水曜日のシンデレラ奪還(小川山)

2023-10-15

07_クライミング(ボルダリング含む) e_奥秩父・奥武蔵

Date : 2023/10/15
Author :バード

小川山は、スラブ状岸壁エリアに「水曜日のシンデレラ」というルートがある。


それが登れた。


「おいおい、そんなルートの一本登れたくらいでブログ書くんじゃねーよ」というツッコミもあるかもしれないが、せっかくの機会なので色々と思うことを書いてみようと思う。


水曜日のシンデレラ


「小川山でなにを登るか」


小川山デビューを果たし、「さてどんなルートを目標にしたらいいのだろうか」といろいろと調べているとガメラ(菊地敏之氏)さんが推奨する「オリジナルルート」なるものを見つけた。


「オリジナルルート」とは、つまりはその壁で最初に登られたルートという意味なのだが、それをもう少し考えて見れば、その壁をはじめて見た人が、「この壁を登るのはまずはここからだろ」と考え、ラインを引いたのが「オリジナルルート」になる。


山登りだって、岩登りだって、その姿かたちを見たときに「ここをこうやって登ったら楽しそうじゃないか」というルートがあるだろう。


剱岳であれば北方稜線や八ッ峰、前穂なら北尾根がそういったラインなんじゃないだろうか(まぁ、これらは初登ルートではないのだが)。


そして「水曜日のシンデレラ」は、このスラブ状岸壁にあるマガスラブのオリジナルルートである。


「バーカー・ショック」があった1980年。フリークライミングが我が国に上陸した6年後の1986年に志賀光則氏が、このマガスラブに訪れ、この壁に最初に引いたラインが「水曜日のシンデレラ」なのだ。


僕がこのルートに最初に取り付いたのは2019年5月だった。このブログを書くにあたって改めて当時の記録を読んでみると、自分はそんなにクライミングがうまくなかったのだろう。


「シンデレラ奪還作戦、ここに始動。」などと結んでいるが、このルートに次にトライしたのは、4年5ヶ月後の今日になった。


ルートの詳細についてはオンサイトトライする方もいるので割愛するが、ルートの長さ、見た目、ムーブの多様さなど、素晴らしい内容だった。


そしてなによりも、今回が4年5ヶ月ぶりの2ndトライということもあり、ほぼオンサイトトライのような感覚で、このルートを登れたことが嬉しかった。


当時だってムーブをバラして、トライ回数を積み重ねれば、当時の実力だって登れていたかもしれない。


ただ、4年5ヶ月ぶりにこのルートを見ながら全体の構成を組み立て、登ってから核心部を見上げては、いくつかのムーブを頭の中でひらめき、「このムーブじゃないな」とレストポイントに戻ってくる。


そんな葛藤を乗り越えてオンサイトに近い感覚で、このルートを完登することができたからこそ、きっといまの充実感があるのだろう。でなければ、きっとこれをブログにしようなどとは考えなかった。


こういうルートを沢山登りたい。ひたすらに打ち込んでバラしてRPするのもいいけど、寝かせて(ほぼ)オンサイトするというルートとの付き合い方もあるんだな、という備忘録としてこのブログを書いていているのかもしれない。


オンサイトグレードの更新でなければ、打ち込んだ末のRPでもない。それでも印象に残ったクライミングであることは間違いない。


それはきっとこのルートの素晴らしさゆえなのだろう。ぜひイレブンの入門として。できるならオンサイトで、このルートに取り付いて欲しい。


でも、オンサイトできなかったとしても大丈夫。4年寝かせれば、オンサイト感覚でトライできるのだから。


さて、せっかくなので「シンデレラ奪還作戦」と書いていたからには、どんなルートを登っていたのかをまとめてみようと思う。


グレードはフロンティアスピリッツ「小川山 クライミングガイド」を参考にした。あくまでも個人的な体験と感想だが、これから小川山でクライミングをやりたい、イレブンを目指したいという方のために、少しでも参考になればと、恥かしながら書いてみようと思う。



「小川山リードはじめ」


トップロープじゃなくて、自分でリードしてみたい。そんな人が最初に面食らうのが、小川山の敷居の高さ。つまりボルトの少なさだと思う。


そういった方でも取り付きやすい、リードしやすいのが「水曜日のシンデレラ」のあるスラブ状岸壁エリア(マガスラブ)だ。


5.10アンダーのルートがコンパクトにまとまっていて、最初のリードトライにも最適。


トップロープでは簡単、と思ったルートでもリードすれば、そこには違った充実感があるはず。


~おすすめ課題~


・ウルトラセブン(マガスラブ)/5.8

・かわいい女(マガスラブ)/5.8

・オーウェンのために祈り(マガスラブ)/5.10a

・高い窓/5.10c(マガスラブ)(5.10dの派生ルートあり※難しかった)



「スラブとフェースになれる~ボルダリングのすすめ~」



小川山でつぎに面食らうのが、あの結晶を踏むようなスラブと、ホールドの細かさでしょうか。


そこでおすすめなのが、ボルダリングだ。

ボルダリングであれば「これくらいの足のかかりだと落ちるんだろうか?」という実験がしやすいし、トライ回数も多く稼げる。


まずは「これくらいの踏み感であれば大丈夫」という足の感覚をつかみながら、ホールドの細かさに慣れましょう。


~おすすめ課題~


・ファンタジー岩:6Qから3Qまでスラブ課題がコンパクトにまとまっている。スクープオンサムバディ(3Q)が登れるころにはスラブとも仲良し?


・分岐岩:下地もよく、ほどよく高さもあり純粋にボルダリングしていて楽しい。分岐岩右(4Q)・中央(3Q)でコソ練していました。


これらの課題たちを通じて、小川山のスラブに親しみを感じれるようになってきたら、小川山スラブ/フェースのクラシック課題に。


岩質に慣れてきたとはいえ、やはりランナウトした状況で、ムーブが出せるのかは別物。フリークライミングの醍醐味をルートとともに味わってください。


~おすすめ課題~


・ガマルート(ガマスラブ)/5.6-5.8

スラブリードまずはここから。


・ツイスト(屋根岩1峰 水晶スラブ)/5.10a

・ソラマメ(屋根岩2峰 ソラマメスラブ)/5.10a

ツイストもソラマメもこれまでのトポでは5.9+という謎グレードだった。これぞ小川山のスラブという好ルート。ランナウトするのでお気をつけて。


・小川山ストーリー(父岩)/5.10a

父岩のオリジナルルート。言わずと知れた父岩のみならず小川山の看板ルート。登りきったら、ぜひ景色も楽しんで欲しい。


・無名ルート/すみれ(屋根岩2峰 おむすび山スラブ)/5.10a

・リメンブランス(屋根岩2峰 おむすび山スラブ)/5.10b

・ラベンダー(屋根岩2峰 おむすび山スラブ)/5.10b

おむすび山スラブにある5.10前半の3ルート。ながらく無名ルートという可哀想な扱いだったが、ついぞ「すみれ」と命名されたらしい。どれも小川山らしいスラブフェース。1pが遠いものもあるので慎重に。どれも似ているようで少しずつ表情が異なる(気がする)。


・ブラック&ホワイト(八幡沢左岸スラブ)/5.10b

小川山スラブ5.10前半の登竜門。この壁のオリジナルルート。はじめて小川山に連れてきてもらった時に、初日の2ルート目に組長に案内された課題でもある。今考えたら嫌がらせでしかない(笑)もちろん当時は全く歯が立たないというか意味不明だった。でもそれくらい小川山らしさに溢れたルート。中間部にはカムがきめられる。



「クライミングの幅を広げる」



スラブ・フェースに慣れてくると、誰でも一度はこう思うはず。


「マルチもやってみたい」と。


ただ、小川山のマルチに立ち向かうには、クラックを避けることはできないでしょう。


ジャミングはもちろん、カムの使い方に慣れるのも大事。


ただ、なかなかいきなりクラックルートをリードするのは怖いところ。


ここでは比較的取り付きやすいルートをご紹介。ただ、事故も多く発生しているのでお気をつけて。


~おすすめ課題~


・愛情物語(妹岩)/5.8

ジャミングしながら、カムでプロテクションをとるという基本が学べる。事故も発生しているのでお気をつけて。


・龍の子太郎(妹岩)/5.9

ハンドジャムというか下部はワイド。ぜひとも2pまで登って欲しい。プロテクションワークのよい勉強になる。


・友和ルート(八幡沢大滝)/5.8

・さよなら百恵ちゃんルート(八幡沢大滝)/5.9

少し歩くが八幡沢大滝には5.9付近のクラックがある。さよならはハンド、友和はワイド。さよならの方は1pしか登ってないが、いつか上までいってみたい。


・小川山レイバック(親指岩)/5.9

親指岩だけでなく、小川山のオリジナルルート。フリークライミングの歴史はここから始まった。ぜひその歴史を味わってほしい。



「マルチピッチデビュー」



さてクラックにも少し愛着が湧いてきたところで、いよいよマルチピッチデビュー。

自分たちの力で岩峰のピークに立った時の満足感は格別です。


~おすすめ課題~


・ガマルート(ガマスラブ)/5.9

なんだか勝手に簡単な印象を持っていたが登ってみると核心はピリリと辛い。ぜひ最後のクラックも登って上まであがって欲しい。露出感に痺れる。


・セレクション(屋根岩2峰)/5.8

クラック、スラブ、フェースとフリークライミングの基本が詰まった看板ルート。最終ピッチを登りきった時は感動して吠えた。記録はこちら


・南稜レモンルート(屋根岩3峰)/5.9

セレクションを登った時に隣の岩峰にも立ちたいと登ったルート。核心がワイドとのことで練習としてネイキッドクラック(お姫様岩)に登ったが、役に立ったかは不明。きっと役に立ってない。ワイドに馴染みがないと最強の5.9に感じる。記録はこちら



「よい課題と向き合う」



日本フリークライミングの伝道者、戸田直樹氏が言うように「良い水があるところに上手い酒ができるのと同様に、優れたルートのあるところに優れたクライマーが育つ」もの。


イレブンアンダーで良い課題をまとめるなんて、僕にとっては荷が重いですが、自分にとって思い入れのある課題を中心にまとめてみました。


~おすすめ課題~


・ノイズイノ(屋根岩4峰)/5.10b

・スラカン(屋根岩4峰)/5.10d

はじめて外岩で打ち込んだのが4峰にあるスラカン。トライを重ねた結果、体じゅう傷だらけになり、指はパキり、満身創痍でRP。帰り道にハイなテンションでカラファテでカムをワンセット買ったのは謎。

隣のノイズイノも「ここを登れ」という素晴らしい課題。


・ピクニクラ(兄岩)/5.10b

NPも交えてピークまで。これまたロケーションが素晴らしい三つ星ルート。カムセットに自信がついたら、是非とも登って欲しい。


・ブラックシープ(リバーサイドエリア)/5.10b

・ジョコンダ(リバーサイドエリア)/5.10c

リバーサイドから2本。ブラックシープは昔のトポでは5.9+という恵まれないグレーディング。

どちらも下部ではカムをセットするといい。それもまた勉強になる。どちらも見た目も内容もいい。



書き出したら切りがないですが、こんなところでしょうか。


そろそろ小川山のシーズンも終了?ですが、小川山でクライミングしてみようという方の参考になれば幸いです。


最後に、現地でビレイしてくださったくまさん、ありがとうございました。お陰様で無事奪還となりました。また登りに行きましょう。


それでは、みなさんよいクライミングを!

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