鷹ノ巣谷

2012-06-27

06_沢登り f_奥多摩・高尾

Date : 2012/06/24
Member : カズ、さとこ、組長
Timeline :「入渓点」1118~1335「大滝」1410~1430「水ノ戸沢・金左小屋窪分岐」~1625「1315付近二俣」~1713「ヒルメシクイノタワ付近登山道」~1845「稲村岩」~1928「東日原バス停」~2054「平石橋」


奥多摩を代表する有名な沢、鷹ノ巣谷を遡行してきました。
鷹ノ巣谷は、昭文社山と高原地図にも紹介されているメジャーな沢で、ルート集によると、標高差1000mを突き上げる、初級者の体力トレーニングにはちょうどいい沢なんて書かれていて、ドMの心が惹きつけられてしまいました。この日は、予想外の日原街道通行止めもあって、日の暮れるまで歩き通しの、まさに体力ルートでした。

前日のモロクボ沢の疲れもなく、今日も快調に奥多摩街道・青梅街道を飛ばして、8時30分頃、奥多摩駅に到着。さとこさんがすでに到着していて、何やらバスの係員の方とお話しています。どうしたのかなーと話に加わると、どうやら、バスが東日原まで行かないらしい!!まあ、そこまではいい。どうせバイク2ケツで行く予定だったから。そこで、「バイクなら入れますかー?」と聞いてみる。「いや、無理無理。迂回路は、人一人歩けるくらいの山道だから」。ウソやん。

どうやら6月の上旬に平石橋より先の日原街道で土砂崩れがあったらしく、平石橋までしか車は入れないとのこと。予想外の展開です。まあ、奥多摩ビジターセンターのHPの下の方に、通行止めの情報は掲載されていたのですが、今回はつい見落としていました・・・。予想外というか、完全に準備不足。
まあしょうがない、歩くか、と決定したところで、腹痛カズさんがなんか昨日の疲れが残った感じで到着。事情を説明し、とりあえず平石橋まで行きましょう、ということで、さとこさん乗っけて平石橋まで向かう。もしかしたら行けんじゃねーかなーなんて思っていたら、やっぱり通行止め。そりゃそうだ。トボトボと迂回路を歩き始めます。

迂回路は、たぶん昔に作られた山道で、手すりや裸電球をつけ、木片を敷き詰めて緊急に整備したもののようで、川乗橋の手前まで続いていました。
1時間もかからないで東日原まで着くだろうと軽く考えていましたが、意外と遠い。車が通らない延々と続く日原トンネルを抜け、ようやく日原の集落が見えてきました。1時間30分ほどかかったでしょうか。入渓前に早くも1本入れたい気分です。

日原の集落で一人のおばあちゃんとお話ししました。
日原街道の通行止めの影響で、とても生活に不便をしているそうです。食べ物は生協がまとめて持ってきてくれるものの、お薬などの大事なものが手に入らないということでした。日原集落は、日原街道1本のみで繋がっている土地なので、それが通行止めになると、住民の方は大変です。とりわけ、足腰の弱ったおじいちゃんやおばあちゃんでは、あの迂回路の山道を通り、1時間30分かけて(奥多摩駅までならそれ以上になります)歩くことは不可能です。よく台風等の災害で道路が通行止めになり、陸の孤島となったとかいうニュースがありますが、大都会東京の裏庭でそういった事態が現実化していることに少なからずショックを受けました。と同時に、台風一過で大水量の沢を期待したのがちょっと不謹慎なような気がしました。
おばあちゃんの話では、土砂崩れ箇所が重機の入れない尾根上部で、復旧作業が遅々として進まず、7月上旬頃に復旧するかもしれない、とのことでした。
それでも笑いながら、気をつけてねー、と言って、階段を下りていくおばあちゃんの丸く曲がった背中に、山の民の苦労を思いました。

でも、とにかく今日は沢を楽しもう。
少し暑いですが、天気もいいです。鷹ノ巣山方面の登山道に入り、大水量の日原川に架かる巳ノ戸橋を渡って、雲取山方面の道標があるところを左折。朽ちた橋が架かる鷹ノ巣谷出合いにようやく到着しました。登山道にも沢にも、全く人の気配がしません。道路閉まっているんだから、まあそりゃそうだ。

早速、沢支度を済ませ、入渓ーー。
すでに時間は11時を回っています。そこそこ時間がかかる鷹ノ巣谷なので、場合によっては時間切れ撤退も視野に入れ、沢下降時の懸垂支点の有無、大滝上で遡行終了して稲村岩尾根に向かう尾根ルートを確認しながらの遡行となりました。
入渓点付近の滝


予想通りの大水量です。
快適なシャワークライム!!!・・・というよりは、水流攻めたら濁流のまれて土左衛門って感じです。
時間的な制約からスピードアップを図る必要もあったので、左岸に広がるワサビ田跡をとことこ歩いて越えます。
いくつか滝を越えると、左右から堰堤が入ってきます。相対的に水量の多い左側の堰堤を右から越えます。
しばらくワサビ田跡の河原を歩きます。
鷹ノ巣谷は、石が積まれたワサビ田跡がとても多いです。上部の水ノ戸沢までところどころワサビ田跡が続いていました。とても人臭さの漂う渓です。沢ヤさんの中には、やはり人工物があるのは気分をそがれると考える人もいると思います。でも自分は、ワサビ田跡もその渓が辿ってきた歴史の1ページとして、その苔むして荒れ果てた石堤に趣きさえ感じました。
集落の力自慢たちが、わらじを履き、額に汗しながら、一抱えもある石をせっせと積み上げている姿が目に浮かびます。山の恵みに感謝しながら、皆で協力して生きいきと暮らしている山の民の生活は、社会にお疲れな人間にとってはある意味憧れです。

とまあ、下らんノスタルジーに浸っている場合ではなく、どっぷり水に浸りそうな深い釜を持った小滝の登場です。
右側からへつります。濡れずに突破できる人はいるのかどうか分かりませんが、水の中のスタンスを拾いながらも、腿の付け根くらいまでバッチリ浸かりました。
その後も、2~4mほどの滝がいくつも続きます。ほとんど右壁をへつって越えます。岩はつるつるでヌメり、苔が付いているのでスリップ注意。フェルトのフリクションをバッチリ利かせて登ります。倒木の橋が架かった滝もありました。馬乗りになって越えます。

3段12mの滝が続きます。
それほど難しくはありませんが、3段目は高さもあるので一応ロープでさとこさんを確保。壁の途中に残置ハーケンがあり、上にも残置ハーケンとスリングがありました。
2つ目の3段12mも右から。難しくはありませんが、こちらも一応ロープを出します。上部の木でビレイ点を作れます。
その後もいくつか滝がありますが、3,4mくらいの滝で右側の2、3メートルほどのルンゼ状を登る部分がちょっと悪いです。残置ハーケン2枚がクラックに刺さっています。抜けた所にも真新しいハーケンとスリングがかかっていました。自分はフリーで越えましたが、登りながらさとこさんはちょっと厳しいかなと思い、ロープをフィックスし、さらに途中のハーケンにカラビナとスリングをひっかけときました。
ここで道具屋のカズさんの本領発揮!!PETZLの新製品とかいう登高器としても使えるプーリーの登場(後で調べたら、「マイクロトラクション」という商品で2012年の新製品!!1万円ほどします、トホホ)。最先端の道具を使ってA0で難なく突破。リーダーをする場合、後続がフリーでは越えられない事にも備えて、こういった登高器は持っているべきかもしれません(金があれば・・・)。まあ安上がりにプルージックとか使えばいーけど。

そしてそして、大水量のフィナーレを飾る白竜が視界に入ってきます。18m大滝です。
白い水飛沫を豪快に上げ、大迫力です。一見、手ごわそうですが、登攀自体は簡単です。右側のザレを使って巻くこともできそうですが、逆に危険そうです。
下段は右壁の乾いた階段状を登り、最後は木の根っこも使ってテラスに上がります。残置ハーケンあり。
テラスをとことこ歩いて上段に取り付きます。上段も草が付いていますが階段状で簡単です。上段は、残置ハーケン等は見当たりませんでした。滝上には錆びたリングボルトが2つ。ちょっと頼りなさげだったので念のためハーケン1枚打ち足して、セカンドのさとこさんをビレイ。上から見ると、やっぱりそれなりの高さがあります。さとこさんもカズさんも特に問題なく登っていました。ただ、最後の乗っ越しで、カズさんがつるっと滑って落ちる・・。完全に油断でっせ、かずさん!まあ、奥多摩の苔むした岩にアクアステルスソールはダメでしょう。。
20m近い滝ですが、50mロープ1本あればセカンド中間エイトで数珠つなぎで登っても十分ロープは足ります。
この後、落ちる・・・
滝上の穏やかなワサビ田跡でようやく1本取ります。
ここまででようやく沢の半分。14時を回っていましたが、右側の尾根に向かう斜面は急で危険そうだし、時間的にこのまま沢を詰めて登山道を下山しても陽のあるうちに日原まで降りられると判断して、予定通りいくことにしました。
まだ600mくらい高度ありまっせーと言ってみて、なんとなくため息が聞こえた気がしないでもないですが、そんなことは構わず、先に進みます。

程なく、金左小屋窪と水ノ戸沢との分岐。
右の水ノ戸沢に入りますが、左の金~のほうが明るく、そちらにそそられます。
水ノ戸沢に入ると、渓相は暗くなり、沢は次第に急になってぐんぐん高度を上げていきます。でもまだまだワサビ田は続きます。こんな上までワサビ田を作るほど儲かる仕事だったんですかね・・・。他に産業がなかったのかな。それとも山の民にはこんな沢上部でも朝飯前の遡行だったのかもしれません。

水ノ戸沢も2~4mくらいの小滝が延々と続きます。突っ張ったり、へつったりでいろいろ楽しめます。

標高が上がってくると、次第に深いガスが立ち込め、辺りは薄暗くなり、陰鬱な雰囲気となってきました。谷はいよいよ急峻になり、さとこさんがちょっとバテ気味です。
1315付近の二俣を右に進みます。地形図上は水線が右の沢についていますが、実際には水流は涸れていて、逆に左の沢に水が流れていました。自然は無常。刻一刻と変化する生き物です。人が作った地図のみにとらわれることなく、まずは余計な先入観なく対峙することが肝要です。

沢登りの楽しさの一つとして、読図の楽しさがあると思います。地形図に描かれる山の襞を読み解き、実際に思い通りのポイントにばっちり突き上げた時の楽しさは格別です。前日のモロクボ沢でも予想通りに畔ヶ丸山頂に直接ツメ上げた時は、おしっ!!と、小さくガッツポーズが出てしまいました。
今日もしっかりと地図を読んできました。自信を持って右を選択!!。・・・とはいっても、右が正しいという90%の確信がありつつも最後の10%を埋めるべく、一応GPSで確認。このくらい勘忍してー。
1315二俣
ますますガスは濃くなり、何となく獣臭さを感じます。クマさんに出会ったら嫌なので時折音を立て、辺りをうかがいながら進みます。

鷹ノ巣谷は、ツメが核心、とルート集には書かれています。
確かに上部は手をついてステップを踏んで登るくらいの急斜面でアイゼン・ピッケルがほしいくらい。でも、ザレているわけでもなく、笹やぶは枯れているので、藪こぎはありません。歩きやすいところを目を皿のようにして探します。そうやって探したラインにはシカの足跡がありました。土の匂いを嗅ぎながら、この急斜面をどうやって登ろうかと考えている人間1匹。その動物的嗅覚がこの山に棲む獣とリンクしたことに、ある種の嬉しさを感じました。ボヤーっとした日常だからこそ、このような動物としてもっともピュアな感覚を味わうというか確認するために度々山に足を運ぶのかもしれません。日暮れと夜の暗闇を恐れ、朝日を待ち焦がれ、のどの渇きを潤す湧水に喜びを感じ、風の匂いを感じる。もっともピュアな感覚を取り戻せるのが、沢の魅力でもあり、山の魅力でもあるような気がします。
アホなこと言ってないで、人間としてもっとしゃんとしなさい、俺。

気分を変えて、今日もバッチリ、予定通りのポイントにツメ上げました。ヒルメシクイノタワから1,2分上がったコル上です。藪こぎは最後の4,5mほどの枯れた笹だけ。登山道に出れば、とりあえず一安心です。そういえば、去年の奥多摩ビバーク訓練では、八丁山を越えて今日とは反対側の斜面からこの付近上がってきました。そのときは、まりりんさんがバテバテでした。。


おとといが確か夏至。日は長いけれども、日が暮れないうちに集落までたどり着いたいので、せっせと稲村岩尾根を下山。例のピュアな動物的感覚は日暮れと夜の闇の怖さを呼びさまします。焦ってはいけませんが、何年山をやってもこういった純粋な感覚は大事にしたいものです。

稲村岩を左に巻き、急斜面を下りているとシカに遭遇。人が1歩1歩慎重に歩かなければならないような急斜面をシカさんはダッシュで駈け下りていました。何なんでしょうね、あの脚力。シカさんと動物的感覚がリンクしたなんて、やっぱりか弱い人間の思い上がりです、全く・・・。

最後は、ヘッテン下山。ようやく日原街道までたどり着きました。振り返れば、稲村岩が暗がりに茫々と浮かんでいました。

でもまだ道路歩きがあります。結婚の話とか離婚の話とかなんかピュアな動物的感覚とはかけ離れた人間的ドロドロな会話に盛り上がりながら、人里向かって帰ります。だって人間だもの。
途中の迂回路は裸電球がぶら下がり、なんかお祭りみたいで綺麗でした。
結局、11時間くらいあるいたのかな。
とにかく、カズさん、さとこさん、お疲れさまでした。

(組長)

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