Date : 2018/07/14-15
Member : ヤマ、ワタ、バード、マリ
Timeline :
7/14 上高地 6:1012:00 涸沢 13:30-15:00 56のコル(テント)
7/15 56のコル 4:00-4:40 5峰 4:45 - 5:50  4峰 →34のコル  6:10 - 8:10 (2組分の登攀時間混み)3峰  9:00 前穂 9:40-12:45岳沢小屋13:15-15:45上高地
Author :まり

本日は晴天。なれども風弱し。すなわち。前穂北尾根日和なり。

といわけで、チームOneWANこと、ヤマ、バード、ワタ、マリの4人でついに前穂北尾根に行ってきました。楽しかった。達成感とはこのことか!! 
2月から準備してきたチームの最初の目標が前穂北尾根。

私と前穂北尾根の歴史は短くはない。思い返せば5年前から前穂北尾根の計画に名は連ねていました。が、その時は台風で流れ。その後もなんどか(去年も)計画書を出すまではいくものの天気に恵まれず。ただ、いずれも付いていきます!というもの。人頼りではなく、今回は自分でリードもできるように訓練して臨みました。ただ、この週末は私にとっては、海外出張のはざま。厳しいが、この週末を逃すとこのチームが再度集えるのは9月中旬、と大分遅くなってしまう。それは、、、というわけで、頑張るのみ!

そして、この7月中旬の実施は山的にも皆で色々と悩みました。大きいのは積雪の影響。56のコルまで行く際にどうしても雪を踏む=装備にアイゼン、ピッケルが加わる=重くなる。また、融雪に伴う落石やまだ歩きなれていないための浮石ゴロゴロ状態も不安要素です。

事前に経験者やロープワークを教えていただいた佐藤先生にも色々とアドバイスをいただき、安全が担保できる最低限の装備(前爪ありのアイゼンとピッケル、大きめのカムなど)を慎重にリストアップ。そして、暗い中落石におびえて5・6のコルにはいきたくない、ということで、初日のうちに5・6のコルを目指すことに。(=水をたくさん持たないとだめなのですが・・)

金曜夜10時に新宿に集合して、いざ沢渡に出発です。夜9:15くらいにバードから“仕事が終わらん”という泣きのメールが入ったものの、なんとかみな時間どおりに集合です。

沢渡についたのは夜中の2時半。うすらうすらとして仮眠し(つーか、寝れていないが)、5時に出発できるようにいそいそと準備。と、なんとすでにタクシー乗り場には長い行列が!!嘘でしょう!!なぜかここで45分くらい待つ。完全に計算が狂った。ただ、タクシーの運転手がとても協力的に運転していただけたため、思ったより早く上高地に到着。610分には歩き始められました。良かった。
いざ、出陣

横尾までは平たんな道
上高地から横尾まではやっぱりだるい。。みんなでバカ話をしながらてくてく歩く。バカすぎて、白雪姫の「ハイホー」を「前穂―」と置き換えて歌っている。少し恥ずかしい。

横尾からはようやく登り。しかし、久しぶりの重装備と暑さと時差ボケと睡眠不足の私には、涸沢までがだるかった。このルートを夏に登るのは10年ぶりくらい。その時も涸沢が遠いな、と思ったけど、その記憶再び。のそのそと歩く。ようやく到着!
この橋渡るのが初のバード


飲んべいの3人は必至に黄金の泡の液体を我慢し、カレー食べたり、おでん食べたりして気を紛らわしています。ひたすら眠い私は、眠る。
リゾート気分
 
寝る
さて、ここからはそんなリゾート気分もおしまいです。“ここからが本番だよ”、とヤマさんの声とともに、水、アイゼン、ピッケルを準備し、いざ、5・6のコルを目指します。すでに2パーティが先を行っているようでした。


頑張ります!
12本爪アイゼンをつけて
56のコルへ
 56のコルまではがっつり雪。前爪のあるアイゼンでよかった(私は重いから嫌だ―、と駄々をこねていたのですが)。雪渓の上からは冷風が流れてきて涼しい。上からの落石には気を張りながら、快適~と高度を上げていく。ちなみに、知り合いが5・6のコルの入り口を間違えそうになったと言っていたので、慎重に目指すべきコルを同定します。が、間違えるか?と思ってしまった。ただ、4峰は5峰の奥に隠れがちなので見えづらいかもしれない。でも、間違えるか?(再び) まあ、我々は先行者もいたこと、また、事前に写真をみていたこともあり、自信をもって進みます。雪渓が切れたところから、夏道に復帰!のはずが、夏道も出ていたりいなかったり。そして、道でないところは拳位の浮石がゴロゴロ。歩きにくい。前穂北尾根は浮石が多いと聞いていたが、こういうことなのか?!猛烈に歩きづらいゴロゴロの石の上を落石を起こさないように慎重に進み、ようやくコルに到着です。




浮石ごろごろで登りにくい
コルにはすでに1パーティ。奥又白から来たとのこと。それも素敵です。で、肝心のテンバ。話ではテントは4-5張できると聞いていたのですが、とんでもない!3張くらいかな。しかも、4人用テントをちゃんと張れそうな場所はすでにない。うー、こういう時は2人用テント×2つにすればよかったと反省。ま、とにかく入り口に大きな石がある場所に4人用テントをはる。実質3人用テントくらいの広さになってしまった。さて、どう寝るか。まずは全員がテントに入ってシミュレーション。こういう配置か?こうか??と色々試行錯誤し、配置決定。ザックは外に出して、ツェルトに包むことにしました。ちなみに、雪渓を先行して登っていた3人組は5峰のピークでテント張ると先に行っていました。タフだ。
今日のテンバ

5峰と奥に4峰が見える
テントを張り終えると、あとはみな“ぼー”と時間を過ごす。奥又白にもテントが数張見える。いつか行ってみたい。そして、ギアの確認。にしても、ギアが重い!先生がビナ一つの軽量化について熱く語っていた意味をようやく実感です。
奥又白方面
写真撮る人、歯磨く人

仙人になりかけてる人
寝る人
で、夜ごはんはフリーズドライのカレー。そして、あれだけ軽量化、と言っていたのにワインと焼酎とウィスキーがそれぞれのザックから登場。さすが、、、。しかし、みな寝不足のため、眠い!!眠いんじゃー。いつも“酒の1滴は血の一滴”と言って飲み干しているのに、さすがに今回は残していました。暗くなり始めたころに奥又白から2名登ってきていましたが、蚋がすごくなってきたので、私はその2人の雄姿を見ることなく、早々にテントの中に撤収。みんなもテント入ってきたなぁと思っていたら、気が付いたら、起きる時間になっていました。ワタ曰く、私と会話していた15秒後には会話は途切れ、寝入っていたらしい。ごめんよ。眠かったの。
2時起床。さて、いよいよ本番の日。空には満点の星空。流れ星も見えていたよう。朝ごはんを手早く済ませ、ドキドキしながら身支度。隣のテントも同じ感じ。おじさんが慣れていたようだったので、何回目か聞くと、6回目とのこと!すげー。。。確かに足はスニーカー。世の中、強者はゴロゴロいますな。

56のコルにテント張っていた2組が先に出発し、最後我々が出発。

まずは5峰です。ここは淡々と岩を登ります。バードが山渓のビデオの谷口ケイさんの口真似をしながら、マリエちゃん、まことに快適だよ~」というだけあり、登りやすい岩稜を迷うところもなく、ただ、浮石には注意をしながら進みます。
5峰の登り

浮石に要注意!


5峰到着。ここに泊まった3人組に朝のご挨拶。また、56のコル下の雪渓から登ってくるパーティがたくさん見えます。5・6のコルに泊っていてよかった。。(ちなみに、これらのパーティは3峰の登りでは、1時間ほど待ったらしい)
モルゲンロートに染まる4峰
ルーファイする
そして、目の前にはどーんと、4峰がそびえています。モルゲンロートに照らされて美しい。4峰はルートファインディングが重要と言われています。我々も予習していた内容をなぞりながら、登るルートを改めて確認。ちょうど先行パーティもおり、かれらのルートもみながら、うん、このルートだね、と皆で認識し、早速取りつきます。

一番重要なのは、奥又白側にトラバースした後、ちゃんと涸沢側に戻ること。これを念頭に、ヤマが先頭にたって進みます。さんざんビデオを見てイメトレが出来ていたからでしょうか。あー、こういうシーンあったね、と言いながら進みます。そして肝心の奥又白側にトラバースした後の涸沢側に戻る箇所も、ここだな、とみんなで言い合いながら進みます。4峰のピーク手前の箇所では、直登か少し右に行くか迷っていたところ、先行者から直登のほうがいいよ、と言われ、ヤマが直登しますが、なんか簡単ではなさそう。というわけで、3人は右側から攻めることに。うん、こっちのほうが登りやすい。人の言うことをあてにしてはいけない、ということを学びました。




ひょっこりはん!
そして、4峰ピークに到着すると、今度は3峰がドーン!!

ここからついにロープの出番です。ここでも4峰のピークからルートを同定。よし、これまでの練習の成果を出すのみ、とコルまで降ります。
3峰
さて、ここで今回のシステムを説明します。4人ですが、バード+ワタ、ヤマ+マリの21組で登ることにしました。当初は2組でギアを共有するか、とか、フィックスして間2二人がアッセンダーで登るか、という案が出ていたのですが、いずれの方法も遅くなります。また、先生からは、まずは軽量化よりも安全第一が重要、1組ずつギアを持ちなさい、というアドバイスをいただいたため、それに従うことにしました。

コルで、じゃんけんし、勝ったヤマ+マリチームが先に行くことに。
ギアの最終チェック
赤枠にヤマとマリがいる
先行者の出発を待って、いざ1P目の支点づくりに。風が吹いてたせいか、鼻水だしながら、支点を作り、まずはヤマがリード。そして、マリがフォローで行きます。が、最初から高度感があってビビる。思わず上でビレイしているヤマに「怖いんですけどー」と声をかけると「だから、ロープ張ってるんじゃん」という当たり前の答えを返され、正気に戻ります。そうだ、私は自ら危険な場所に来たんだった。そして、ヤマと合流。

1P目
2P目は私がリード。チムニーの前でビレイしているパーティもいましたが、それだと短い、かつ、落石の可能性もある、ということで、行けそうであれば、そのままチムニーを登る、ということを確認し、登り始めます。チムニーの中は、登られすぎているのか結構岩がフィックスされていて、快適。途中小窓に遭遇。組長のブログにも掲載されていたやつです。チムニーの中を進むと今度はCSが。さて、この左を登りたいが、なんか体がうまく持ち上がらない。これ以上進んでもロープの流れが悪くなるだけかも、と判断し、カムも使いながらここで支点をとり、ヤマをビレイします。ちなみに、声は全く届かないので、“あうん”の呼吸でロープの引き上げ、ビレイを開始します。こういう練習も事前にしておいたので、焦ることはありません。
で、3P目のチョックストーンはヤマがリード。私もフォローで続き、ここでいったん終了です。
3P目:CS脇
3P目
ちなみに、バード+ワタチームは、チムニーの手前で2P目を終了させ、3P目はチムニー+チョックストーンの脇としていました。それぞれですね。

3P目終了後、3峰ピーク直下まではコンテで進みます。さて、ピーク直下が4P目。組長のブログでは、右側に行ったためにピークを過ぎた、とのことだったため、ピークを踏みたい身としては、右に行かずに上の陵にでるルートを探します。私が選択したのは、少しハングしているところ。ハングしてるから大丈夫かな、と心配しましたが、ホールドが豊富にあったため難なくクリア。ジムのようなルートで楽しい。ただ、これが適切なルートがわからなかったこと、また、上に上がると左によさそうなルートがあったため、バード+ワタチームには、もっと左のルートを行ったほうがいいのでは、とアドバイス。ただ、左をリードで登ってきたバードによると、あまり登られていた形跡はなかったとのこと。あれま。ルートの選択に正解がないのが、アルパインの楽しみの一つですね。
4P目ビレイ点:3峰ピーク直下
4P目ビレイ点:3峰ピーク直下
 


バードは違うルートで登ってきた

 で、気づけば3峰のピーク。目の前には、2峰そして、人がたくさんいる1峰、頂上が目の前です!!
3峰ピーク?
3峰のピークまでくれば、2峰を懸垂下降すればすぐです。この懸垂下降の箇所をクライムダウンで降りる方も結構いらっしゃるようですが、安全をとって我々は懸垂下降。下降点にはたくさんの捨て縄があるので、これを利用して懸垂下降をセット。このロープは2組共通にしました。下降は10m程度でしょうか。あっという間。そして、、岩稜隊を進むと、もうそこはピーク。


2峰バックに
懸垂下降の準備
懸垂下降中

だいたい10mくらいか
 

 懸垂下降した順にピークに向かったので、ヤマが先に到着。私はせっかくなのでみんなを待って一緒にピークを、と思ってピークの手前で待っていたら、一般登山客に“写真撮るのに邪魔なのでどいて”、と言われてしまい、しぶしぶ先に進むことに。思いを汲んでよ、と思いましたが、そんなことはこのおじさんにはわかるはずもないですよね。。。

ま、ともあれ、全員がピークに到着。やったー!という声とともに、自然とこぶしが天に向かいます。そして、みなで握手とハイタッチを。みな、最高の笑顔です。
やったー!!!
 ここまでの道のりを振り返って涙を流すもの、人生で最高の一服だ、とたばこをふかすもの、パンをむさぼり食うもの、ルートを振り返るもの。ただ全員が共通して感じたのは、“私たち、できたよ“、ということでしょうか。言いようのない達成感がこみ上げます。
3峰、4峰を見返す
色々あったんだよ、本当に

今までで一番うまい一服だ
  
いつまでもピークにいたい気分でしたが、アホみたいに暑いので、降ります。が、ここからがしんどかった。

電池の切れたメンバー×炎天下×重太郎新道=長い長いだるい!

重太郎新道は、急だし長い。この道も10年前に通って、長いなーと思ったけど、今回も長いなーと。しかも、体調不良を訴えるメンバーが2人登場。緊張の糸が切れたのでしょう。岳沢小屋から下もちょいちょい休みながら、ゆっくり進みようやく上高地。

ご褒美にかき氷
リゾート地の格好をしている観光客の波の中、ロープ、ピッケルを持った汚い恰好した我々が急に異分子になります。そして、驚くべきことに河童橋あたりまで沢渡行きのバスの列が!!ナニコレ!慌ててタクシー乗り場に行くと、ここも長蛇の列。1時間半、と言われますが、バスよりはましそうなので、我慢して並ぶことに。しかも、並ぶ場所は日影がない。ひどい。。。結局1時間ほど待ったところでタクシーに乗れました。いやー、行きも帰りもタクシーを待つのは計算外でした。上高地の人気にびっくり
バス待ちの長い列
で、ゆっくりお風呂に入って、気づけば、もう7時ではないですか!!

新宿でレンタカーを借りたのは、レンタカー返却後打ち上げをするため。しかもこのプランを思いついたバードは大声で“俺天才”とか叫んでいたほど打ち上げを楽しみにしていたのに、そもそも家に帰る終電にすら間に合わないかもしれない事態です。
私自身は十字路で揚げ物を食べることを楽しみにしていたのですが、バードに冷静にたしなめられて、ここはおとなしくコンビニ弁当で我慢して、東京に向かいます。

そして、そして、気づいたら、新宿でした。

3人とも撃沈している中、バードがただ一人渋滞の中運転し続けてくれていたのでした。しかも、終電に間に合った。本当にありがとう!!できる男は違うね!まじで感謝です

最後に

今回の前穂北尾根では佐藤先生をはじめ、組長、ふじさん、皆さんから本当にいろんなアドバイスをいただきました。本当にありがとうございました。おかげで楽しく、安全に初アルパインを頼むことができました。また、組長のブログが他のどの記録よりも一番詳しく、参考になりました。記録とは、かくあるべき、ですね。

装備としては、56のコルにこれだけ積雪が残っているときは、前爪付きアイゼン、ピッケルがあったほうが安全だと思います。また、ルートには残置のハーケンが所々にありますが、カム(おおきめ)も使えたほうが自由度は増すと思います。

今回、前穂北尾根を自分たちで登り切ったことで、行ける山が広がったなぁとしみじみ感じました。そして予習も大事ですが、実際の山と対峙して現場で判断する力・経験を養うことも重要だと感じました。

人生でこのような達成感を味わうことができるのは本当に贅沢な経験です。このような時間をともにしてくれたメンバーに改めて感謝です。チームOneWANの名のごとく、みなで一歩ずつステップアップをしていければと思います。

さて、次はどこに行こうかな。

後日談:打ち上げの日程を調整するも、予定合わず。。山でやることになりそうです。

今回お世話になったロープたち

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