Date : 2016/04/9-10
Member : ちえ蔵、組長
Timeline :9日 エスカルプラザ~ゴンドラ~アルプス平~遠見尾根~西遠見尾根BC~偵察
10日 BC0525~0545G0稜取り付き~0755G0の頭~0850五竜岳山頂~0951五竜山荘~BC撤収~1355アルプス平
Author :組長


後立山、なごり雪。


今年は、氷シーズンも短かったし、雪のシーズンも短い。もちろんそのおかげで、城ヶ崎クライミングが充実したシーズンとなった。特定の分野にこだわりを持たない(沢は別、笑)僕のようなちゃらんぽらんなクライマーは、いろいろとつぶしがきくから都合がいい。。
でも全てのことは通じていて、山のためのクライミングとか、岩トレとか、そういうことを言い出す輩は嫌いだ。僕も一時期そういう思いを持ったことがあるが、全てのジャンル(この言葉自体が好きではないが)にはそれぞれに深遠な世界が広がっていて(深く掘り下げすぎて抜け出せなくなってしまった人も多数)、すべてが楽しいのだ。
すべてのことは通じているということは、たぶん山だけの話ではない。でも多分それ以上の話をし出すと、自分が老けた感じがしてくるのでやめとく。

まあとにかく、そんなこんなでどれも中途半端なクライマーが春の陽気の五竜岳の山麓に降り立った。
前日に湯川でハンドジャムをしまくったので、手の甲が痛い。
見上げると随分と黒々とした山肌。だいぶ雪が少ないようだ。昨年も何度か残雪の後立山に訪れたが、昨年の4月末くらいの残雪具合だ。GWの雪の状態が気になる。気になると言っておきながら、雪なくなったら岩に専念できる、雪国の沢シーズン到来が早まる、と別のモチベーションが急速に湧き上がったくるから、なんとも都合がいい。

ボーダーやスキーヤーに煙たがられながらゲレンデを歩き、遠見尾根に取り付くとたくさんの登山者がいた。
強烈な紫外線を浴びならが、大汗かいて西遠見のBCにたどり着いた。
当初は、初日にG0をやり、2日目にG2中央稜をやるつもりだったが、ちえ蔵さんのペースが上がらないのと、遠見尾根から見えるG2の稜線が余りにも黒黒としすぎていて、藪漕ぎと長いガレ場歩きが必至な感じがしたため、急速に登攀意欲を失い、暖かな陽光のもと溜まりに溜まった睡眠不足を解消するという易き気持ちに流れる形となった。
中央の黒いのがG2、右がG0
誰かの雪洞あとの快適な平坦地にテントを張り、強烈な日差しの中、急速に溶けていく雪洞の入口の雫を集めた。 南アルプスの天然水は、ほんの数十分で北アルプスの天然水に変貌した。
ビールが入ってただの酔っ払いとなる前に真面目に偵察に向かう。幸いなことにトレースはついてなく、まっさらな状態でG0稜のラインを決めることができた。雪の状態、岩の状態、ヤブの状態、傾斜、プロテクションなどなどを想像し、きっとこうなっているだろうな、とか、ここで一休みしようとか
、ここでもしかしたらロープ出したほうがいいなとか、そんなことを考えながら、この美しい、カッコイイ山を眺めている時ほど楽しい時間はない。
 西遠見のBCは大変素晴らしい場所で、まるでスイスアルプスにいるのではないかという錯覚に陥った(すいす、行ったことありまへん)。
あまりにも暖かく、てゆーか、テント内は暑すぎたので、そとの雪の上にシートとマットを敷いて、酒つまみを出して宴会。いつものように9割方は妄想話に花が咲く。ただのバカ話し、半分下ネタの超ムダのな時間に付き合ってくれる仲間のなんとありがたいこと。そーだ、ちえ蔵さん、女子だった。すみません。
 朝。
明るくなった頃に出発。少し風があるが、稜は東面なので、取り付けば風は気にならないだろう。高曇りで一瞬冬の名残を感じさせる冷たい空気。まさに残雪クライミング日和。

シラタケ沢を下降し、G0稜末端にたどり着いた。あたりには、強力な力で地表を削りとった茶色いデブリが山積している。
昨日、頭にインプットした画像とそこに惹かれた赤いライン(頭の中の話です)。僕とちえ蔵さんは、稜の末端にぽつんといる小さな黒い点だ。一度そうやって鳥瞰したあとで、あらためて目の前の稜を見上げた。
雪は比較的固く、稜の左側をダブルアックスでガシガシ進む。そのまま稜をかすめながら、潅木の生えた少し急なルンゼ状をクラックを避けながら登る。
再び稜上に戻り、あらためて頭のの中の鳥瞰図を取り出してきて自分の現在地と次のライン、目の前の景色を同定する。
イメージ通りだ。
傾斜、岩、ヤブ、雪の状態。何もかも一度登ったことがあるんじゃないかと思える程に想像通りだ。

傾斜は40~50度くらい。ずっとこのくらいの傾斜と同じムーブが続くから、ふくらはぎとか特定の箇所の疲労がたまる。

ノーマルルートの登山者
 ふと、ノーマルルートを見てみると、羽衣のような雪稜に蟻の行列のような登山者の姿が見えた。山のなんと大きなこと。人のなんと小さなこと。そして、山のなんと美しきこと。
ダブルアックスの方が快適だし安全だし早い。
 イメージ通りのラインを辿り、頂上直下のナイフリッジから10数メートルの藪こぎ、最後の数メートルは少し傾斜がある雪壁を攀じて、よっこらせとマントルを返すとそこがG0の頭。目の間には春霞にたゆたう北方稜線が遠望できた。
ふと耳をすませば鳥たちの囀りが聞こえ、頬を撫でる西風は暖かで優しい。いまさらだが、もう春だ。
最後の雪壁
 ラインは、最終的には頂上へとつながっていなければならない、と僕は考える。時間の問題もあって時に諦める時もあるけど、頂上を踏んでこそ完結する。
雄大な後立山の景色を眺めながら、美しい頂上に向かった。



G0稜は、難易度で見ると阿弥陀南稜くらいのイメージで容易である。後立山のバリエーションの入門としてとても取り組みやすい好課題だ。
有名なルートなのでライン自体は安定しているが、下部や中間部は比較的自由に登路が選択でき、バリエーションルートの醍醐味であるルートファインディングやタクティクスの創造が味わえる。

・・・というガイドブック的な能書きはどうでもよい。
G0を登り終えて、いや登っている最中も、僕の目に強烈に印象を与えたのは、八ヶ岳牧場のソフトクリームのようなふわっふわのキノコ雪をもりもりと連ねたG5稜と、春の優しさを拒絶するかのような冷厳な面構えを見せていた鹿島槍北壁の魅惑の姿だった。

このような相手に立ち向かうにはもう一歩、踏み出さなければならないだろう。人並み以上にビビリな僕にはその勇気があるかどうかわからない。
ただ・・・、その一歩も過去多くのクライマーが踏み出した一歩であって、やることも結局はだれかの真似事である。そこにどれだけの価値があるのだろう。
「お前はお前の山を登れ」と誰かが言っていた。僕はコンペティターでもないし、誰かと競う必要はない。
でも少しばかりは向上心がある。冒険心もある。

・・・あー、沢に行きたい笑。頭の悪い僕は、難しいこと考えずに、沢に行って魚釣って、焚き火にあたって、酒飲んで、下ネタ言っていっているほうが性にあっているな・・・。

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