剱岳 赤谷尾根~北方稜線縦走

2015-05-13

02_残雪期 08_アルパインクライミング l_北アルプス

Date : 2015/05/05-07
Member : すぐりん、組長
Timeline :【5日】 馬場島0554~0633赤谷尾根取付~1325赤谷山頂上~白萩山~赤ハゲ~1616白ハゲ~1830大窓
【6日】 大窓0505~0620大窓ノ頭~0829池ノ平山南峰~1115小窓~1220小窓ノ頭~1309小窓ノ王基部~1340三ノ窓~池ノ谷ガリー~1435池ノ谷乗越~1603剱岳山頂~1755早月尾根2600mコル
【7日】 早月尾根2600mコル0544~0628早月小屋~0914早月尾根登山口~0925馬場島


雪の剱に登ろうプロジェクト完結!!


振り返れば2月中旬。
ふとカレンダーを見れば、今年のGW後半は5連休だと気づく。人生において、何回5連休ってあるんだろう。なんか大きな計画をしたい。穂高か中央アルプス縦走か後立山縦走か・・・なんか違う。
もっと心がワクワクするキャッチーなプラン・・・。

『雪の剱!!』

決まり!!
僕に本格的な山登りを教えてくれた山。初めて、自分で考えて登る山登りを教えてくれた山。山登りの可能性を飛躍的に高めてくれた山。
これ以上の舞台はない。何より、キャッチーでワクワクする。目標は、想像するだけでワクワクするようなものがいい。

それでは実際にどこを登るか。
雪の剱の入門といえば早月尾根だ。もちろん、早月尾根単体でも僕の実力と経験からすれば、良い目標となる。でもなんかパンチが足りない。目標は、本当に行けるかな、と少し不安になるくらいの方がいい。練習のしがいってもんがある。かといって、小窓尾根はまだ僕らの実力ではやばそうだ。
ということで、ここ赤谷尾根、そして北方稜線の縦走から剱を目指すことに決めた。

早速、興味持ってくれそうな人を勝手にプロジェクトメンバーに巻き込み、2月後半~5月までのステップアップ山行プランをこれまた勝手に押し付ける笑。
といっても、僕のように山好きが高じて人生のバランスを大いに失しているようなアホとは違って、みんな忙しい。完璧なプランを組んだとて、そう完璧に予定を合わせることなんかできっこない。結果的に、最後まで付き合ってくれたのはすぐりんだった。現在はボルダラーの彼だが、何を思ったか少しの間離れていたアルパインの世界に戻ってきてくれた。これもパートナーの魅力??そんなわけないことは分かっているが、彼にとっても雪の剱やそれに至るいくつかの計画は、チャンスがあれば一度は行ってみたいと思っていたはずだ。だから、ボルダーを少しお休みしても乗ってくれたんだと思う。

まあそんなことで、いくつかの計画は天候不良とかで中止になったが、結構順調にステップアッププランをこなしてきた。谷川東尾根、西穂西尾根、白馬杓子双子尾根、白馬主稜。

先週、白馬山頂から白く光る剱を見て、準備が整ったと思った。万を持しての雪の剱。

4日の夜、東京を出る。
馬場島までは長い道のり。更埴JCTあたりでワイパー全開の豪雨となる。この悪天を避けるために計画は一日ずらしたのだ。長い道のりだが、あまり見慣れない北陸道の景色に旅の風情を感じる。暗い中、無事に馬場島に着くと、さすがにGWともあって、結構車が多い。しかし、ほとんどは
出発済で人はあまりいない。早速、少しの仮眠を取る。

5日朝。
富山県の観光課のハンコが押された登山届出済書を馬場島の指導センターに詰めている富山県の山岳警備隊のお兄さんに提示する。お兄さんは、寝ぼけ眼で今年の赤谷尾根の状況と全体的な雪の状況をを教えてくれた。今年は、特に雪が少なく、赤谷尾根は壮絶な藪こぎで皆さんさんざんな目に合っているとのこと。5月ともなると、毎年、赤谷尾根の下部は藪漕ぎがあると分かっていたので、この時はそれほど気にもとめていなかった。むしろ、沢ヤをなめんじゃねーくらいの感じでいて・・・。
条例で規制されている今の時期は、遭難時に活躍する発信機いわゆる「やまたん」は必須だと思っていた。しかし、厳冬期はほぼ強制的にもたせるが、もうこの時期は任意らしい。下手に借りてなくしても嫌なので、借りないことにした。死んだとき用だし。

早速、出発する。
早月川沿いの岩にはやたらと遭難碑が多い。ここはそういう場所だ。
赤谷尾根の取り付きまでは、林道を進む。雪があったりなかったり。土砂の押し出しもある。しばしで、赤谷尾根に出合う。後ろから追い抜いていった軽装の3人組は、今日は赤谷尾根のピストンだとか言って、向かって左側、ブナクラ谷方面に伸びる林道に進んでいった。赤谷尾根に取り付くには、一般的には向かって右側の白萩川沿いに進み、適当なところから左の赤谷尾根に取り付く。別のルートを知っているのか、単に間違っただけなのか、結局、このあと彼らに出会うことはなかった。どこに消えたんだろう。

我々は予定通りの場所から赤谷尾根に取り付く。雪はほとんどなく、早速藪をつかみながらの急登となる。少し上がると、踏み跡が現れ、雪尾根に乗ると、視界全体に荒々しい剱岳の姿が目に飛び込んできた。
剱見るなら赤谷尾根、とも謳われるように、大迫力で剱岳や北方稜線の岩岩した山群が迫る。左手には毛勝三山のたおやかな山稜。キタキタ、雪の剱にキタヨー。
仙人谷からは、轟音とともに身のすくむような恐ろしい雪崩の音がこだました。

天気はアホみたいによい。暑い。暑すぎる。雪尾根に乗って、もうさすがに藪漕ぎはないだろうと思っていた。これまでのが「藪こぎ」??あんなの「藪こぎ」には入らん!!沢ヤをなめんじゃねー(2回目)

・・・甘かった。
ここからが本番だった。
雪→ヤブ→雪→ヤブの繰り返しが始まった。しかも、猛烈に剛毛の下向きネマガリタケと、ヤブというよりは木。かき分けられるようなヤワなもんではない。正直ハンパなかった。ザックもデカ目でひっかかりまくるし・・・。
途中に岩場もあり、しかもかなりもろく、冷や汗モンで越える。山頂への最後の急登は、少しの雪壁を登ったあとは、ヤブ→ヤブ→ヤブ。
雪山総決算のつもりが、藪こぎ総決算の様相を呈するようになる。
赤谷尾根に乗る。右の大きいのが剱岳本峰。

雪→ヤブ

左のこんもりが赤谷山の山頂。ひどい藪こぎは目に見えていて、少しゲンナリする。
 今回のルートは、一般的には初日に赤谷尾根上か赤谷山の山頂に幕営し、翌日、三ノ窓まで、最終日に剱を越えて早月尾根を下降する計画とすることが多い。しかし、天気予報を見る限り、どうも7日の天気があまりよくない。だから、できれば天気がよい6日中に剱を越え、早月尾根上、あわよくば、早月小屋まで降りておきたいと考えていた。そのつもりで行程を逆算すると、本日中に大窓まで進んでおくのが都合がいい。歩きの強いすぐりんとなら、やれるだろう。

しかし、赤谷山についたときは、藪こぎ疲れが出て、目の前に続くアップダウンの激しい稜線を眺め、少し迷ってしまう。このまま、この平和な山頂でゆっくりするのも悪くないな・・・。
でもまだ13時半。しかもピーカン。進むべきだ。
赤谷山の山頂は、後立山の山々が一望でき、平らで素晴らしい展望台だ。この展望を見られるなら、赤谷山だけをピストンするのも頷ける。ただ、もっと雪のある時期がいいね笑。ここだけピストンであのヤブ漕ぎじゃあ、罰ゲーム以外なにものでもない。
後立山の山々とこれから歩む稜線
 先に進む。
すぐの白萩山は山腹をトラバースする。トレースもあり、楽をする。
再び平らなコルに下り、赤ハゲへの急登が始まる。難しいところはないが、疲れであまりペースが上がらない。ひとしきり登ると、白ハゲまでのナイフリッジが見える。
白萩山のトラバース
 リッジはヤブと雪が交互に現れ、雪はいかにも崩れ落ちそうで悪そうだ。できる限り安全そうなルートをよく見てから踏み込む。なるべく一人ずつ進み、一箇所に余計な荷重をかけないようにする。
赤ハゲ~白ハゲまでの不安定なリッジ

遠くに鹿島槍

もう経験とカンしかない。って経験ないし・・・。
ようやく白ハゲ山頂へ。
遠くから見ると距離が短くすぐに通過できると思ったが、思っていたよりもだいぶ時間がかかった。疲れた。あとは大窓まで下りて、テント張って寝よう。そう思っていた。しかしここからが本当の核心だった。
後立山の山々を背後に白ハゲを攀じる

白ハゲ山頂から。まだまだ遠い剱。
白ハゲ山頂から大窓に向かって下降を開始する。尾根上を進もうとするが、早速雪が切れていて、その先の尾根上も雪が切れ切れでどうやら進めなさそうだ。そこで、山頂からすぐの右下方の沢状に下りていく。しばし、雪渓が続いていたが、やがてヤブとなる。もちろん、トレースも踏み跡もない。左手の急峻なルンゼをおりるのだろうか。先が全く見えず、踏み込めない。懸垂したはいいものの多分下までは届かず、2P目の懸垂支点が草付きに都合よく得られるようには思えない。
後戻りできるより安全なルートを求め、右側の藪の中に突入する。傾斜は60度くらい。ヤブというか木の密生度が半端ない。これだけ木があれば滑落することはないが、なかなか先にも進めない。時々身動きが取れなくなり、あきらめたくなる。でもあきらめても何も起きない。

先が見えないのが一番きつい。このまま下りていって、本当に大窓の雪渓上に無事に降り立つことができるのか。日没の時間も迫ってきた。こんな藪の中で真っ暗になるのは最悪だ。
これまで培ってきたカン(笑)を頼りに、地形を考え、ヤブを転げ落ちていくと、下方に雪渓が見えた。これが大窓に至る雪渓に繋がっていれば・・・。一縷の望みを託し、雪渓上に懸垂下降する。

残念ながら、雪渓は中間部で切れていた。でも、草付きも交えてなんとか下降は出来そうだ。50度程度の雪壁をクライムダウンする。雪も緩んでいて、かなり怖い。
雪渓の切れている中間部の草付きは、ダブルアックスとアイゼンの前爪を強く強く叩き込んで、必死のクライムダウン。
すぐりんも恐怖からか独り言が多くなる。

中間部の草付き
 シュルントに落ちないようになんとか下部の雪渓上に乗ることができると、ようやくひと段落する。まだ傾斜はきついが、大窓まで雪渓はつながっており、先の見通しがついたのだ。
助かった。

大窓への登りに入ったところで、富山湾に沈む夕日を見た。あまりにも美しく、今まで味わったことのない気持ちになった。
すぐりんもひどく苦戦して、ようやく安全地帯に下り立った。
暗くなり始める中、大窓の斜面を手早く整地して、テントを張った。
富山の夜景を見ながら、疲れきった体で水をせっせとこしらえ、夕食となる。
ひどく大変な一日だった。
富山湾に沈む太陽
山ではたくさん寝られる。いつもはそうだ。でも今日は違った。今日の行程も長く、出来るだけ早く出たい。
昨日西の空に沈んだ太陽が今日は反対側の空から上がってきた。当たり前だ。でもこの当たり前のことに、なぜかひどく感動した。
まだ寝たい気持ちを抑え、日の出とともに出発する。

今日もピーカン無風。これ以上の天気はない。
大窓ノ頭までの道は、雪がほとんどなく、夏の踏み跡が続いている。振り返ると、昨日、必死の思いで下った雪渓が見える。よくあんなところを下降したなと思える程に、急傾斜の草付きにズタズタの雪渓が引っかっていた。
ひとしきり登り詰めると、そこは大窓ノ頭。前方に、池ノ平山と剱の本峰が再び姿を現した。
池ノ平山と剱
池ノ平山までも結構悪い。崩れそうな雪の段差を乗り越え、急傾斜の草付きをダブルアックスで攀じり、Ⅲ程度の草付き岩場からハイマツ帯に入り込む。 自分より力のないメンバーがいたら確実にロープを出すだろう。
不安定な雪の段差を乗り越える
 池ノ平山への最後の登りは、50度くらいの雪壁から落石の堆積したルンゼを這い上がり、ハイマツ帯を越えると、山頂へと飛び出す。山頂には、頂上を示す看板があった。久しぶりの人工物に少しの安心感を感じてしまったのは山ヤとしての弱さか。
手前の谷が小窓。先が剱だ。
 池ノ平山の北峰からは、中間部まで夏道が出ていた。ここはクライムダウンも可能だが、夏でも普通は懸垂下降する。ハイマツしか支点が取れないので、あまり大きな荷重をかけないようにクライムダウン懸垂となる。小窓への最後の下りは、再び夏道がわからなくなる。そこかしこの木には、捨て縄が引っかかっている。今回、我々は60mロープ1本しかないから、できればなるべくクライムダウン出来るところまで下りて、懸垂は1Pで済ませたい。悪い草付きをヤブ頼りに下降する。時にヤブを恨み、時にヤブにすがる。

どうやら1Pで下りられそうな見通しがついたので、細い潅木を支点にクライムダウン懸垂1P。無事に小窓にたどり着く。
小窓への懸垂下降

小窓
 
太陽も高くなり、日差しが強くなってきた。暑い日差しに緩んだ山のいたるところから落石の音がこだまする。
小窓からは、小窓尾根上まで高差200mの登り返しとなる。カンカンに照りつける太陽と照り返しでくらくらするような暑さ。体力的にもだいぶ消耗しているので、なかなかペースが上がらない。本日中に剱を越えられるか心配になる。
小窓尾根に乗る
小窓尾根からは、眼前に荒々しい小窓ノ王を仰ぎ、アップダウンのある尾根を急傾斜の雪壁を交えて、進んでいく。
小窓ノ王の基部に到着すると、クライマーの聖地と言われる三ノ窓が見える。通常、この基部から急な雪壁を懸垂下降する。左手の岩には、懸垂下降用の支点があった。セオリー通りここは懸垂下降するが、昨日の大窓への下降に比べれば傾斜も緩く、結果的にはクライムダウン可能だった。ちなみに、60m1本の折り返しだと、下まで降りられない。
三ノ窓への懸垂下降
三ノ窓にはたくさん幕営跡があった。ここまでの行程では誰ひとりとして出会わなかったが、晴天に恵まれた2~4日あたりには、たくさんのクライマーがここを訪れたのだろう。
疲れも溜まっていたので、三ノ窓でテントを張ることも考えたが、やはり予定通り先に進むこととする。もし明日天気が崩れるとすれば、困難な箇所が続くパートを残したくはない。できる限りの安全マージンを取りたい。今日中は最高の天気が続きそうだし、今は日も長い。山頂での展望も考えると、やはり今日中に山頂に立ちたい。
先に進むことにした。
池ノ谷ガリー
 
三ノ窓からは池ノ谷ガリーを詰めて稜線に復帰する。傾斜はそれほどではない。しかし、夏同様に落石多発地帯であり、先を行くすぐりんの数m横をこぶし大の落石がものすごい速さで通過していく。あんなのにあたったらタダではすまなさそうだ。下手によけようとしても、バランスを崩して滑落する。落石を防ぐためには、祈るか、普段の行いをよくするかしかない・・・。
池ノ谷ガリーをつめる
 
稜線に復帰するとそこが池ノ谷乗越。幕営跡がある。左手には、八ツ峰が見える。やはり雪はだいぶ少なく、雪の八ツ峰を見ることを期待していただけに少しがっかりした。池ノ谷乗越から長次郎のコルまでは特に悪い箇所はない。長次郎の頭付近のトラバースは、ものすごく深いクラックが幾重にも走っており、それらを右に左に交わしながら進む。
八ツ峰


ついに頂上がみえた
疲労困憊だった。すぐりんは、「疲れていないといったら、ウソになります」といった。何だその遠まわしな言い方は笑。歩いては休み歩いては休みを繰り返す。
剣沢キャンプ場も見えた。テントは見当たらなかった。
次第に長次郎のコルと山頂への最後の雪壁が迫ってきた。遠目で見る限り、最後の雪壁はかなり急傾斜に見えた。最後まで楽をさせてもらえなさそうだ。
長次郎のコルで最後の休憩を取る。ここにも幕営跡があり、快適そうな雪洞もあった。
気合を入れて、最後の雪壁に取り付く。
日陰となった雪面は、再氷結していた。傾斜もなかなか厳しく、緊張する。フィックスが上からたれており、ありがたく使わせてもらう。肩で息をしながら雪壁を登りきると、目の前に山頂が見えた。
八ツ峰をバックに最後の雪壁を登る
長かった。
ようやくたどり着けた。
久しぶりにこんなに疲れた。久しぶりに、疲れたよ、と、パートナーに言った。最後の一歩一歩を噛み締めながら、山頂に立った。
大きな達成感と安心感。どちらかと言ったら、安心感の方が強かった。
山頂はとても静かだった。もちろん誰もいない。剱の山頂は、6回目くらいだが、誰もいない山頂は初めてだった。風も全くない。山と僕と珍しく感傷的になっているすぐりんだけだ。剱という山としっかり向き合った2日間を象徴しているような瞬間だった。

山頂で写真を取るために300円の三脚をセットする。
すぐりんに「肩組もーぜ!!」っていったら、「いいです」と。なんで急に冷静になるんだ・・・。
後立山

北方稜線
無事山頂を越えた。でもここで100%安心しきってはいけない。下降の早月尾根も一般ルートとしては難易度の高い尾根で僕らの技術からすれば全く気が抜けない。
早月尾根
できれば早月小屋まで下りたい。早月小屋はやっているんだろうか。やっていたら、ビールが飲みたい。がぶ飲みしたい。

早月尾根の上部の岩場は鎖も出ており、それほど難しくはなかったが、一部鎖が埋まっており、そういうところに限って、氷化しているので緊張する。クライムダウンが苦手なすぐりんも大苦戦。さすがに、なかなか簡単には帰させてくれない。
再び日没が迫ってきた。
エボシ岩からは急な草付きと岩場の下降となる。そこら中の潅木やハイマツに懸垂下降用の捨て縄が残置されている。しかし、ここはクライムダウン可能。
眼下にコル地形と、幕営跡が見えてきた。早月小屋まではまだあるし、もうすぐ日没となるので今日はここまでとする。
2600mの幕営適地
 
だらだらとテントを設営し、疲労困憊の体をテントに潜り込ませた。
明日は特に危険な箇所はない。多少天気がわるくても大丈夫だ。
のんびり水を作って晩飯を作る。明日はそんなに早起きしなくてもいい。ゆっくりと2日間の思い出を語ればいい。でも、語るより先に睡魔には勝てなかった。
安堵感にあふれた夜。何をしゃべったがか特に覚えていない。
でも、すぐりんが「ありがとうございました」と熱っぽく言ってくれたのが印象的だった。

最終日。
思ったよりも天気はいい。つーか、晴れとる。まあいい、いくら下山つったって、晴れてるほうがいい。
ものすごい疲労感がある。朝方はよく冷えたので、雪がよく締まっている。上りには締まり雪がいいが、下りの場合はアイゼンが効きすぎて、逆に疲れる。
早月小屋が見えた
早月小屋は営業していなかった。もし昨日、ビール目当てに頑張って早月小屋まで下山していたら、どんなに落胆していたことだろう・・・。



小屋の前の穴蔵は、なんとトイレ。雪が少ないといってもさすがは豪雪地帯。
ダラダラと長い早月尾根をのろのろと下る。途中の木には、とんでもない高さに赤布が巻き付けてあり、厳冬期の積雪の凄まじさを垣間見る。ところどころ歩きづらい夏道を交えながらようやく登山口に到着する。
馬場島周辺の雪は、2日前に比べても急激に減っていた。あたりには、フキノトウが顔を出し、春の花々が咲いていた。

下山後、GW中に頑張った近くの温泉や飯屋は振替休日とかで平日の今日はほとんどやっていない。少し離れたつるぎ恋月という温泉に入ったが、真っ黒のお湯はなかなかよかった。
海鮮丼と富山名物ブラックラーメンを食し、帰路につく。

雪の剱に行けた。
といっても、例年のような美しい雪稜は少なく、ひどい藪こぎ、不安定な雪稜、激悪の草付きの下降の連続だった。快適な残雪期の登攀とは程遠い。
でもそこには楽しさを超えた達成感があり、冒険があった。でもまたやれ、といわれても、いやいいっす、と言ってしまうかもしれない。もしかしたら、本当に冒険をしたときは、そう思うもんなのかもしれない。

雪の剱プロジェクトと銘打っていたが、実際は谷川東尾根や白馬主稜の方が技術的には難しいなんて、行く前は思っていたし言っていた。しかし、技術的難しさなんてものさしで簡単に測れるものではない。ひっくるめて総合的に見れば、谷川よりも白馬よりもよっぽど大変だった。条件にもよるだろうが、剱はそう甘く見ちゃいけないと改めて思った。

すぐりん、ありがとう。こころから感謝します。

(組長)

このブログを検索

人気の投稿

最近の投稿

Archive

QooQ