大行沢

2016-07-17

06_沢登り b_東北

Date : 2016/7/16-17
Member :あーさ、組長
Timeline :16日:二口キャンプ場P1120~1309下部ゴルジュ終了点左岸小屋~1650岩床沢BP
17日:BP1009~1140樋ノ沢出合遡行終了点
Author :組長



ゴルジャーへの道。


今、沢ヤの世界で、いや山岳ノンフィクションの世界全般で大注目を浴びている本の中では、ゴルジュに魂を込める者のことをゴルジャーと称している。エスケープ不可能なぶったった側壁、全てを飲み込む白龍と化した激流、わずかに差し込んだ陽光にしか刹那の安らぎを感じられないような冷厳な世界。そこに踏み込んでいくゴルジャーたちの背中に畏敬の念を抱くのは、もはや少し世間ずれした沢ヤか冒険者精神を尊重してやまないイギリス国民くらいだ。かの国ではナイトの称号が与えられてもおかしくないゴルジャーたちに羨望の眼差しを向けるボクの方ももはや少し世間ずれしている感は否めない。同質性を求め冒険者を煙たがり都合のいいときだけ自己責任を唱える社会では何かと迷惑者がられる存在なのかもしれないが、今の山岳界の中で最も実力があって先鋭的な冒険を行っているのはゴルジャーと呼ばれるクライマーたちであることは間違いない。
 まあそんなこんなで、ゴルジュかっこいいなーでも怖いなー、怪我したらやだなーってな具合で、魂の込めきれないボクのような貧弱沢ヤにとって、大行沢の下部ゴルジュくらいがまずはちょうどいい。。
 もともとは虎毛山塊の沢旅予定だったが、天気がやはり宜しくないので、郡山あたりで転進決定。当日計画変更でも、地形図、遡行図、全てを揃えている用意周到さ。この集中力を仕事とか他のことで活かせたらもう少し僕はマシな人間になっていることだろう。とても残念なことだ。。。
ゴルジュは、駐車場の橋の下を流れる穏やかなナメをほんの少し逍遥するとすぐに出現する。
側壁はぶったってるわけではないが、すり鉢状で手がかりのないツルツルの壁でエスケープは不可能。その地形としてのシンプルさというか純度の高さに思わず見とれてしまう。飛沫を浴びて濡れた側壁はなんとも艶かしい。美しく、なんともいえないエロさを感じた。
フリクションの限界点を感じながらの微妙なへつりが始まる。一歩一歩、いや、ひと呼吸ひと呼吸にも神経を使う。
いかにも滑りそうな側壁だが、意外とフリクションはいい。わずかながらに凹んだ部分に丁寧に足を置いていき、全く掴むところがないツルツルの側壁をなんとなく撫でながら進んでく。



 ただ、高さもなく、足元の流れも激流というわけではないので、プレッシャーはそれほどでない。落ちても流されてふりだしに戻るだけだ。また、かなり悪そうと感じる部分には絶妙な位置にピトンが打ってあり、それにスリングをかけてA0することもできる。

結局、ドボンせずに微妙なバランスでへつりに成功したが、それなりに難しい。


 
ゴルジュの出口にある3m滝は、深い釜とツルツルの側壁を從え、かなり悪相の滝となって立ちふさがる。突破不可能ではないが、おそらく人工混じりの厳しい登りになるように思われた。
左岸の側壁には、明らかに岩を穿って作られたスタンスが樹林帯まで続いている。ここに来て初めて高さの出る登りになるので、少し緊張する。側壁を登りきると20m先に登山道にテープが見えた。
そのまま沢に復帰し、しばらく行くと左岸に青い屋根の作業小屋。ここでひとまずゴルジュは終わりと思いきや、少しばかり悪いパートが出てくる。
その先には、アートのような側壁を従えた大滝が出現する。右岸、左岸ともに大きくハングした岩に周囲を囲まれ、荘厳な雰囲気が漂う場所だ。左壁が登れそうだったが、かなり水流を浴びる上にもしスリップしたら瀑水に飲み込まれるリスクがあったので、素直に左岸を巻くことにした。左岸にはすぐ登山道があり、この滝は登山道からも眺めることが出来る。
その滝はしばらく平凡なゴーロが続く、しかもなんとも長い。大行沢の陽のイメージはむしろこの薄暗いゴーロの陰のイメージによってこそ際立っているのではないかと思えてくるほど、退屈で晴れない渓相が延々と続く。
途中、はしご滝という観光名所にも立ち寄って気分を晴らした。

そろそろ幕としたいと考え始めたところで、2段の滝が現れ、下段を左から、上段を右から丁寧に登り、しばらく進んだ先の左岸に比較的良い物件があった。少し沢床に近く、雨も降っていたため少し不安はあるが、ほかにいい場所はなさそうだ。
濡れた薪に火を点け、一番搾り仙台づくりを飲んで大いに東北気分に浸った。あたりは薄暗くはあるが、淡く控えめで静かなブナの森が広がっていた。
翌日は、天国を歩く。
天国と言われる渓はなんか結構あるように思う。天国安売りの感は否めないが、大行沢のナメはなるほど確かに素晴らしい。
天国というよりも精霊が出てきそうな淡く綺麗な渓であった。そして低い両岸には紫陽花が満開であった。


カケス沢を過ぎたあたりで釣り師のおじさん三匹と出会う。
樋の沢出合でなかなか型のよいイワナを釣り上げていた。今回は釣り気満々ではあったが、魚影をほとんど見なかったこともあって竿を出さなかったが、やはりそれなりにいるようだ。

出合のナメ滝の右壁を登りきった右手に何年か前に焚き火で盛り上がった避難小屋の広場が広がっていた。平和なその場所で遡行終了とした。
帰りは雨滝に寄った。
あのとき、雨滝からのしぶきを掴むさとこさん、かわいかったなぁ・・・

下山後は、名勝・秋保大滝を見物。濡れて汚れた格好のままで乗り込んだため、綺麗ないい匂いのするカップル達の、わっ変な変な人いる、目線をビシバシ感じた。が、気にしない。それがゴルジャーだ。たぶん。
秋保大滝はまあそれなりに大きかったが、それよりもまずどこ登れるかにしか関心が向かなかった。それがゴルジャーだ。たぶん。

そのまま仙台市内の利休で牛タン定食を頂き、ゴルジャー夢見る東北の沢旅は幕を閉じた。

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