沢上谷

2015-08-22

06_沢登り

Date : 2015/8/22
Member : あーさ、つーく、みもん、よしみ、組長
Timeline :入渓点0914~0937五郎七滝~1023岩洞滝~1128蓑谷大滝~1301二俣~1322終了点~1405入渓点


沢遠征初日。
美瀑を巡る奥飛騨の癒し旅。
そこには見たことのない渓谷美があった。


 
 
 
ジャケ買い。
そんな言葉がある。
同じように、僕の沢登りは、一枚の写真で全てが始まることがよくある。
 
ここ、沢上谷もそんなとこ。沢上谷とかいて「ソーレたに」って読む粋な感じもいい。
しかし、遠い奥飛騨の山懐に流れる小沢は、関東の沢ヤにとってはなかなか計画しづらい沢だ。これ1本のために、わざわざ5時間あまりかけて出かけていく人もそうはいないだろう。
赤木沢の計画のために広域の地図を開いていたとき、ふと思い出したのが、沢上谷のあの写真だった。
あれ、近くじゃなかったっけかな。
 
高原川はまさに有峰湖への通り道であった。大げさではなく、今後の人生の中で何度この沢を計画することがあるだろう。行くしかない。今回しかない。
 
前夜。
安房峠を越えて、奥飛騨に入る。道の駅上宝で仮眠を取るが、あいにく小雨がぱらつく。
マムシに注意しろ、という暇そうなオヤジの忠告を受けてから、鮎釣りで賑わう高原川沿いの国道から、細い県道に入ってく。
 
しばらく進むと、右手に沢上谷の沢床が近づく。「あれ、地図にない県道が右にあるぞ」。それが、この谷との最初の邂逅。期待感抜群の文句なしのナメが素朴な奥飛騨の山懐に静かにたゆたっていた。
 
最初のヘアピンカーブの先に舗装されていない林道が続いており、30mほど入ると左手に駐車スペースがある。枝沢の濁った水に一瞬昨晩の雨による増水の不安がよぎるが、本流はいたって穏やかであった。後から分かったが、枝沢のにごり水は、上流の工事によるものだった。
 
つーくは、今回の沢遠征のためにいつものワークマンで新調したパンツで、「これから沢で遊びます!」というよりは、「ひと仕事してきます!」といった感じの体である。

営林署の人ではありません。
 沢上谷は、本流の渓谷美もさることながら、支流にいくつもの魅惑的な滝をかけていて、それらを巡る旅が本遡行の醍醐味となる。

入渓してすぐに、右岸から12mのナメ滝が出合う。左にフィックスがあるが、踏み跡はしっかりしていて簡単に登れる。
10mの滝を右のルンゼから登り、純度100%の完璧なナメ床をトコトコ歩いていくと、その先に末広がりの大きな五郎七滝が広がっていた。
10mナメ滝

文句のつけようのないナメ

五郎七滝
 水流は極めて優しい。水は少なく感じるが、よく見ると露出した岩肌全てに水がなめている。岩肌のちょっとした凸凹で空気をいっぱい含んだ水泡が落ちていく様は、心が洗われるような気分にさせてくれる。

本流に戻る。
赤い岩盤の幅広のナメが続く。周囲の森は幻想的で、なんかセンチメンタルな気分になる。ああ、僕も、どんど年をとっていくなあぁ。
森の中で我思う
 深い釜のある小滝を左から越えると、再び右岸から枝沢が出合う。この枝沢のゴーロを越えていくと、周囲は突然大きく開け、岩壁に囲まれたオペラ劇場のような荘厳な場所に出くわす。見上げる遥か頭上から、虚空に投げ出された美しい流れが落ちていた。
岩洞滝
高さは30mほどあるだろうか。まさに息をのむ美しさ。大きくハングした滝の下には簡単に歩いてアプローチでき、滝の裏側に入り込むことができる。
時に自然は、想像を凌駕する。これまで、一度も見たことのないような景色。アングル。水の動き。見上げると、なんだかクラクラする。
ここでひと夏過ごせる気がする。


裏見の滝

大仏
 再び本流に戻る。
時折、倒木があるが、美しいナメがまだまだ続く。
先に立ちふさがる大きな岩を越えると、本流の大滝、蓑谷大滝が現れる。
そそり立つ一枚岩に優雅な白い羽衣を垂らしている。これぞ、本流の意地。支流の滝も素晴らしかったが、俺が主役だと言わんばかりの貫禄の大滝だ。
白い波は、まるで意思があるかのように、早く流れるヤツもいれば遅く流れるヤツもいる。いつまで見ても見飽きない。ここでふた夏めを過ごせる気がした。
蓑谷大滝

大滝登攀は限りなく不可能に近い。
ここは定石通り、左岸を巻く。下流方向に伸びる踏み跡から急な斜面を木の根っこをつかみながら進む。滝の落ち口と同じくらいの高さになったところで、左の岩沿いに踏み跡が続いていたので進んでみるが、少々怖い。ちょっとした段差を乗り越え、木々の間を落ち口に向かって斜めに下降するが、足元も崩れやすく落ちたら大滝のそそり立つ側壁を転げ落ちることになるので、ここは安全に懸垂下降する。斜めに10mの懸垂下降でぴたりと滝の落ち口に降り立つ。
後で調べてみたら、もっと上まで巻くともっと立派な杣道があるらしい。ただ、最後は急なルンゼを下降することには変わりはないらしく、高巻きはなるべく小さく、という基本から考えれば、今回の巻きルートは必ずしも間違っているとは言えない。

滝の落ち口は平和だ。滑床の先に広がる空に思わず走り出して飛び出したくなる衝動が襲う。自殺願望??いや、美しい景色を見たあとの高揚感だ(たぶん)。実際、大滝を懸垂下降して楽しむ人も多いらしい。

大滝の先は、ガイドブックでは「素晴らしいナメ」と書かれている。まさにその通り。素晴らしすぎるナメだ。あーさ、みもん、よしみがひたひたと進んでいく様を写真に撮ろうとしたら、つーくがフェードインしていたので、邪魔だと思った笑。あなたと僕は、この美しい景色の一部としてはふさわしくないよ・・・。
文句のつけようのないナメ。誰が何と言ったって、ナメは素晴らしい。 しかもここのナメは、ほとんどぬめっておらず、フリクションがすごくいいので傾斜があっても安心なのだ。
 やがて、青空も見えてきたところで、二俣。右俣には、15mのナメ滝がかかる。
右壁に残置のフィックスがある。
15mナメ滝

フィックスをつかめば簡単だ。自分は水の中を登る。

下が二俣
ここからもずっとナメ。1.5kmにわたって延々とナメが続くのだ。両岸も低く、とにかく癒し要素満載。陽光も差し込み始め、煌く水流の中を、いつまでも歩いていたい気持ちになる。
いや実際にいつまでもナメは続くのだ。林道の橋が架かり、そこで遡行終了とするが、その先にもまだまだナメ床は続く。
穏やか
林道の橋で遡行終了。少し行くと県道に出て、入渓点まで戻る。道路歩きは少し長く感じるが、時々開ける景色の中に蓑谷大滝や岩洞滝、五郎七滝が垣間見える。

素晴らしき奥飛騨の癒し渓。
技術的に見ればとても容易で、初めて沢登りをする人を案内すれば、これ一発で沢中毒になること間違いない。もっと近くあれば、と思う。
滝はどれも個性的で印象深く、正直なところ、赤木沢よりも頭の中で映像としてはっきりと残っているのは沢上谷だ。それほど美しかった。一度は行きたい名渓。

個人的には、これまで行った沢の中で最も西にある沢かも知れない。西日本では、「~谷」と呼び、東日本では「~沢」と呼ぶことが多いらしい。ここは沢と呼ぶか、谷と呼ぶかの境界線かもしれない。西にはまだ素晴らしい谷がゴロゴロしている。あぁ奥深き渓の世界。

下山後は、暗黒の歴史のある神岡鉱山を通り過ぎ、鉱夫たちが汗を流したという割石温泉に入る。料金は安いが、地元臭すぎる。じいさんとばあさんが、鄙びた休憩室で見ているのか見ていないのかわからないテレビをぼんやりと眺めている。そこに混ざるみもんさんのなんと自然体なこと。孫かと思った。

そのまま富山市内に入る。
どうやら富山の有名な祭りである、風の盆の前夜祭が今日から始まるらしく、なんとなく街の中は浮かれているような印象を受ける。急にざっと来た雨の中に大きな虹がかかる。
彼方先に日本海を感じる富山の街で日本海で揚がった新鮮な海の幸を頂く。小粋な寿司職人のじいさんのしゃがれ声に誘われて、旬のものに舌鼓を打つ。

そのまま立山駅に向かい、そこで仮眠を取ることにした。

続く・・・。

(組長)

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