Date : 2012/12/28
Member : ちえ蔵、組長
Timeline :「舟山十字路」0629~0717「旭小屋」~0732「南稜上」~0924「立場岳頂上」~0946「青ナギ」~1048「無名峰」~1058「P1」~1113「P2」~1148「P3」1214~1346「P3ルンゼ終了」~1410「P4」~1432「阿弥陀岳頂上」~1522「行者小屋」~1711「美濃戸山荘」~1810「美濃戸口」


世間様は仕事納めのこの日。誰もいない阿弥陀岳南稜で登り納めをしてきました。
今回の山行は28~30日までの休みを利用して、阿弥陀南稜から赤、そして硫黄までの継続縦走を企画していました。しかし、信頼度抜群のヤマテン予報や各種天気情報を総合すると、大陸からの移動性高気圧に覆われる28日朝までは天気が良く、28日昼ごろから、高気圧の次に来る南岸低気圧の影響で次第に下り坂、28日夕方から29日朝までまとまった雪になるらしい。阿弥陀南稜一本に絞るとすると、27日前夜発で28日日帰りもしくは行者テント泊、又は、29日出発か。29日出発にするとまとまった降雪後のラッセルに時間がかかりそうだし、何しろP3ルンゼなどの雪崩が怖い。だとすると、最近はまとまった降雪はなくおそらくトレースもバッチリな28日中にささっと阿弥陀を越えて、時間・天気次第で御小屋尾根下降又は行者経由で南沢下山、時間がなければ行者でテント泊にしようと決め、急遽レンタカーを予約。
最近は毎週のように同じ格安レンタカー屋を利用していることから、レンタカー屋のおやじとすっかり顔馴染みとなり、「兄ちゃんまた山かー、(ザックのバイルを見て)これで背中でも掻くんかー、ガハハハー」としょーもない会話を交わしてから、都内でちえ蔵さんをピックアップし、ガラガラの中央道と途中の甲州街道を順調に走り、道の駅小渕沢で車中泊。一杯呷ってから気持ちよく就寝しました。

翌日。
朝方は結構冷え込みました。今日は行程が長いし、天気が崩れる前に阿弥陀を越えたいのでなるべく早く出発しようと思いましたが、オプションのナビをケチったためか、、、少し道に迷い、20分ロス。ようやく舟山十字路に到着して、ヘッドランプを点けて出発します。準備中にもう1台車が来ましたが、他の車はありません。彼らは、広河原沢左俣に行くそうです。
暗いよー

旭小屋までは、しばらく平坦な林道歩き。ところどころ凍っていますが、雪は少ない。気温もかなり高めです。プラスはないでしょうが、たぶん-5℃くらい。暑いです。空は薄く雲が広がり白っぽいですが、風もほとんどなくとても静かな朝です。途中、小さな水流を2か所ほど飛び石伝いに渡りますが、石が凍ってツルツルなのでこけそうになる。ていうか、ちえ蔵さんがこける。出発15分でインナー手袋を濡らして予備手袋・・・。
滑るよー

震度3くらいであえなく潰れそうなつっかえ棒だらけの旭小屋から左手に伸びる踏み跡をたどります。昨年、南稜に行ったもときさん達は、南稜上に行く登り口を間違ったらしいですが、踏み跡は明瞭なので迷いようがないような・・・。

ボロボロだよー

岩にもわずかなペンキマーク。南稜上に向かう急登を15分ほどで道標のある南稜上に立ちます。ここからは立場岳まで標高差570メートルの登り一本調子。体力に問題がある人はここが核心!?出発の前の日は徹夜で人助けのお仕事をしてきたちえ蔵さん。ご苦労様です。昨日も4~5時間しか睡眠時間はなかったので、なかなかペースが上がりません。ガンバガンバ!!
ずっと登り・・

雪はあまりありません。しかし、最近降雪がないせいか、トレースがカッチカチに氷結しており、かなり登りづらい。標高2000メートル付近で仕方なくアイゼンを付けました。それにしても、こんなところでこんなにカッチカチ。核心と言われるP3ルンゼは結構悪いんじゃないかと、少し心配になりました。今日の気温は高いですが、昨日は東京でも12月としては記録的な冷え込みとかいっていたような・・・。
立場岳頂上

標高表示が間違いまくっている立場岳山頂の道標を越え、スタコラ先に進みます。トレースはしっかりありますが、今日はだれもいません。平日ということはもちろんありますが、結局、この日は南稜に入っていたのは我々だけのようでした。人気の阿弥陀南稜を終日貸切なんて、贅沢です。
立場岳を越えると次第に木々の間から阿弥陀岳の荒々しい岩峰が見えてきます。墨絵のような白黒の景色。青空に映える白い峰もかっこいいですが、白と黒だけの峰もとてもかっこいい。
阿弥陀岳奥壁に至るいくつかの沢筋には綺麗な氷柱が垂れ下がっていました。その美しい氷柱を越え、荒々しい阿弥陀奥壁の壁を華麗なムーブでよどみなくなく登っていく。山バカは、そういう理想のクライマー像というものを常日頃考えています。山や岩の美しさはもちろんですが、その白と黒の険しい世界に綺麗なウェアを着たクライマーが華麗に登って行くという姿に、何より魅かれるのです。

なだらかな尾根上を進むと、右側に開けた雪面のある青ナギに到着。ここからの阿弥陀の景色は圧巻でした。右を見れば旭・権現・ギボシ・編笠。さらに、南アルプス、中央アルプス、北アルプス。そして日本海まで見えます。高く薄い雲はありますが、見通しはとてもいいです。晴天域に入っていると思われる北アルプスの峰々は一際白く光っていました。
青ナギ

待ってろ、阿弥陀ー

旭・権現・ギボシ

青ナギから先、無名峰ピークまではかなりの急登になります。降雪直後のラッセルはかなりこたえそうです。休憩ついでに無名峰手前でガチャを付けました。
無名峰ピークまでの急登

無名峰ピークからの景色もとても素晴らしい。赤岳もますます迫ってきます。文三郎を登る登山者の姿も見えます。赤岳の右に伸びる荒々しい岩峰群は今年の春に行った天狗尾根。かっこいい。
赤岳
 
ここまでくると、天気予報通りに西から天気は下り坂のようで、中央アルプスの方から次第に雲がかかり始めました。風も南西から吹き込んできます。しかし、まだまだ眺望は抜群。特にP1は露出感もあって最高の気分でした。I can fly!!
P1登り。後ろは権現・編笠。そして南アルプス。

P1
稜上1泊の当初の計画では、P1~P2のコルで幕営する予定でした。幕営跡らしいのが一つありましたが、あまり快適そうな場所はぱっと見ではありませんでした。ていうか樹林のないこの辺は、風は大丈夫なんでしょうか・・。
少し行くと、少し大きな岩が出てきます。P2です。左の草付きから簡単に回り込み稜上へ。
P2
行くでーー
P2は左の草付きから

P2の上
目の前には一際大きな岩峰が迫ります。P3です。


P3

いつの間にか南アルプスは雲の中。。
南稜の核心はP3ルンゼということだそう。P3は直登もできるそうです。基部からルートを探してみましたが、2か所ほど登れそうなルンゼ状の部分がありました。最初少しだけ傾斜がありますが、おそらくⅢ級程度でそれほど難しくなさそうです。P3ルンゼが渋滞していたら、直登してしまった方がいいかもしれません。
でも今日はセオリー通りP3ルンゼへ。P3基部を左にトラバースして行き、少し下ったところに取り付きのワイヤーがかかっていました。ルンゼを見上げると・・・予想通りのカッチカチ・・・。
早速ロープを着け、取りかかります。最初の2mは傾斜が少しきついですが、ガバホールドがあるのでそんなに難しくないです。20mくらいはカッチカチ。ダブルアックスで進みますが、氷が固くうまいことピックが刺さりません。雪がついていれば結構簡単だそうですが、今日のコンディションはかなり悪いのかもしれません。・・・といっても写真撮ったりして遊んでましたが・・・。
最初の2mを上がったところ
カッチカチやぞー
なんちゃってアイスを楽しむ

右手のリングボルト

15mほどで右手に錆びたリングボルトがあり、さらに15mで岩の上に新しめのリングボルト。さらに進んで、右手の草付きを上がり、50mいっぱいロープを伸ばして灌木でビレイすることにしました。

今回は初めてちえ蔵さんとロープを使うバリエーションに行くということで事前に広沢寺でロープワークの確認をしてきました。コールありの場合、コールなしだが姿が見える場合、コールなしで姿が見えない場合。それぞれ約束事を決めておきました。おそらく3つ目の場合になるだろうと思っていましたが、風のない今日はコールがよく聞こえるのでいつも通り「解除」とか何とか言ってやりました。気温も高いのでビレイ中も全く寒くありません。アイスの部分でビビっているちえ蔵さんにウケながら写真を撮りまくって遊びます。
1P目のビレイ点から。ちえ蔵さん登攀開始

傾斜は50~60度くらいかなぁ



せっかくリード&フォローの練習を事前にしたんだから、つるべで行ってもらおうと思い、2P目のリードをちえ蔵さんにお願いしましたが、1P目で相当参ってしまったらしく、組長どーぞどーぞということで2P目も自分がリード。50m伸ばせば稜上のピナクルにたどり着くと考え、灌木帯を直上後、左に少しトラバースして50mいっぱいで岩角でビレイ点を作りました。このピッチは灌木が疎らにある雪の多い急斜面なのでとにかくズボズボはまる。安全なラインですが、楽しい登攀とはいえませんでした。もっと左の岩を登った方が楽しかったかもしれません。
2P目の灌木帯

2P目ビレイ点から
少し遊び過ぎて、P3ルンゼの通過にかなり時間がかかってしまいました。
ここからは頂上まであと少し。コンテで進みます。天気はますます悪くなり、周りの景色はすっかり見えなくなってきました。
時折、肩がらみ等をまじえながら、P4を左からトラバース。P4トラバースは少々スタンスが狭く、落ちたらヤバいところですが、特に難しくはありません。

頂上直下の最後の簡単な岩場を越え、誰もいない頂上へ。かなりバテ気味のちえ蔵さんを最後はロープで1本釣り(笑)。
阿弥陀頂上からの展望はゼロ・・・。でもなんか充実感で満たされているので大して気になりません。景色は朝から良く見れましたし。笑顔でがっちり握手。
300円の三脚で・・・
風雪がだいぶ強くなってきました。この時点で14時半。舟山十字路に帰るには御小屋尾根を下降するのが一番ですが、途中で日没を迎えるのが目に見えています。御小屋尾根は特に問題ないルートだとは思いますが、下部で間違った方向に下りてしまう人も時々いるようですし、この尾根は夏も行ったことがないので、少し不安。そこで、無難に、暗くなっても安心して下山できる行者から南沢を下山することにしました。テントもあるから行者で1泊してもいいですが、明日まで大雪になるし軽量化重視の今回のザックには酒がない・・・。何より、このまま雪が降り続けると明日舟山十字路から車が脱出できるのかどうか心配です。
阿弥陀からの急坂を下ってるとますます風雪は強まり、粒の大きな湿った雪がバチバチ顔に当たって痛い。。中岳稜線には雪煙が舞っています。それにしても人っ子一人見当たらない。中岳沢に入ると強い風も避けられるので、シリセードも交えながら安心して下降。1月に予定している阿弥陀北稜の取り付きもしっかり確認してから、無事、行者小屋までたどり着きました。
顔が痛いよー

中岳沢下降中
 行者小屋はちょうど明日29日から年末年始の営業を始めるそうです。小屋番の方がベンチを出したり小屋前の雪を取り除いたりして準備に追われていました。行者には4つほどテントがありました。
どうも御苦労様です

あとは、南沢を帰るだけ。最初は快適に歩いていましたが、途中からかなり凍っていて、アイゼンを外していたのでとにかくコケまくる。仕方なく途中でまたアイゼンを着けました。美濃戸山荘に着いた頃にはもうすっかり真っ暗に。美濃戸山荘でタクシーの予約をしていただき、ヘッドランプに照らされる、しんしんと降り続ける雪を見ながら、美濃戸口までのかったるい林道を下山。ここがまたカッチカチ。美濃戸山荘でまたアイゼンを外してしまっていたので、またコケまくる。バカだねー俺ら。
トリプルアクセルを3回は決めてしまいました。ちえ蔵さんは数え切れないほど転び、「私何やってんだろ」とブルーな感じになっていました笑。
美濃戸山荘の灯
美濃戸口で予約していたタクシーに乗ります。雪がヤバいのでチェーンをつけます、と運ちゃん。下りの途中で車が一台スリップして立ち往生していました。
雪山に来るならチェーンは必携ですよ、とジモッティーぶりを発揮する運ちゃん。私は慣れているからワンタッチチェーンなら1,2分で着けられるよ、と運ちゃん。舟山十字路までの悪い道をガンガン飛ばす。そしたら、突然、タイヤがガランガランいいだして、明らかにチェーン外れそうな感じ。しばらくそのままの状態で走っていたら、突然、音がしなくなる。でも何事もなかったように進む運ちゃん。今、チェーン捨てて行きましたよね笑。あれだけ、雪道には慣れてるぜっていう話をした後のコレだったから、何となく車内に広がる微妙な雰囲気に面白くて吹き出しそうになる。
まあそんなこともありながら、舟山十字路に帰還。暗いうちに出発して暗くなってから帰ってくる長い1日がようやく終わりました。・・・といいたいところですが、降り積もった雪道をどうにか帰らなくてはいけません。時折ズルズルいきながら、無事に温泉に到着。先々週も行った樅の湯。今日は17時以降なので、300円。ヘッデン下山万歳。。
帰りの中央道も一宮御坂で一度下りるところまでずっと雪道でした。やっぱり今日中に帰ってきて正解でした。

今シーズン初の雪山バリエーション。といっても入門レベルの阿弥陀南稜だし、実際に登ってみての感想としては、技術的にも体力的にもかなり余裕のあるルートでした。ただ、他の人の記録等と比べると、やはり今回のP3ルンゼの状態はかなり悪い部類なんだと思います。まあとにかく、入門レベルどうこうよりも、素晴らしい展望の中、急登を息を切らせて登ったり、岩をトラバースしたり、ルンゼを登攀したり、と、登山としてとても面白いコースだと思います。人気があるだけのことはあります。その人気ルートを今回は貸切だったので、大満足でした。
また、今回は、ちえ蔵さんの調子があまり上がらず、結局、行動時間が11時間ちょっとかかってしまいましたが、ひどいラッセルや渋滞待ちがない限り、阿弥陀南稜は日帰りで十分な行程のような気がします。
自画自賛ですが、今回はプランニングもバッチリでした。もっとも、28日夕方からの大雪を想定して始めから日帰りを考えていたのなら、そもそもテントも持っていかなくても良かったかもしれませんが。。
八ヶ岳にはやりたい課題、やらなければいけない課題がいっぱいあります。今シーズンもまだまだたくさんお世話になりそうです。頭に描く理想のクライマーを目指して・・・。

そして、ちえ蔵さん。長い一日、お疲れ様でした。

そしてそして、今年ももうおしまい。今年は、沢・岩・雪山と会の方には本当にお世話になりました。おかげ様でいくつか成果も出ましたし、何より楽しい山ライフを過ごすことができました。来年も是非宜しくお願い致します。

・・・って、これが頂ブログ2012のシメ???勝手にシメちゃいました。すいません。

(組長)
 
 
 

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