを越え、主稜線に向けて左上気味に登って行きます。
主稜線に出るとやはり風は多少強くなります。時折体を持って行かれそうになり、頂上大丈夫かなと一瞬思いましたが、少し山頂に向かって歩いていくと風は落ち着き、再び厳冬期の北岳らしからぬのんびりハイキング。
主稜線

仙丈
 圧倒的な景色。これ以上にない穏やかな天気。ありがとう、ヤマテン笑。

塩見、荒川三山まで見渡せました。
 そして、日本第2の高点へ。
そこはあまりにも素晴らしい場所でした。今年は本当にいい年になるんじゃないかと、極めて単純にそう思いました。


今年もユルめでいきましょう!!笑
 眼下には、辿ってきた池山尾根といつまでも秀麗なる富士の山。2016年、賀正。
正月感ゼロの年末年始で唯一の一人感じる祝賀ムード。

ああ、今年も頑張ろう。なかなかクソッタレなままだけど、少しは善き人になれるように努力はしよう。北岳のように厳しさを持ちながらも大きく寛容な人間になろう。富士山のようにどっしりと構えた落ち着きのある人間になろう。仙丈ヶ岳のように懐の深い優しい人間になろう。甲斐駒のようにヤンチャな遊び心を持った人間になろう・・・。

あぁ、どれも年内はダメな気がしてきた・・・。
池山尾根と富士
 余りにも穏やかな山頂。20分くらいはのんびりしていたでしょうか。なんならコーヒーでも入れてケーキでも食っていてもおかしくない陽気でした。
フジ兄が少し調子が悪いようなので、ゆっくり下山します。しかし、僕が気になっていたのはフジ兄の体調ではなくて、一人のクライマーの姿でした(フジ兄、ウソですよー。いやほんとかも)。
我々が八本歯あたりに差し掛かったときに彼はバットレスの下部岩壁に取り付くべく、急な雪壁をラッセルしながらトラバースしていました。下山時に改めて彼の姿を探すと、4尾根2ピッチ目付近の雪稜を攀じていました。

圧倒的な 大岩壁のその只中に、小さな小さなオレンジ色のヤッケが一歩一歩と高みを目指していました。今、この瞬間、彼よりカッコイイ人間はいない、と、そう思いました。

4尾根は、夏でフラットソールで空身で、という全くの別条件ですが登ったことがあります。ギリギリボーイズだとか山野井さんだとか、雲の上のようなアルパインクライマーのたくさんの記録を読んできましたが、全く別次元の僕のようなレベルでは想像の範囲内のクライミングではなく現実感がありませんでした。
しかし、目の前のそのクライマーが掴んでいるであろうホールド、細かいスラビーなスタンス、大樺沢に奈落のごとく落ち込む圧倒的な高度感は想像ができます。イメージができます。そこには手に汗握る圧倒的なリアリティがあり、現実的な目標がありました。

彼は、ノーロープのフリーソロでした。あ、それ俺(ヾノ・∀・`)ムリムリ。
中間部の短い雪のパートを攀じるクライマー

下降でロープを使った場所も登りは楽チンです。フジ兄の体調を心配するふりをしながら、周囲の景色を楽しみながら穏やかな稜線をブラブラと降りていきます。
登りは簡単

視界にはいつも富士山

2016年、いいことあるかもね
 2日目は、より快適な池山御池小屋付近にテントを張り直しました。
星の綺麗な夜でした。
池山御池小屋付近は素敵な場所。ここにきて、ああここに小屋建てよ、と思った小屋の主の気持ちが自然としっくりきました。
3日目は、少し事情があり、まだ暗い4時出発。ヘッデンつけて、池山尾根を急下降します。雪がなくて暗いため時折登山道をロストしますが、よくよく探せば赤テープがたくさんあるので特に問題ありませんでした。
9時前に夜叉神の駐車場に到着。あまりにも早すぎてお目当ての温泉は営業時間前でしたが、渋滞なしのストレスフリーの中央道は快適でした。まあ、ウトウトしていただけだけど・・・。フジ兄、さーせん。

そんなこんなで、厳しさゼロの厳冬期北岳。山はやっぱ楽しくなくちゃね、と思うと同時に、ヒリヒリとした緊張感のある登攀への憧れが綯交ぜになった、そんな素敵な山行でございました。

A子さん、いつもご飯ありがとうございます。
ちえ蔵さん、いつもわがままやらせてくれてありがとうございます。
フジ兄、熱っぽいからってあげた僕のポカリの粉末代、300円なんでよろしくです。

本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

(組長)

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