石津窪

2012-06-30

06_沢登り f_奥多摩・高尾

Date : 2012/06/30
Member : テトラオドン、組長
Timeline :「千ヶ沢林道入口」0931~0941「石津窪出合入渓点」1008~1045「25m大滝」~1211「遡行終了点ケルン」~1306「市道山山頂」~1440「千ヶ沢林道入口」


梅雨の晴れ間となったこの日、秋川の石津窪を遡行してきました。
小粒だけどもぴりりと辛い秀渓で、半日ふらっと沢でも♡♡♡という気分の時は最高の沢でした。



今週も懲りずに奥多摩の沢通い。もはや通勤です。奥多摩街道は通勤路です。
今日目指すは、秋川の支流の盆堀川の支流の千ヶ沢の、そのまた支流の石津窪です。もはや沢ではありません。「窪」です。
苔むす里山の小さな窪みにわざわざ好き好んで行くんです。

思えば、10数年前。北アルプスや南アルプスを縦走し始めて山の魅力に取りつかれ、日本の屋台骨たる日本アルプスを爽快に天上闊歩してきた自分が、今やこの東京の裏庭の小さな「窪」みを這いつくばっているんです。人生分からんもんです。
でも、槍の穂先に一つの感動があるなら、この小さな「窪」みにも一つの感動があるんです。

なにはともあれ、この石津窪。小粒であっても侮るなかれ。一応、2級・中級の沢で、25m大滝がある登攀的な沢です。ガイド本にも「秋川水系屈指の沢」とかいう仰々しいフレーズが・・。そういうことで、ある程度の緊張感を持って臨みました。

武蔵五日市駅でテトラオドンさんと待ち合わせ、バイクで伴って盆堀林道に入っていきます。盆堀林道は良く整備された舗装路です。
しばらくバイクでくねくね行くと、「ゴミ捨禁止」と書かれた看板のある林道が右から入ってきました。千ヶ沢林道です。付近には釣り人と沢支度をしている4人パーティーがいました。
林道入口手前に2台ほどの駐車スペースがあります。ここに車を停めているってことは、彼らも石津窪かなーっと思っていましたが、結局、この後、彼らと会うことはありませんでした。どこ行ったんだろ・・・?

とりあえずここで、自分の単コロバイクとテトラオドンさんのモンスターバイクを仲良く停めて、千ヶ沢林道を石津窪出合いまで歩きます。千ヶ沢林道はゲートが閉まっています。

10分ほど歩き、道が左に曲がっているところが石津窪出合いです。右手に小さな水の流れが見えます。まさに「窪」です。ちゃんと見てないと通り過ぎてしまいそうです。
入渓点には、赤テープが巻いてあり、また、沢床に下りるトレースがついています。
ここで、沢支度を整えます。今日は、遡行時間の短い沢なのでゆっくり支度します。遡行時間が短いゆえに多くの沢ヤさんは石津窪と他の沢を継続遡行する人が多いみたいです。でも我々は今日はこの1本だけ。ゆっくりしすぎて虫が寄ってきたので、追い立てられるように入渓ーー。

正直なところ、入渓点から全く見栄えがしません。先週の鷹ノ巣谷に比べたら、水もチョロチョロ程度。沢幅も狭い。「しょぼいねー」とつい言ってしまう感じです。その上、入渓者も少ないらしく、クモの巣が多い。遡行終了点までクモの巣との戦いでした。
その狭い窪を少し歩くと、最初の二俣。右もいわゆる「窪」レベルです。ここは左。石津窪はこの後も進路はすべて左です。

左に行くとすぐに4mほどの滝。
この滝を見て、「お、何か面白くなってきたぞ」と俄然、テンションが上がり始めます。白い水流沿いをシャワークライム!!水量は少なくてもバッチリ濡れます。股間まで濡れて「ウヒャウヒャ」ってなったところで、今日もようやく沢支度完了です。
4m滝

続いて今度は深い釜のある4m滝です。
もうバッチリ濡れているんで、ここは中央突破!!・・・と思ったんですが、少し足を踏み入れると、深い!!窪のくせに深い。こりゃ胸までいきます。まあ、無理することもないかと自分を納得させ、右側を歩いて釜を通過し、釜の上から水流沿いを登りました。ヌルヌルです。

次の二俣も左。本当に窪みにはまるような所を通過。
そうすると、目の前に綺麗なスダレ状の滝が。。10m滝です。いよいよ楽しくなってきました。
水が降るように流れていて癒し系です。
沢修行中
10m滝は水流右側を登ります。ガバばかりで難しくはありませんが、残置ハーケン等はありません。初心者がいるときは一応お助けを出した方がいいかもしれません。最後は木の根っこを掴んでおしまい。

先には2段の滝が見えます。8×10m滝と上部の6m滝です。
8×10mはナメ滝。水流沿いにスタンスを拾いながらのシャワークライムです。左手側にガバがいっぱいなので難しくありません。

続いて、上部の小さな釜のある6m滝。
右側の少し逆層気味の壁を登ります。下部は少し立っていて、スタンスも遠いため多少腕力が要ります。ただ、こちらもホールドは豊富にあるため(少し動くヤツがありますが)簡単です。右上に残置の腐ったスリングがありますが、それ以外の残置ハーケン等はありません。リスはいっぱいあります。こちらも初心者がいる場合は、要お助け。

そして、ついに見えてきました。25m大滝。先週は同じくらいのサイズの二つの大滝、モロクボ大滝30mと鷹ノ巣大滝18mを見てきました。どちらも大水量大迫力でした。
そして石津窪さんところの大滝・・・・。おや、なんか水ないぞ。いや水はありますが、少ない・・・。モロクボや鷹ノ巣に比べちゃうと圧倒的に少ない・・・。一筋の白い水流と、あとはスダレ状に水が飛び散っている程度です。
でも実際登ってみると、このぐらいの水量がちょうどいいんです。


なにはともあれ、しばし大滝見物。今日は時間がたっぷりあるので、まだ入渓から30分ちょっとしか経っていませんが、一服。カロリー消費していないにもかかわらず新たにカロリーを補給しながら、大滝を眺めます。しばらく眺めていると、「いや、この滝、意外に味があるな」と思えてきます。岩の上で水の粒が太陽光にキラキラとはじけ飛んでいます。その素朴にきらめく姿に気づいたときに、この「窪」の一分を見たような気がしました。どんなことにも、見方を変えれば、物差しを変えれば、また新たな魅力を発見できるものです。

そうしたあと、ゆっくりと登攀ラインを探し始めます。下から見る限りでは、中段までは傾斜が緩く簡単そう。リングボルトが見える中段以降から落ち口付近がちょっと立っていて、水が空中に投げだされて飛んでいます。

ここはもちろんロープを出します。そろりと登り始めると、いやいや結構水をかぶる。押されるような水流ではありませんが、水しぶきが結構かかり、大雨の中を進んでいる感じです。それでもきらめく水飛沫を下から見上げるととても綺麗で、「うほー」と歓声を上げてしまいます。中段まではヌメっていて滑りやすいですが、簡単です。残置ハーケンが2枚ありました。

中段のリングボルトにランナーを取ってから、ここからのラインを探ります。右上に腐ったスリングがありますが、ホールドが少なく悪そう。それに結構ヌメっています。大体、こういう岩は、水流の中のスタンスの方が滑りにくく、水流から離れて濡れている岩の方が滑りやすいので、水流の中を果敢に進んだ方が良いです。中段テラスから少し左に移動して水をバシャバシャ浴びながら直上しました。おそらくこのラインは、もう少し水があったら登れないと思います。土砂降りのように浴びるので目も開けづらいです。まさにシャワークライム!!!とにかくテンションは上がります。

バシャバシャ浴びながらここで一つランニングがほしいなーと思って、水流沿いのクラックにナッツを決めました。ピコピコとテスティングしていると、あれっ、残置ハーケンあった!水飛沫を浴び過ぎているのですぐには発見できませんでした。ナッツはやめて、こいつにランナーを取り、滝上まで這い上がりました。ホールドはしっかりとあり、水流の中にいいスタンスがあります。ただ、顔にかなり水を浴びる上に高度感もあるので、リードに慣れない人はちょっと恐いかも。Ⅲ+くらいです。
テトラオドンさんは途中で写真を取りながら、楽しそうに登っていました。ビレイ点にはリングボルト3つと残置のスリングがかかっていました。

平和な滝の上

ここまで来ると残りはわずか。それでもここから出てくる滝も結構楽しめます。
水流は細いですが、ナメをゆるやかに流れる一筋の滝は、上品で奥ゆかしさを感じます。高級料亭のお庭みたいです。水流の中をほとんど真っすぐ登ります。
次第に沢筋はますます狭まり、倒木をよけ、よけたらクモの巣って感じで歩いて行くと、他の人の記録でもみた遡行終了点のケルンがありました。ひとつ、いや三つほど石を積み足しておきました。崩れました。すいません。
今回はかなりゆっくり行きましたが、2時間ほどで遡行終了でした。
ここから左の斜面を30秒ほど登るともう仕事道のある尾根に到着。藪こぎゼロです。ここで沢支度を解除し、登山道方面に登って行って臼杵山と市道山の中間あたりの登山道にでました。ここらへんはハセツネにも使われているそうで(たぶん)、確かに走りたくなるような柔らかい道です。
途中、何パーティーかのハイカーとすれ違い、少し急登すると市道山の山頂の立派な道標が見えてきました。中高年の単独ジイ様が3人ほどいらっしゃいました。うーん、たぶん自分もあれくらいの年になったら、もう足腰弱くなって、これくらいの低山を単独で寂しく(いや、楽しくっ!!)トコトコと登ってるんじゃないかなーっと、何となくそう思いました。山頂は目の前の木が少し伐採されていて、ちょっとだけ見晴しがいいです。西武ドームが見えました。
沢登りではわざわざ山頂を踏まないことも多いですが、沢登りが登山の一形態である以上、やはり山頂を踏むのが筋のような気がします。たとえ大した山頂ではなくても・・・。
今日この素晴らしい沢、というか窪を魅せてくれた市道山に熱いハグとキッスを捧げました。ありがとさん。

下山は、山頂直下からのびる千ヶ沢の廃道を使います。薄い踏み跡をたどっていくと、山椒のトゲトゲが痛い。チクチクっていうかブスブス刺さります。皮膚の弱い??テトラオドンさんはぶっ刺さって流血。。。市道山の洗礼を受けました。さっきはあんなに愛し合っていたのに・・・。

ところどころ踏み跡はなくなり、藪も結構あって、かなり歩きづらいです。沢床も歩きます。普通の靴でヌメッた岩に乗るとすごい滑ります。まあ、そりゃそうですが、やっぱりフェルト様のフリクションはすごいですね。


半分くらい下りると、ちらほら赤テープが現れ始め、沢幅が広がり木橋がかかったところで千ヶ沢林道の終点に到着。そのままちょこっと歩いて、無事、千ヶ沢林道始点の駐車スペーズまで戻っていました。


石津窪は、小さいながらも快適にシャワークライミングができ、ツメも全く藪こぎなく簡単に上がれるので、サクッと沢でもていう気分の時には最適の楽しい沢でした。いや、窪でした。
そして、今日持って帰ってきたお土産は、奥多摩のでっかい蟻さんでした。

(組長)

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