峰の松目沢・ジョウゴ沢

2018-01-20

03_積雪期 08_アルパインクライミング i_八ヶ岳

Date : 2018/1/13-14
Member : 組長、あーさ
Timeline :13日 八ヶ岳山荘~赤岳山荘~峰の松目沢入渓1019~1151F8~1410稜線登山道~1620赤岩の頭~赤岳鉱泉
14日 赤岳鉱泉~0935乙女の滝~0945大滝1103~1219硫黄岳頂上~赤岳鉱泉~赤岳山荘~八ヶ岳山荘
Author :組長

冬の沢登り

最近は、1年を通じて渓に入っています。
山には尾根の数だけ渓があります。渓の方が多い??どっちかよく分かりませんが、夏もそうであるように、尾根だけでは山の魅力の半分しか味わっていないのではないかと最近常々思います
。とりわけ冬の渓の美しさは、まだまだ経験の浅い僕らにとっては格別に感じます。
 
今年も例年通り、八ヶ岳通いが続いています。
今週は、赤岳山荘までの林道はチェーン規制が入り、チェーンは携帯していますが巻くのが面倒くさいので歩きです。下に止めれば半額だし、コーヒー1杯無料、慣れないチェーン履き作業をしている間に赤岳山荘までついてしまいそうなので、プラマイゼロとしておきます。
赤岳山荘には、チェーンを履いていない車も入っていきましたが、毎日仕事として山に入っている人たちが作ったルールを、週末だけ遊びで山に入って遊ばせてもらっている我々が守らないのは、少しどーかと思います。山はそこにあるだけですが、フィールドは必ず誰かによって守られていることを忘れてはいけないように思います。
もっと下衆な思いとしては、狭い登山界、八ヶ岳でルール違反をして後ろ指さされるようになったら、関東のウインタークライマーとして干されます・・・。
 
気温がとても低く、いつもは大汗かいてしまうアプローチもいい感じに汗ばむ程度で快適です。
赤岳山荘から1時間程度でしょうか、堰堤広場から3番目の橋を渡った右岸を少し降りて行き、小沢をひとつ越えた次の沢が峰の松目沢です。
 
広い沢床を少し遡行していくと白く光り輝く樹林と鋭角に切り取られた青空の先にナメの蒼氷が姿を現しました。
 
取り付きには今日1番乗りパーティーのデポがありました。
F1は左側が少し傾斜がありますが、あえて攻める必要がないので、右側のナメをノーロープで越えます。
F1

冬の渓の美しさ・・・

後続がやってきました
 F1を越えるとすぐになかなか見栄えのするF2。8mくらいでしょうか。ここは少し弱点を突きながらも正面を直登します。全荷登攀のため少し登りづらいですが、Ⅲ+程度で問題ありません。
峰の松目沢は普段は日当たがよく、標高が低い関係もあって、氷が緩むことが多いそうですが、今日は逆に氷が非常に硬く、適当にスイングするとアックスが少し弾かれる感じがして、少し難易度が上がっているようです。鉱泉ブログによれば、本日は鉱泉の朝の気温が-22°Cだったようです。
F2
 F2を超えると背後に阿弥陀岳が見渡せます。高曇りですが山自体が発光しているかのように輝いて見えます。朝の早い登山者が早くも御小屋尾根を下降しているのが見えました。
 F2の先は易しめのナメ滝が次から次へと現れます。次はどんな滝が出てくるか、どんな景色が待っているか、ワクワクしながら遡行していくのは、沢登りならではの楽しさです。
風はなく、静かです。自分たちの息遣いとピックが氷に刺さる音、アイゼンの軋む音だけが凍てつく空気に漂っていました。

最近は、稜線まで詰めるよりも核心のF8までで沢を下降するパーティーの方が多いようです。下降は概ね潅木が使えます。一部のナメ滝で残置されたアバラコフにスリングがぶら下がってました。


時折青空が見えました

背後に赤岳、阿弥陀岳

Fいくつ?かわかりませんが大した問題ではありません


 核心のF8手前の滝は立っていて面白そうですが、少し脆そうな感じがしたので、左から小さく巻きます。
その先には、少し開けた渓に青白い氷の伽藍が広がっていました。
ここが核心のF8です。10mほどですが、ほぼ90度。左の下まで完全につながっていない氷柱は難しそうなので右側を登ることに決めたのですが、半分より上は少しかぶり気味にさえ感じます。
F8
 よくオブザべをし、ラインとスクリューのポイントを決めて、登り始めますが、中間からはものすごく傾斜を感じます。その上、クライマーにあまり叩かれていないピュアな氷は、フッキングで誤魔化せる部分も少なく、安定したスタンスも少ない上、氷がかなり硬めなので、非常に難しく感じます。僕ら初心者にとっては必死のクライミングでした。腕パンパンです・・・。
すぐ上には短いバーチカルのF9があり、通常継続して登る人が多いようですが、そもそも軽量化のためにスクリューの数を少なくしていたのと、F8でビビりまくって、打ちまくったので、あと1本しかスクリューがありません。滝上には潅木があると予習はしていたのですが、念には念を入れてスクリュー1本くらいは残しておきたいので、ここは右から巻くことにしました。ちなみに、F8上は、ロックピトンかスクリュー以外にビレイ点は作れなさそうです。

ザック荷揚げをして、あーさがセカンドで登ってきますが、セカンドでも結構苦労したようで、なかなか登ってこず、さすがに冷えました。
核心のF8。先日の湯川白髭右岸の一番難しいラインよりも難しく感じた。アイスのグレードってのはよくわかりませんが、短くてもⅤはあるんじゃないのかなぁ。ていうかこれでⅣ+はやめてほしい・・・

後から見ると恥ずかしいくらいの間隔で??笑、スクリュー決めてる。。。へたくそだから勘弁してー
 恥ずかしながら必死のF8クライミングのあと、稜線に向かいます。いくつかのナメ滝を越え、雪の急斜面を息を切らして登っていくと、峰の松目と赤岩の頭の鞍部に出ます。一応一般道で赤布がありました。
やはり沢登りとしては、渓を最後まで詰め、稜線や頂上に抜けるのが気持ちがいいものです。
上部ナメ滝

 稜線は一般登山道といってもほとんど訪れる人もいないので、立派なトレースは期待していませんでしたが、かろうじて2人分くらいのツボ足の踏み跡が続いていました。前日の降雪で時折膝くらいまで埋まります。ペースの上がらないあーさに合わせ、のんびり赤岩の頭を目指します。樹林が開けると一投足で赤岩の頭です。天気は少し悪くなり、真っ白で展望がありませんでした。気温も非常に低く、寒さに強いニコンのデジカメがここでご臨終となりました。

スター級の山岳ガイドだらけの暖かい天国のような赤岳鉱泉でくつろいでいると、思いがけない人に出会いました。
さとこさんです!
旦那さんとちっちゃい息子くんとハイキングにきたそうです。ハイキングといっても息子くんは旦那さんに担がれてきて、もう歩きたくないとのことで、明日は中山展望台あたりかぁなんて、相変わらずほのぼのとした会話を楽しみます。あぁ、さとこさんもママになってしまわれたんですね。。。いつぞやの、東北の渓の記憶が蘇りました・・・。

思えば、山を通じ、いろんな人と出会って、いろんな経験をさせてもらってきました。いろいろな趣味を持って視野を広げることにも憧れるし素晴らしいと思いますが、一つのことに筋金が入るくらいに取り組むというのも、良いことだと思います。入口は一つでも先は無限大に広がっていて、そこにはどんな世界でも通じる普遍的な真理??みたいなものがあると感じることも多々あります。
そもそも、やり方はどうあれ僕にはこのようなアプローチが性にあっているのかもしれません。
まあ社交性という苦手分野から逃げているだけの感はありますが・・・。

そんな嬉しい出会いもあった翌日は、定番のジョウゴ沢から硫黄岳登頂を目指します。
高速道路化した沢筋を進み、昨年3月の時とは3mくらい高さが違うんじゃないかと思えるF2を越えて、八ヶ岳西面で最も好きな景色の広がる渓に入っていきます。
F2の高さもそうですが、冬の渓は、時期によって氷瀑は形状をかえ、雪の付き方で趣も一変します。同じ渓に何度も入るのは、未知性という登山にとって最も大事な要素を失う気がするので、あまり気が向きませんが、こうやって違う顔を見せてくれるとまた別です。
青と白
 あわよくば、乙女の滝のクライミングも狙っていましたが、かなりかぶった形状をしているのと、氷がかなり硬いので、欲張りはせずに予定通り本流を詰めます。
乙女の滝。冷厳だが優雅。

まだまだ何でもないところの氷の露出が多い
 ゴルジュを抜けて陽のあたるところまで来ると、ため息の出るような美しい景色が広がっていました。
後ろは阿弥陀岳。
 本谷大滝は1パーティーとりついていましたが、我々が到着する頃にはフォローもほとんど上部に抜けました。
昨年3月とは違い、左側が大きくハングしていているので、ここは定石通り右側の凹角を攻めます。
こちらは昨日とは違って予想通り順調にロープを伸ばせましたが、やはり氷が非常に硬く、弾かれたり割れたりします。
悪態つきながらテンション気味で登っている先行Pのフォロー

異空間

ボブ・マーリーばりのドレッドが垂れ下がる左側

青空を目指します
 大滝を越えると、眼前いっぱいに青と白の世界。
硫黄岳の山頂方向に伸びているトレースをありがたく使って歩を進めます。次第に息が上がりますが、振り返って景色を眺めれば、すべてが吹き飛びます。



 1/3くらい進んだところで、何故かトレースが消滅します・・・。ラッセルに嫌気がさしてここから下降したのかどうかわかりませんが、仕方がないので、ここからは自分たちで道を拓きます。最初からラッセルするよりも途中からの方がキツい気がするのは気持ちの持ちようでしょうか。
雪の下はハイマツとなっているので、膝までズボズボはまり、消耗します。後続の滋賀から来た2人組は、後方50m下に追いついてきましたが、そこからなかなか追いついてこず、結局稜線まで一人でラッセルしていきました。若い兄ちゃんなんだから少しくらいは意地見せろ、と思いましたが、稜線でラッセルに感謝する兄ちゃんは疲労困憊でした。単純にきつくて追いつけなかっただけのようです。。。

頂上より赤岩の頭よりの登山道に出てから1分ほどで頂上へ。
頂上からは360度の大パノラマが広がっていました。日本海くらいまで見渡せました。
硫黄岳って結構標高高いね!

北アルプスの最北端まで見えた


やっぱり最後に頂上を踏むというのは気持ちがいいものです。フリークライミングは頂上までの手段自体を楽しむものですが、頂上や稜線に抜けるということに少しこだわりがあるのは、根が山ヤということでしょうか。

下山後は、サービスタイムでモミって、最近定番になりつつあるハルピンで唐揚げにがっついて、帰りました。
冬の渓の美しさを感じながらいろいろと、もの想う山行でした。

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