Member : あーさ、つーく、みもん、よしみ、組長
Timeline :23日 折立0732~1230薬師沢小屋~赤木沢出合釣行
24日 薬師沢小屋0526~0626赤木沢出合~0807大滝~0926中俣乗越~1053北ノ俣岳~1205太郎平~1412折立
沢遠征2日目と3日目。
あまりにも有名な渓を巡る旅。
黒部の宝石の先にあったものは・・・。
朝。
思いがけず小雨が降っていた。夜も雨が降り続いていた。早朝から駅には登山客が続々と詰めかけていた。
朝もやの中、有峰林道のゲートまで車を飛ばす。林道は、霧がかかっていて周囲は真っ白だ。折立の駐車場についてみると、さすが人気の登山口とあって、駐車場はいっぱいで手前の道路脇に駐車する。5年ぶりくらいだろうか、懐かしい。
単調な登山道を進む。雨こそ降っていないものの霧がかかって非常に蒸し暑い。その上、人が多く、いちいち挨拶をしてくるのがとにかく鬱陶しい(僕の方の人間性の問題ですが笑)。太郎平にもたくさんのハイカーが集まっていた。薬師、水晶、鷲羽、三俣蓮華、黒部五郎など、お馴染みの面々が眼前に広がっていた。
のんびりとハイキングを楽しみ、昼過ぎに薬師沢小屋へ。久しぶりの小屋泊に心弾む。が、僕にとっての勝負はここからである。正直、赤木沢なんてどうでもいい笑。黒部のイワナに出会うことが今回の旅の核心的なところなのである。
大いなる期待を持って、一人沢支度して、竿を片手に黒部源流に踏み込む。
登山道の喧騒から解放されて、山深い黒部の源流に一人佇んだとき、何とも言えない幸福感に包まれた。あぁ、憧れのの黒部源流。黒部の山賊たちが跋扈した悠久の流れ。木々の間から河童がこちらを眺めているかもしれない。イワナの前にまずその大自然を独り占めすることに満足した。
しかし、黒部イワナたちは、僕みたいなにわか釣り師の鉤にかかってくれるような無垢なものではなかった。そもそも時間が悪いのか、行けども行けどもほとんどイワナが走ることがない。ポイントごとに丁寧に毛鉤を打ち込んでみるが、まったくもって当たりがない。赤木沢出合までつり上がってみたが、結局、釣果ゼロ。
黒部の山賊たちの腹を満たした大イワナたちはどこに行ってしまったのか。白石さんの著書を読んだばかりだったのもあるが、過大な期待は一気に打ち砕かれた。
僕の心情とはあまりにも対照的な美しい赤木沢出合の岩の上で、しかたなくのんびりと物思いに耽った。
うなだれて、来た道を戻る。
途端に、イワナが足元を走り出す。やられた。時間が悪かったのだ。慌てて竿を出すも、下りながらだとやはりどうしても難しい。そのうえ、黒部のイワナは結構スレていて、僕の打ち込んだ下手くそな毛鉤になんか目もくれないことが多かった。
完敗だ。
しょぼくれて、一人薬師沢小屋のテラスでよなよなエールを飲む。あぁ、うまい。僕の心情とはあまりにも対照的にうまい。あーささんが夕飯に何かうまいものをこしらえてくれたが、晴れない気分の中、何を食ったのか、よく覚えていない(大変申し訳ございません・・・)。
小屋の中は、実に快適だった。やはり、屋根の下というのは安心する。暇だったので、つーくの趣味とか好きな音楽とか、いろいろの身の上話を聞く。不毛だ・・・。
ぐっすり眠って、日の出前に起き、よしみさんがこしらえてくれた美味しい朝ご飯を頂いてから、明るくなりだした黒部の源流に再度、降り立った。
さすがに朝方は少し冷える。
膝くらいの渡渉が何回か |
1時間くらいで順調に赤木沢出合まで進む。左岸をへつって赤木沢に入渓する。
赤い岩肌を優しくなめる流れを辿っていくと早速最初の美瀑が現れる。背後の稜線から上がった太陽がこの美しい渓に一層の彩を与えてくれる。
この渓が美しい理由の一つとして、その向きがあるだろうと思う。午前中は、背後から陽光が燦々と注ぐことでその美しさを倍加させるのだ。
最初の滝 |
階段状 |
滝は次から次へと現れる。どの滝も登るのは簡単。ひとつ、登れない滝があるか、右脇から簡単に巻ける。
青空、緑、赤い岩、白い水流。
赤木沢は、やはり、綺麗だった。
黒部という場所柄もあるだろう。
天気がとにかく良い、というのが何よりのことだろう。
背後を振り返れば、陽光にくっきりと縁どられた北アルプスの高き嶺々。
黒部の宝石といってもそれは過言でないだろうと思う。
渓の美しさは、ただ単に綺麗だというだけが大事ではない。そこに、突破できるのかという不安感や、何か棲んでいそうな底知れなさ、そういった「凄み」が相まって全体として心に迫って来るのが渓の美しさである。
しかし、赤木沢にあっては、そういった「凄み」をもった美しさはほとんどない。ただ、底抜けに明るく綺麗なのだ。赤木沢はそれでいいのだ。そうやって、鼻歌まじりに楽しむのがこの渓の気分なのだ。
途中で、大学生が追い抜いていった。小屋でも一緒だったワンゲル部の学生さんだ。休憩ごとに決まりきった体操をしているのが初々しくて良い。
当然に、みんな若い。我々も一般的には若者のパーティーだが、比べてみるとやはり三十路感は否めない。あぁ、やだやだ。
赤木の大滝 |
切り立つ威圧的な壁を迫力の水流が落ち込む。
早速、記念の集合写真と大学生の一人にカメラを渡すが、写真には僕らの満面の笑顔が写っていたものの、大滝はほとんど写っていなかった。ここで写真とってくれと言ったら、普通は大滝をいれたアングルにするだろう。君!山にばかりうつつをぬかしてないで大学でもう少し勉強してこい!
大滝の巻きは若い大学生たちに先を行かせるが、どうやら皆経験は浅いようで、登りも少し覚束無い。おっさんがグイグイ追い上げていく。
ワラワラと登っていく大学生 |
落ち口。 |
背後には薬師岳の雄大な姿。水晶の黒々と険しい稜線が美しい。
黒部の宝石と言われる渓はどこまで行っても美しかった。その美しい宝石の先には・・・
ババアの大きなケツがあった・・・。
稜線から外れ、ハイマツの影に隠れた、と、本人たちは思っていたらしい。沢からきた僕らにはあまりにも丸見え過ぎた・・・。あぁ、嫌なものを見てしまった。赤木沢には、最後の最後で「凄み」を見せつけられた。
平和な稜線歩きを経て、太郎平に戻る。そのまま、折立へ駆け下りた。
そんなこんなで癒しづくしの沢遠征は終了した。
ランドネなんかで沢特集を組んだら、ベストテンに入るような渓にあろうことか連続で入ってしまった。下手したら、赤木沢などはナンバーワンに輝いてしまうかもしれない。癒されすぎて、ふにゃふにゃのヘナヘナになった。
皆様、お疲れ様でした。
(組長)